動物用血液の販売会社The Veterinarians’Blood Bank (TVBB)では約360匹の犬と500匹以上の猫を飼育し、その犬猫から採取した血液を動物病院に販売している(PETA提供)
動物用血液の販売会社The Veterinarians’Blood Bank (TVBB)では約360匹の犬と500匹以上の猫を飼育し、その犬猫から採取した血液を動物病院に販売している(PETA提供)

何百匹もの犬猫 血液バンクに死ぬまで隔離収容され血を流す<米国>

 当会(JAVA)は、多くの海外の動物保護団体と連携して活動を行っています。今回は、協力関係にある米国に本部をおく団体から届いた、ある動物血液バンクの悲惨な実態に関するニュースをお届けします。

調査で明らかにされた実態

 動物用血液の販売会社「The Veterinarians’Blood Bank (TVBB)」は、900匹以上の犬や猫を劣悪な環境で飼育し、その血液を動物病院に販売している。動物保護団体PETA(※1)の潜入調査により、そこでは高齢や病気などさまざまな問題を抱えた動物たちからも血液を採取していたことが判明した。

 この施設にいる動物たちの多くはここで生まれ育ち、早ければ生後6か月頃から採血が始まり、それが生涯続く。採血から「引退した」動物たちでさえ、死ぬまで施設に閉じ込められるのだ。

 TVBBは “クローズド・コロニー(※2)” だと主張し、血液製剤を購入しようとする動物病院に安全性を謳っている。しかし、この施設にいる動物たちは、施設で生まれ育った動物たちだけではなく、実際には不特定多数の場所からも多く集められている。例えば、飼い主が見つからない近所の子犬、動物の飼い主募集のネット広告から手に入れた猫、従業員たちが持ち込んだ自身の飼い猫などである。施設のマネージャーは、従業員たちが持ち込んだ猫1匹につき200ドルを支払っていた。新入りの猫たちは屋外の小屋で飼われ、猫ヘルペスウイルスやマイコプラズマなどの感染症検査で陽性反応が出ても血液は使われていた。

猫は約30匹が1つのケージに入れられている。食べ物、隠れ場所、トイレなどの状態は、猫の数に対して決して十分とはいえない(PETA提供)

 動物血液バンクのガイドラインでは、輸血用血液は健康で汚染されていないことを求め、また血液ドナーになる犬や猫は、8歳前後までと定めている。しかしTVBBでは年齢制限を設けていなかった。動物病院で動物がTVBBから購入した輸血を受ける場合、その血液が病気、ケガ、高齢、投薬中の動物から採取された可能性が高く、採血される側と輸血される側両方の動物の健康が危険にさらされている。

 TVBBでは、約3週間ごとに犬から約15オンス(約444ml)、猫からは約2オンス(約59ml)を採血する。この量は動物病院での血液検査で採取される量に比べてはるかに多い。人間に例えると、2か月に1回程度の献血で提供する1パイント(約473ml)の血液に匹敵する。採血により、人間と同じく犬や猫も疲れや吐き気を感じる。生涯小さな檻に入れられ、3週間ごとに1パイントの血液を採取される生活を想像してみてほしい。

救い出された1匹の犬と、抑止のために必要なこと

 PETAの調査員は、施設にいる「コルビー」という犬の新しい飼い主探しについて経営陣に嘆願し、それが認められた。調査員が彼女を獣医師のもとに連れて行くと、尿路感染症と関節炎を、そして施設にいる多くの犬たちと同様に、重度の歯の病気も患っていることがわかり、感染が進行し根元まで侵食されている10本の歯を抜いた。

コルビーは2011年3月22日にTVBBで生まれ、12歳の誕生日の直前まで、3週間ごとに採血され、「引退」後も施設に閉じ込められていた(PETA提供)

TVBBにいるすべての動物たちと同様に、コルビーの耳には数字のタトゥーが入れられている。また、コルビーは吠えようとしてもかすれた声しか出ない。彼女の首には施設のオーナーが犬を静かにさせるために行っていた残酷な手術による傷が残り、声帯のほとんどが失われていた(PETA提供)

 TVBBは、マース社(Mars Inc.)(※3)が所有するブルーパールペット病院(BluePearl Pet Hospital)とVCA動物病院(VCA Animal Hospitals)などの大手動物病院チェーンに血液製剤を販売していた。PETAがマース社に対し、動物を監禁飼育している血液バンクから血液を入手しない方針への転換を求めたことによって、これらの動物病院チェーンは、今後、TVBBから血液を購入しないことになった。

 家族の一員として家庭で暮らし、飼い主が定期的な献血を申し出ている健康な動物以外の血液を入手しないと約束してくれるよう、PETAは、企業や動物病院の獣医師に協力を求めている。

PETAの調査員により施設から救出されたコルビーは、すぐに愛する家族の一員としての生活に慣れ、自分の体に合ったベッドで寝たり、散歩をしたり、新しくできた犬や猫の仲間と仲良く暮らしている(PETA提供)

(※1) People for the Ethical Treatment of Animals(動物の倫理的扱いを求める人々)/米国に本部を置く動物保護団体
(※2) 5年以上外部からの動物(遺伝子)の移入がなく、特定の集団でのみ維持されている個体群
(※3) 菓子やペットフードなどでも有名な米国の大手グローバル企業。同社のペットケア部門は、世界中に3,000の動物病院ネットワークを持つ

出典(下記のサイトには動画もあります)

VIDEO: How PETA Found a Home for a Hound Exploited by a Blood Bank

Video: Hundreds of Cats and Dogs Bled , Warehoused Until Death at Blood Bank Supplying Major Veterinary Chains

(次回は9月9日公開予定です)

【前の回】筆舌に尽くしがたい数々の暴力と劣悪飼育 発覚した茨城県畜産センターでの牛の虐待

JAVA
NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)。1986年設立。動物実験の廃止を求める活動を中心に動物の権利擁護を訴え、世界各国の動物保護団体と連携しながら活動している市民団体。

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この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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