行き場のない動物たちの保護活動 「伝えることで変わる」絵本作成や命の授業で啓発
一般社団法人「Reef Knot」(リーフノット、大阪府)は、行き場のない動物たちの保護活動をする団体だ。根本的な問題の解決に向けて、子どもたちへの啓発活動に力を入れている。
絆を固く結んで
代表の飛田俊さんは、企業勤めののちに別の動物保護団体で約4年間働き、2019年にリーフノットを立ち上げた。団体名の「リーフノット」とは、日本語で「固結び」という意味だ。これまでに飼い主との絆が切れてしまった犬や猫を見てきたことから、「絆を固く結んでいられるように協力することを、スローガンに掲げたい」と考えたという。
リーフノットは、大阪府内の保健所から動物を引き取っている。取材時には、シェルターには約30匹の猫が保護されていた。「殺処分の期日が迫っている子や、触れない子を保健所から引き出すというのが活動のメインです」と飛田さんは話す。
また、飼い主が亡くなり、身寄りもなく取り残された動物も保護している。さらに交通事故に遭った動物を引き取ることもあるという。
2カ月間、独り部屋に残された猫
いま一番多いのが、飼い主が亡くなりペットが残されるケースだ。
キジ白の「まもる君」(推定12歳)は、一人暮らしの飼い主が他界し、2カ月間、家のなかに独り取り残された。連絡が取れないことから知人が訪れ、近所の人から飼い主が亡くなったと知ることに。「猫を飼っていたはず」と知人が覚えていたことがきっかけで取り残されていることがわかった。
飛田さんたちが部屋に入ると、室内は荒れていた。まもる君はノミやダニに血を吸われすぎて貧血になっていたという。口の中はひどい口内炎で、右脚には力が入らず、尻尾もがガビガビの状態だった。
「これまでに飼い主が職を失ってしまったり、事故に遭って亡くなったりしてことで、動物を保護したケースもある。どんなことが起きても動物と一緒にいる覚悟で迎え入れて、万が一自分に何かあったときにどう動物を守るか備えておくことが必要」と飛田さんは話す。
飼い主に看取ってほしい
譲渡を希望する人の中には、高齢であっても「私が他界したあとは、子どもたちが世話をするから」と言って、子猫や子犬を迎えようとする人もいるという。飛田さんは「犬や猫たちにも感情があって、飼い主さんが死んでしまったら悲しいと感じると思っている。だから、もし自分が先に亡くなってしまっても世話をする人がいるから大丈夫ではなく、飼い主さん自身に犬や猫を看取(みと)ってほしい」と考えている。
日々さまざまな相談が寄せられる中で、やむを得ず引き取り依頼を断らざるをえないことも少なくない。
「動物保護施設にも、受け入れられる上限数がある。限界を超えて保護してしまったら、保護施設が多頭飼育崩壊になって、せっかく救った子たちがふたたび路頭に迷ってしまう。それは絶対にやってはいけない。苦しい思いをしている動物たちがいるのはわかるけれど、施設がつぶれてしまってはどうにもならないんです」
行き場がない犬や猫が多すぎるという現状を変えていくために、飛田さんが力を入れるのは啓発活動だ。過去に、テレビCMや人気漫画の影響を受けて、特定の犬種に人気が集まり、その後相次いで手放されて保護される様子も見聞きしてきた。「なぜこんなつらい思いをしている動物が多いのか、たどっていくことが必要。動物を飼うということは、簡単なものではないということを、子どものころから伝えたい」
小学校などで「命の授業」
そこで小学校や中学校、高校を訪れて、「命の授業」を行っている。リーフノットの活動内容や、どんな経緯をたどって犬や猫が保護されるのか、殺処分についても触れることがある。小学校で授業をした際に、交通事故にあった猫がリハビリする動画を紹介すると、子どもたちから「がんばれー!」と声援が上がったという。
このほか、絵本も作成している。クラウドファンディングで資金を募り、これまでに2冊を自費出版した。実話を元にした猫の物語「おれは待っている」と、もう一冊は不適切な環境で飼われている犬をめぐる「犬泥棒」だ。ストーリーを作成したのは、いずれも飛田さんだ。
「保護施設にとって一番重要なことは、僕らが知っていることを伝えることです。僕は殺処分問題を知ったことで、動物保護の世界に飛び込んだ。それぐらい、知るだけで変わることはあると思っています」
(磯崎こず恵)
◆絵本「おれは待っている」の内容はYoutubeで見ることができます。
◆寄付は、池田泉州銀行 桃山台支店 普通 155355 へ。絵本の購入や継続支援はリーフノットのホームページから
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