脱走した愛猫を発見したが排水溝のさらに奥へ! 地域猫に詳しい人の協力で保護できた
「大切なペットが脱走した!もう戻ってこないのでは……」そう感じている方に知ってほしい、逃げた犬や猫の帰還ストーリーと、経験者に聞く保護のアドバイスです。
きっかけは窓の鍵のかけ忘れ
- 【逃げたペットと状況】
- 名前:おもち
性別:オス
種類:ミックス猫
年齢:推定4歳
いなくなった場所:自宅マンションの一室から
理由:家族が窓の鍵をかけ忘れてしまった
状況:11月、朝7時に脱走に気づく
保護までの日数:2日間
2022年11月のある朝、渡辺さんは目覚ましの音で目覚め、いつもなら起こしにくる愛猫のおもちがやってこないことに気がついた。たんなる気まぐれだと思いながらおもちのえさ入れにフードを出すが、音を聞きつけて走ってくるはずのおもちはやはり現れない。嫌な予感がしつつ家の中を探し回った渡辺さんは、一室だけ、窓の鍵が開いているのを発見する。
「家族が使っていた部屋でした。近づいてみてみると、ほんの少しだけ隙間が空いていて、おもちが自分で開けて逃げたことに気づいたんです」
猫仲間から情報を得る
- 【いなくなった時にしたこと】
- 近所の猫友達や地域猫を世話している人、保護活動をしている人に協力を仰いだ
渡辺さんの自宅は、マンションの上階だった。窓は外廊下から階段につながっていたため、おそらくおもちは階段を下りて、外をさまよっていることになる。渡辺さんはすぐにスマホをとり、思いつく限りの人におもちの失踪を連絡して、協力を募った。
「うちのエリアは地域猫が多いので、個人で保護活動をしている人や猫を気にかけている人がたくさんいたんです。私が連絡すると、みなさん捜索に名乗り出てくれたり、有益な情報を提供してくれて助かりました」
中でも、長年地域猫を世話してきた人や保護活動に関わっている人は猫の行動範囲に詳しく、捜索の手がかりになる重要な情報をくれた。
「地域猫はエリアごとにメンバーが決まっていて、お互いに行き来することはないので、おもちがいる可能性が高いのは道路を越えない近くのエリアではないかと。『家猫は脱走してもすぐに遠くに行かない』ということも教えてくれたので、半径50メートル以内を重点的に探しました」
しかし、日中は猫の活動が鈍い上に、その日は雨が降っていたため、猫たちはどこかに隠れてじっとしていたようで、おもちが見つかる気配はない。渡辺さんや協力してくれた近所の人たちが捜索を始めたのは朝7時。気づけば、手がかりがみつからないまま夕方を迎えようとしていた。
排水溝で発見!
状況が変わったのは夕方6半を過ぎたころだった。地域猫の世話をしている友人の一人から渡辺さんに、「おもちがみつかった」という連絡が入ったのだ。
「友人に事情を聴くと、『地域猫におもちの行方を尋ねたら、おもちがいる排水溝に連れてこられた』と言うんですよ。実際、駆けつけてみると排水溝の周りに地域猫たちが4匹ほど集まっていて、中をのぞいてみたら奥の方でおもちがうずくまっていました」
不思議な話に驚きながらも、おもちが見つかったことに安心した渡辺さん。しかし、見知らぬ場所で猫や人間に囲まれてパニックになってしまったおもちは、なかなか確保することができなかった。
「猫がやっと入れるほどの大きさだったので、人間が入っていき捕まえることはできませんでした。捜索に協力してくれた人たちが猫用おやつやかつおぶしを持ってきてくれたのですが、ひとりが食べ物で釣っている間にもうひとりが後ろから捕まえようとしても、すぐに奥へ逃げられてしまうんです」
そうこうしているうちに時間は過ぎて深夜に。渡辺さんたちの疲労がピークに達した隙をついて、おもちはついに排水溝の奥から別の出口へと逃げてしまった。
2度目の発見
一日中探し回った愛猫にあと少しのところで逃げられてしまった渡辺さんは、精神的にも体力的にも限界が近づいていた。そこで、一度家に帰って体勢を立て直し、翌朝、再び捜索に出ることに。しかし、2日目の日中を使って捜索するも、見失ったおもちは簡単には見つからない。
渡辺さんは、「猫は昼間は隠れているから夜の方が見つかりやすいよ」という猫友達のアドバイスを受けて、夜に出直すことにした。
