先住のモモぞう(左)にべったりの新入り翠(すい)
先住のモモぞう(左)にべったりの新入り翠(すい)

約10年ぶりに迎えた子猫に大騒ぎ 要求の雄たけびに肝の据わったやんちゃぶり!

 我が家に子猫がやってきました。新しい猫を迎えるのは約10年ぶりです。先住猫は10歳と9歳のオス猫。子猫は新しい環境にあっという間に馴染(なじ)み、早々にうまくいくと思ったトライアルは、思わぬ展開となりました。前編と後編でお届けするこちらの記事、前編は子猫の様子を中心に紹介します。

「うち来る?」

 まずはトライアルに至る経緯です。

 うちでは猫3匹(「ポッポ」サビ/メス、「ニャンタ」サバトラ白/オス、「モモぞう」白/オス)との暮らしが10年近く続いていたのですが、昨年、最年長のポッポが17歳8カ月で急逝してしまいました。ロス状態からなかなか抜け出せず、自分の落ち度を責める点も多く、もう新しい猫を受け入れるのはムリだと思っていました。

 ところがポッポの旅立ちから9カ月が過ぎた頃、保護猫活動を始めていた知人から「こんな子がいまーす」と送られてきた子猫の写真にキュン! 亡くしたポッポに毛色がよく似ていて、可愛い……。

この写真にキュン! 仮名は「シロテ」(保護主さん提供)

 いなくなった子の面影を求め、探してしまうという、あるあるです。そして、「ちょっとだけ見に来ては?」というお誘いにホイホイ乗ってしまったのでした。

 その子猫は、別の保護主さんのところで元野良の母猫から生まれた女の子で、ちょうど生後3カ月とのことでした。

 いざ対面すると、これがものすごいおてんば。「キャー!」と大声を発し、数倍体の大きい成猫に「かかってこんかい!オラオラ」と挑む姿はまるでヤンキー!? 保護主さんによると「弾丸のように走り、きょうだいと激しくにゃんプロレスの毎日。食欲旺盛で、きょうだいの中で一番大きい」とのことでした。

対面時。いかにも気が強そう

 毛色は似ているも、大人しく賢かったポッポと中身は全く違っていました。でも、その気の強さ、声の大きさに躊躇(ちゅうちょ)しながらも、もう新しい猫はムリと思っていたけれど、こうして会ってしまったのは縁なのではと自分に言い訳し、言ってしまいました。

「うち来る?」

 ただ、翌日の譲渡会に参加を予定していたと聞き、「もしもっといい出会いがあったらそちらへ」と、一度天に委ねることに。1日待った結果、「出会いはなかったよ」との連絡を受け、トライアルが決定したのでした。

大騒ぎの初日

 保護主さんが家に子猫を連れてきてくれた日、先住2匹はそそくさと避難するも、子猫の方はおびえる様子もなく、ケージに入れると「キャー!」。続いて「ヴィィィィィ」「ヴェェェェェ」(出せー出せー)と地獄の底から響くような声で鳴き、あまりにうるさいのでケージから出すと、我が物顔に歩き回り、遊び始めました。フードもガツガツ平らげ、母猫やきょうだい猫と離れた心細さはみじんも伺えません。今までに迎えた歴代の猫たちはさすがに最初はおびえた様子だったのに対し、これほど肝の据わった猫は初めてで、驚きました。

ニャンタに威嚇された後もどこ吹く風で、遊びに夢中

 夜になり、保護主さん宅での習慣にならい、就寝時には子猫をケージに入れて消灯。

 すると例の「ヴィィィィィ」「ヴェェェェェ」が延々と続き、やがてガタンッ、ガシャガシャ、ガターン!と大きな音が。見に行くと水入れが倒されてケージの中が水浸しで、トイレもひっくり返っていました。それらを片付け、またやられ、を繰り返し、うつらうつらするとまた「キャー!」「ィィィィィ」、ガタガタ!

 さすがに近所迷惑になると考え、真夜中にケージから出してしまいました。本当はゆっくり慣らしていかなければいけないのはわかっていたのですが……。

「翠」と命名

 次の日、私は早朝からほとんど外に出ていたのですが、休みで家にいた夫によると、子猫はどうやら完全にリラックスし、やりたい放題のよう。

へそ天で熟睡

 食べては暴れ、と思うと電池が切れたようにコテンと寝て、爆睡。そして起きると「キャー!」と雄たけびを発しながら、人間にも猫にも突進し、甘える。それを先住猫は仕方なく受け入れるといった構図。大人の猫に対して遠慮なしなのは、子猫だった頃のニャンタやモモぞうが来た時とそっくりそのままでした。

 ならばこのまま定着していくのではと期待し、その晩、子猫を「翠(すい)」と命名しました。もう大丈夫だよね、と言いながら……。

トライアル中止の危機

 それからの翠は、狭い家の中をまさに弾丸のように疾走し、人間にも猫にも「オラオラ!」と勝負を挑み、あらゆる場所へ入り込み、手あたり次第にものを破壊。さらに地獄の底から響くような雄たけびと目つきの悪さから、いつしか「悪魔」と呼ばれるように。

 暴れたり破壊したりはいたずら盛りなので仕方ないのですが、困ったのは食事です。先住猫が子猫用フードを欲しがり、子猫が成猫用のフードを欲しがり、それを阻止するのがひと苦労でした。

ついた異名は悪魔ちゃん

 しかし先住猫との関係はというと、翠のパワーにタジタジしながらも、2匹とも一緒に遊んだり、追いかけっこしたりという様子が見られました。そこで「もういつでもトライアル終了OKです!」と余裕の発言をしていたところ、大変なことになりました。

 食いしん坊のモモぞうが、食欲がなくなり、嘔吐、下痢。その後、ほとんど食べない、飲まない、いつもと違う場所で寝ているという状態が続き、ストレスの疑いが濃厚になってしまったのです。

2~3日目には一緒に遊んでいた

 もし子猫のストレスからくるものならと「やり直し」を試み、翠をケージに入れてみますが、やはり「ヴィィィィィ」「ヴェェェェェ」とものすごい雄たけびで、いや、少し成長した分、パワーアップしていて、その声を聞いたモモぞうがむしろおびえてしまったため断念。

 困り果て、状況を伝えてアドバイスを求めた保護主さんから、「いったんトライアルを中止しましょうか」と提案を受けました。

 もっともな提案です。でも、「いったん」は同じことの繰り返し。トライアルを中止すれば、完全に翠を返すことになると思いました。そんなことになっているとは知らず、すやすやと眠る翠の顔を見ながら、なんとかしたい、でもモモぞうがこのまま食べなければ死んでしまう……と葛藤が続きました。

(後編に続く)

(次回は9月20日公開予定です)

石井聖子
猫依存症の名古屋在住ライター。幼少期は犬、亀、鶏、インコと暮らし、猫歴は30年以上。現在は3ニャンズ(と夫)と同居。さらにワンコも一緒に暮らすのが野望。夢は弱い立場にいる動物と子ども、全ての人が一緒に幸せになれる方法を見つけること。

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