ペットショップでは「運動量に限り」 飼養施設規制の導入を

イラストレーション/石川ともこ
イラストレーション/石川ともこ

「ペットショップではペットをゲージ内で飼育保管しており、ゲージ内での運動量に限りがあるため、被告従業員らが本件猫の呼吸促迫や喘鳴(ぜんめい)に気付かなかったとしても不思議ではない」(原文ママ)


 5月26日付朝日新聞朝刊で「ペットを買ったら病気だった」という記事を書いた。その際に引用した、販売した子猫が先天性疾患を抱えていたとして2014年12月に飼い主から民事で訴えられた、あるペットショップチェーン側が準備書面で主張した内容だ。


 このチェーンは愛知県内に本社があり、全国で約80店を展開している。ホームページを見ると、16年8月期の売上高は50億円以上を見込むという。国内有数の大手と言える。そんな会社が、日々面倒を見ているはずの従業員でも、呼吸の変化に気づけないほど運動量が制限されるスペースで子犬、子猫を飼育していると主張しているのだ。


 動物愛護法の細則では、第1種動物取扱業者が順守すべき事項として、ケージは「日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものとすること」と定めている。であれば、このチェーンの飼育状況は動愛法に反していないか。同社に見解を尋ねたが、「回答を控える」などとしか返ってこなかった。


 もう一つ別の事例を挙げる。昨年4月、東京都が1カ月の業務停止命令を出した昭島市のペット店「パピオン熱帯魚」。都の数十回におよぶ指導と処分の根拠になったのは主に「ケージ等の構造及び規模」の問題だったが、経営者の男性が都に提出した「弁明書」にはこんなふうにあった。


「ケージについては(中略)狭いということはない」


「毎週来ていただいてもアドバイスが出ていないので当方全く理解していない」


 昨年5月30日付朝日新聞朝刊で「ずさん管理、10年『放置』」という記事を書いたが、実際、都はこの業者に対して適切な指導ができていなかった。背景について都は「飼養施設などの数値規制がなく、指導内容がわかりにくかったところはある。数値規制があれば、明確な数字で指導や処分が出せた」としていた。


 環境省は昨年10月、「飼養施設規制」に乗り出すと明かしている。だが今年度初めにも立ち上げるとしていた検討会はいまだ影も形もない。他方で業界側は規制導入に向けた動きに対処するため、複数の業界団体、企業による横断的な組織を立ち上げ、既に一部団体による調査、ロビー活動が進展しているという。


 現在、繁殖業者やペット店が不要になった犬や猫を1匹数万円で引き取り、虐待的な環境で飼育する「引き取り屋」が社会問題になってもいる。ケージ等の大きさを具体的数値をもって規制する飼養施設規制の導入は急務だ。一方で犬猫の習性を考えれば、そもそもケージや展示ケースに入れっぱなしで飼育すること自体があってはならない。環境省は、一部猫カフェに義務化した「休息できる設備」のような規定を、犬猫等販売業者を対象に導入することを同時に検討すべきだ。


(太田匡彦)

 

 

(朝日新聞タブロイド「sippo」(2016年6月発行)掲載)

太田匡彦
1976年東京都生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当した後、AERA編集部在籍中の08年に犬の殺処分問題の取材を始めた。15年、朝日新聞のペット面「ペットとともに」(朝刊に毎月掲載)およびペット情報発信サイト「sippo」の立ち上げに携わった。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』『「奴隷」になった犬、そして猫』(いずれも朝日新聞出版)などがある。

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この特集について
いのちへの想像力 「家族」のことを考えよう
動物福祉や流通、法制度などペットに関する取材を続ける朝日新聞の太田匡彦記者が、ペットをめぐる問題を解説するコラムです。
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