保護猫活動を始めるきっかけになった2匹(小川さん提供)
保護猫活動を始めるきっかけになった2匹(小川さん提供)

保護猫活動への道は突然に 犬派だった女性も猫の魅力にはあらがえない!

 行き場をなくしたりした猫を保護して預かり、新しい飼い主につなぐ保護猫活動。始めるきっかけは人それぞれですが、取り組む人はやはり基本的に「猫派」なのでは。

 しかし、1年ぶりに会った“犬派”の女性が、どうしたことか保護猫活動にどっぷりはまっていました。一体なぜ?

(末尾に写真特集があります)

始まりは台風の夜

「まさか自分が……」

 そう話す小川さんは、常時3〜5匹の犬と暮らし、育てた大型犬のなかには嘱託警察犬として活躍した子もいる、筋金入りの愛犬家です。

「動物は好きですが断然犬派で、うちで猫を飼ったのは娘が小さい頃に拾ってきた時だけ。その子を見送ってからは、自分が猫の世話をすることはもう絶対ないと思っていました」

 それが今では、地域猫のTNR活動(野良猫を捕獲して去勢・避妊手術後にもといた場所へ戻し、見守っていく取り組み)、必要な場合は一時預かりのボランティア、毎週のようにある譲渡会での新しい飼い主さん探しと、保護猫活動に奔走する日々を送っています。

現在保護している1匹。名前は「音」(小川さん提供)

 発端は、約1年前の台風の夜。自宅にいた小川さんのスマホに、近くに住む娘さんからの着信がありました。なんだろうと思いながら電話に出ると、焦った声で「家のどこかで子猫の鳴き声がする!探すのを手伝ってー!」

 急いで駆けつけた小川さんと娘さんがあちこち探して見つけたのは、鎧戸(よろいど)と網戸の隙間の奥にいた、母猫と4匹の子猫でした。驚かしてしまうのはかわいそうですが、鎧戸は使用時に動かす必要もあり、そのままにしてはおけません。

「まず捕獲しようとしましたが、奥まった場所だったので時間がかり、母猫は子猫4匹のうち2匹を連れて逃走。そのとき保護できたのは残った子猫2匹でした」

気がつけば保護活動家に

 娘さんの長女に猫のアレルギーがあるため、小川さんが2匹を連れて帰りました。子猫はノミだらけ。丁寧にシャンプーし、冷えないように保温したりフードを買いに走ったりと、ドタバタが続きました。「親から離れてしまったこの子たちを生かさなければと必死だった」と言います。

「落ち着いたらどこか保護団体さんにお願いしようかと考えていたのですが、知人を介して個人で長く保護活動をしている方につながり、事情を話すとすぐ飛んできてくれたんです。かかりつけの動物病院にも一緒に行ってもらい、必要な検査や処置を受けました」

 こうして図らずも、保護活動のベテランから“保護の仕方”を指南してもらうことに。

台風の夜にやってきた茶トラ白の兄弟(小川さん提供)

 不思議なのは、「この子たちをお願いします」と預けることもできたはずなのに、そうしなかったこと。なぜかはよく覚えていないそうですが、「私がなんとかしないと」という責任感だったのではないでしょうか。これが、保護活動の道への第一歩でした。

 ワクチン接種が2回済んだあと、譲渡会にもデビュー。1匹は何度かの譲渡会を経て、また、もう1匹は友人宅へ、新しい飼い主さんのもとへ送り出すことができました。

 これで一安心……ではありませんでした。猫との縁が続いていたのです。

 もともと小川さんの自宅の周辺には野良猫が多く、家の敷地内で生まれていた子猫を保護するなどし、最初の2匹を送り出す頃には猫の数が増えていました。

別で保護した4匹兄弟のうちの2匹。後日トライアルがスタートしたそう

 当初は去勢・避妊手術も持ち出しで行っていましたが、自治体関連の支援センターに費用をサポートしてもらえることから、公認「キャットサポーター」として登録。地域の保護活動に参加し始めており、その中での保護も続きました。

そしてシェルターと化す

 最初の2匹が来たあの日からもうすぐ1年という取材時には、自宅の一室がシェルターとなり、預かっている保護猫は成猫3匹と子猫4匹の計7匹。飼い犬3匹と合わせ、小川さん宅には犬と猫で10匹という大所帯になっていました。

保護猫ルームはワンコも遊びにきてにぎやか

 例えば、以前から時々庭に現れ、しばらく見なかったあとに子猫3匹を伴い再訪し、家の敷地内に住み着いたキジトラ猫の「みらい」。親子で保護し、大人猫のみらいはなかなかご縁がつながりませんが、子猫たちはすぐにトライアルを経て正式譲渡となり、幸せに暮らしています。

警戒心の強いみらい。出来るだけそっとしておく

 茶トラ白の「ダン」は、ポツンと1匹でいたところを小川さん自身が発見。通りから少し入った駐車場の、軽自動車の前に段ボールが敷いてあり、その上でアオーンアオーンと鳴いていたそうです。

「とても人慣れしていて、連れて帰ってからも、すぐにひざに乗ってゴロゴロと甘えてきました」

 ダンはやることなすことユニークで、クスッと笑わせて和ませてくれる天才。さらに他の猫や犬ともフレンドリーという申し分ない性格です。

こんなこともしちゃうダン。推定1歳(小川さん提供)

「間違いなく、どこかのおうちで飼われていたのでしょう。きっと可愛がられていたのだと思います。それがどうしてあんなところにいたのか……」

 近隣の迷い猫の情報には当てはまらず、想像したくはないけれど、何らかの理由で置き去りにされた可能性が。おそらくつらい体験をしたはずなのに、人間への信頼を持ち続けています。

 成猫になっていることもあり、やはりなかなか次の飼い主さんが見つかりませんでしたが、持ち前の人(&犬猫)懐っこさと愛嬌で素敵な出会いがあり、後日トライアルが決定しました。

猫ってたまらない

 3匹の飼い犬たちは、最初は「お母さんをとられるのでは?」と心配したのか、緊張した様子を見せていたものの、今では入れ替わり立ち代わりの猫たちの存在にすっかり慣れたそう。

「ここにきて、想像してもいなかった猫人生が待っていたなんて。犬派だった私がどうしてこんなことに」

 そう言いつつも、「でも猫ってすごい! たまらない、あらがえない魅力があるんですよね」としみじみする小川さん。

あたたかい心に、猫たちも全面的な信頼を寄せています

 そして小川さんは、「この子たちのためにも、まだ当分は元気でいないといけなくなっちゃった」と笑います。募るのは「放っておけない。幸せにしたい」という思い。これは保護活動に取り組む人全てに共通するものでしょう。

 保護活動は、労力、精神力ともに大変なパワーを要し、経済的な負担もとても大きく、生半可な姿勢や覚悟でできるものではありません。でもきっかけがあれば、そして動物が好きで、やさしい心があれば、犬か猫かといったことは関係なく、はまってしまうのかもしれません。

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石井聖子
猫依存症の名古屋在住ライター。幼少期は犬、亀、鶏、インコと暮らし、猫歴は30年以上。現在は3ニャンズ(と夫)と同居。さらにワンコも一緒に暮らすのが野望。夢は弱い立場にいる動物と子ども、全ての人が一緒に幸せになれる方法を見つけること。

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