〝動物病院24時〟で気づいた 私とピンの関係

在りし日のピン
在りし日のピン

 ある日曜日の午後、ふとつけたテレビにピンが幼少期から最期まで通い、その後もココやハンターがお世話になっている動物病院の獣医さんたちが出ていました。

 あぁ、そういえば……とピンと毎週のように通っていたころ、待合室にあった貼り紙を思い出しました。

「ドキュメンタリーをとっているので、カメラクルーが入る日があります……」  私も2~3度、カメラクルーに出会ったことがありましたが、いつも暗くなってからの撮影のようで、〝動物病院24時〟みたいな番組なのかな~と想像していました。

 それからオンエアまで1年近く。改めて、ドキュメンタリー班の仕事はタイヘンなんだなぁと思うと同時に、お世話になった獣医さんたちの仕事ぶりを見られるなら……と、その番組を見始めました。

 途中から見たこともあり、番組の趣旨や狙いは正直よくわかりませんでした。ただ、スポットが当たっていたある猫のママ(飼い主)の言動に、私は衝撃を受けました。

 犬と猫、そして、その症状などによって、治療は異なるのでしょうけれど、ガンだというその猫に、ママは自宅で毎日、注射器に入れた薬を投与していたのです。

 薬を調合し、注射器に入れて、猫に投与する様子は、そう長い時間、映っていたわけではありません。でも、いかにも大変そうな作業とお見受けしました。

「ちょっとでも望みがあるのなら……」

「いや、可能性がゼロでも私は信じたい」

 とカメラの前で語る猫のママ。

 次のシーンは、深夜0時を過ぎた動物病院の処置室でした。カメラクルーがいたからかもしれませんが、ふつうなら飼い主は入れない処置室で泣きながら獣医さんに気持ちを訴えているママ。

 これは、いいとか悪いとかの問題ではないと思います。飼い主さんそれぞれのスタンス、接し方があって当たり前ですから。ただシンプルに、「私とは違うタイプの飼い主さんなのかなぁ」と思ってしまったのは事実でした。

 実はその動物病院には、長期で入院している犬のママがいて、彼女は超キャリアウーマンという雰囲気の方でした。毎日面会にいらしては、ほかの飼い主さんたちに〝子育て論〟をお話しになっていました。多頭飼いをなさっていらっしゃる、見るからに「ベテランママ」で、私にはここまでのお話はできないな、と思ったものです……。

 また、どういうお願いをしたら、そうさせてもらえるのかはわかりませんが、ずっと付き添っている飼い主さんもいると聞きました。

 獣医さんから言われた「ママとピンちゃんとの距離感が好きでした」という言葉の意味が少しだけわかった気がしました。

 それぞれ飼い主にはそれぞれの事情や思いがあるし、それに精いっぱい、応えようとしてくれるのが動物病院や獣医師だと思います。少なくとも、私がお世話になっている動物病院は、そういうところです。

 私は、ピンが旅立つ1カ月ほど前に9日間、入院した際も、面会は他の患者さんや飼い主さんが少なくなる夕方5~6時の間に限り、ピンを抱っこしながら語りかけるひとときを診察室で過ごさせてもらいました。

「ピンちゃんが、お家に帰りたくなってしまうから、処置室はそっとのぞくだけで……」

 と獣医さんから言われたこともずっと守っていたし、その処置室の奥まで足を踏み入れたのは、ピンが最後に発作を起こして旅立つまでの二十数分間だけでした。

 繰り返しになりますが、どちらがいいとか悪いとかではないのです。

 私はピンがリンパ腫の告知を受けて旅立つまでの1年2カ月、精いっぱいのことをやったし、ピンもそれはちゃんとわかってくれている……。

 ヨソの飼い主さんを見て、そんなふうに思えるようになりました。私にとっては、とてもいいタイミングのドキュメンタリー番組でした。

山田美保子
1957年生まれ。青山学院大学卒業後、ラジオレポーターを経て、放送作家、コラムニストなどを務める。『踊る!さんま御殿!!』の構成や、『サンデージャポン』『ドデスカ!+』などのコメンテーターを務める。ほかに雑誌、新聞、WEBに連載多数。

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この連載について
山田美保子の育犬日記
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