不幸な出会いを避けるため ショップの見極め方

 犬との暮らしは、人にたくさんの幸せを与えてくれる。イスラエルのアインマラハ遺跡から人と子犬が一緒に葬られた1万2千年前の墓が発見されるなど、人と犬とが古くから関係を深めてきた痕跡は、世界各地で見つかっている。

 現代の日本。人が犬と出会おうと思えば、その足は街中のペットショップに向かいがちだ。そこには、さまざまな犬種の子犬が、ぬいぐるみのように陳列されている――。

 私は、ペットショップでの購入をすすめる者ではない。あなたが犬を飼いたいと思ったらまずは、全国の地方自治体などに捨てられた犬を引き取るという選択肢を検討してほしい。また特定犬種へのこだわりが強いのなら、じっくりと優良ブリーダーを探すという手もある。

 それでも、どうしてもペットショップで犬を買いたいと思うのなら、せめて次の二つのポイントは押さえよう。

 まず、店員が「抱っこしてみませんか?」と声をかけてくるようなショップは避けるべきだ。ペット業界には「抱っこさせたら勝ち」という格言がある。子犬を来店者に抱っこさせ、ぬくもりや弱々しい動きを感じさせることで判断力を奪い、衝動買いさせようというこの業界特有の商法が存在する。

 こうしたショップでは、子犬を購入する際の説明がほとんどなされない。「ちゃんと説明すれば『そんなに大変ならやめる』と、別のお店に行ってしまう」(ペットショップ経営者)と考えるからだ。だが動物愛護法第8条は、販売業者は「適正な飼養又は保管の方法について、必要な説明をしなければならない」と定めている。犬は犬種によって性格に差異がある。必要な運動量も違う。かかりやすい病気の傾向が犬種ごとにあり、その結果が生じる医療費も変わってくる。「必要な説明」無しに買っていいはずがない。

 次に確認すべきは、陳列されている子犬の生年月日と入荷日。子犬は、生後56日よりも前に生まれた環境から引き離されると、精神的外傷を負いやすく、問題行動を起こしがちになる。だから欧米諸国には「8週齢規制」が存在する。日本でも改正動物愛護法で、まず施行後3年間は生後45日までの子犬の引き離しが禁止された。当面45日なのは販売業者に対する「激変緩和措置」。子犬の心身の健康を考えれば、現時点でも56日齢までは生まれた環境にいたほうがいい。つまり、子犬の生年月日と入荷日を確認することで、子犬の心身の健康度合いやショップの経営姿勢がわかるのだ。

 ほかにも、飼育ケースは清潔か、休憩スペースはあるのか、糞尿(ふんにょう)は正常か……など店頭で見るべきポイントは数多くある。間違っても、「目が合った。運命だ」などと衝動買いすることだけは避けてほしい。その判断は、不幸な犬を生む第一歩になりかねない。

(朝日新聞 タブロイド「sippo」No.22(2014年3月)掲載)

太田匡彦
1976年生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当。AERA編集部記者、文化くらし報道部を経て、特別報道部・専門記者。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』『「奴隷」になった犬、そして猫』(いずれも朝日新聞出版)がある。

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動物福祉や流通、法制度などペットに関する取材を続ける朝日新聞の太田匡彦記者が、ペットをめぐる問題を解説するコラムです。
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