「1日目とは別の保護活動をしている方が捕獲機を貸してくださったので、その方と一緒におもちが現れそうな場所に設置しに行きました。その帰り道、夜8時くらいだったでしょうか。その方が、『あれ、おもちじゃない?』と通りがかったアパートの外階段を指さしたんです」
そこにいたのはまぎれもなく、やつれた様子でぼんやりと座り込んでいる渡辺さんの愛猫だった。
「私が『おもち!』と名前を呼びながら近づき、その方が後方を塞ぐように近づきました。おもちは、警戒する風でもなくすんなりと抱き上げられて、あっけなく捕獲されたんです」
猫探しは夜がおすすめ
- 【捜索のポイント】
- ・そのエリアや地域猫に詳しい人に協力してもらうことで効率よく探せる
・家猫が脱走した時は、半径50メートルを重点的に探す
・猫は明るいうちよりも夜間の方が活発に行動するので見つけやすい
・猫探しに慣れていない人はTwitterでアドバイスをもらうのもおすすめ
渡辺さんはたくさんの人の協力や助言がおもちの捕獲につながったと話す。
「おもちが捕獲されたのは、猫が活発に行動する夜間で、家から50メートルも離れていない場所でした。もし猫仲間の助言がなければ、私はひとりで昼も夜もなく歩き回りつづけて、的確な時間に的確な場所を探せていなかったと思います。
地域猫のお世話をしている人は猫が隠れている場所をよく知っていたし、エリアごとの顔ぶれを覚えているので、パトロールに協力してくれました。猫仲間だけでなく、今は亡き愛犬のかつての散歩友達も、犬の散歩をしながらおもちの姿がないか見回りをしてくれました。結果的に何十人という人たちが、おもちの捜索に関わってくださったと思います」
また、渡辺さんはおもちがいなくなってすぐ、Twitterに投稿して情報提供を求めていた。
「もし、若い方がおもちを保護してくれていたら、警察署や愛護センターよりも先にTwitterで飼い主を探すかもと思っての行動でした。予想以上に拡散が早く、ものすごい勢いでリツイートされたので、たくさんの方から猫の探し方やご自身が見つけた時の情報を提供していただきました。
おもちの場合は遠くへ行っていなかったので、結果的には自力で保護することができましたが、猫を探し慣れていない方や時間が経って遠くへ行ってしまった可能性のある方には、Twitterの拡散力はより力強いかと思います」
脱走対策を強化
- 【猫探しの教訓】
- ・外を知っている猫の脱走対策は何年経っても油断しない
・日頃から猫飼い同士のコミュニケーションをとっておく
家に連れ帰られたおもちは、排水溝に隠れていたためか、もともと白い毛が薄汚れていたものの、ケガや危険な目にあった様子はなかった。汚れた体を洗うためにお風呂に入れ、ごはんを与えると、いつも通り食べてその日は人間の布団に入って眠ったという。
「発見時はやつれて見えましたが、家に連れ帰ったら何事もなかったようにけろっとしていましたね。変わったことといえば、次の日おもちが外を見てなにか騒いでいると思って見たら、ベランダの下に地域猫が来ていました。家猫が外にいたのが珍しかったのか、地域猫にいじめられたりはせず知り合いになったようですね(笑)」
おもちはもともと地域猫の中から保護した猫だった。
「外で生まれた子なので、保護した当時は外を気にしていたし、脱走したこともあったんです。でも、ここ2年くらいは興味がなさそうに見えたので完全に油断していました。一度でも外に出たことのある子は油断できないなと思い知らされました。今はまた、外に興味がなさそうにしていますが、逃げた窓も含め改めて、脱走対策を見直しているところです」
脱走からおよそ2日後、飼い主の手で無事に捕獲されたおもち。渡辺さんがふだんから築いてきた強力なご近所ネットワークが発見のカギとなったことは言うまでもない。猫飼いは犬を飼っている人よりも近所の飼い主同士でつながる機会は少ないが、日頃から猫仲間や地域猫と関わっている人との関係を作っておくことで、いざという時に心強い協力が得られるかもしれない。
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