動物病院をもっと身近に 獣医師からの情報開示も必要

求められる飼い主本意の規制緩和

イラストレーション/石川ともこ
イラストレーション/石川ともこ

 東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県だけで、3千以上もの動物病院が存在する。ペットの飼い主の多くが、これらの動物病院をなんとなく選んではいないだろうか。また、病気やけがをしたときくらいしか縁のないところ、と思ってはいないだろうか。


 実は動物病院には、診療動物の比率の差やそれぞれの獣医師による得意科目の違い、が存在する。診療費や設備も、手がけている手術数もまちまちだ。最近では、いわゆる「かかりつけ医」の枠組みを超えて、高い専門性を兼ね備えた街の動物病院も出てきている。つまり、飼っているペットの種類、年齢、症状、さらには飼い主自身が置かれている状況などによって、選ぶべき動物病院は変わってくるのだ。


 また、特に犬や猫はその飼育環境の向上により、高齢化が進んでいる。犬も猫も7~8歳ごろから老化が始まり、「シニア」の仲間入りをする。そのころから定期的な健康診断をすすめる獣医師は少なくない。犬や猫の死因で多いがんや心臓病は早期発見、早期治療が鉄則だからだ。さらに言えば、同じ犬でも、犬種によって明らかにかかりやすい病気などがある。そうした犬種を飼っている場合には、若いうちからかかりつけ医に状態を確認しておいてもらう必要もあるのだ。

 

 

 一方で、獣医療の分野は受益者、つまりは(ペットと)飼い主に向けた情報開示が遅れている分野でもある。例えば診察や手術などの料金の広告は、獣医療法と農林水産省のガイドラインによって禁じられている。また一定の専門科名は掲げても構わないのだが、人間の病院のように「○○歯科」や「△△外科」などとうたう動物病院は限られている。獣医療法などの趣旨や存在意義はよくわかるが、より飼い主本意の規制緩和が求められるのではないだろうか。


 昨年施行された改正動物愛護法では新たに、第22条の3で「犬猫等販売業者は(中略)獣医師等との適切な連携の確保を」とされ、また第41条の2で獣医師は、虐待が疑われるなどした動物を発見した場合には「都道府県知事その他の関係機関に通報するよう」求められている。ペットが「家族」として扱われるようになるなかで、獣医師そして動物病院の社会的責任が高まってきている。

 

 

(朝日新聞 タブロイド「sippo」No.24(2014年10月)掲載)
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太田匡彦
1976年生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当。AERA編集部記者、文化くらし報道部を経て、特別報道部・専門記者。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』『「奴隷」になった犬、そして猫』(いずれも朝日新聞出版)がある。

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この特集について
いのちへの想像力 「家族」のことを考えよう
動物福祉や流通、法制度などペットに関する取材を続ける朝日新聞の太田匡彦記者が、ペットをめぐる問題を解説するコラムです。
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