動物の幸せのため、胸にきざむ動物愛護団体としての責任 虐待からのレスキューも

本田さんと、シェルターで過ごす犬たち

 NPO法人アニマルレスキューたんぽぽ(大阪府)は、野良犬や野良猫の保護をはじめ、虐待の通報が寄せられた犬猫のレスキューや、保健所からの引き取りを続けている。大切にしているのは、動物たちの幸せと、動物愛護団体としての“責任”だ。

(末尾に写真特集があります)

「動物の命を守りたい」

 代表の本田千晶さんは、小学生の頃に保健所に連れて行かれる犬の姿を見たことをきっかけに、「動物の命を守りたい」と思い続けてきた。10代後半でアルバイトができるようになると、自分ができる範囲で動物保護活動を開始。その後、より多くの犬や猫たちを助けたいと、2016年にNPO法人を立ち上げた。

 自宅をシェルターにし、犬や猫たちと寝起きを共にする日々。現在も約60匹と暮らす。子猫や病気の猫を除き、自由に動き回れるようにと猫はケージに入れない。元気で幸せに過ごしてほしいから、毎日の徹底した掃除で清潔を保ち、良質なフードにもこだわる。犬や猫の相性にも気を配るなど、きめ細かな配慮も忘れない。

動物たちが、元気に幸せに暮らせるように心を配る

 山で暮らす野犬を保護するときには、長い時間がかかることもある。ある犬は、毎日えさを持って訪れる本田さんを遠く離れた木の陰から観察、いなくなるのを確認してからえさを食べる警戒ぶりだった。母犬やきょうだい犬が保護されても1匹で山に残り続け、保護に要したのは1年4カ月。シェルターで一緒に暮らすうち、いまでは一緒に寝てくれるまでになった。「山ではちょっとしか姿を見せなかった子が、隣で寝ている姿をみると本当に幸せ」と本田さんは目を細める。

 これまでに、虐待を受けた犬や猫も保護してきた。ある野良猫は、人為的な虐待を受けて脚先が壊死(えし)してしまっていた。4本脚の肉球をすべてやけどした糞尿(ふんにょう)まみれの犬、声帯を切られていた犬もいた。本田さんは、虐待の証拠を集めて警察に通報することも続けている。「虐待という犯罪を絶対に許してはいけない」と思うからだ。

虐待で両前脚の脚先が壊死していた猫「宝丸」。すっかり元気になり、自由に動き回っている

間違いのない譲渡を

 保護団体としての責任も、重く感じている。譲渡先がどんなに遠くても、必ず自宅を訪問し、家族全員と会うという。家の中も見せてもらい、改善が必要なところは直してもらう。

「譲渡は、数を競うことではないと思うんです。1匹1匹に、責任を持つことが大事。丁寧に間違いのない譲渡をする必要がある。そうすれば、犬や猫は終生路頭に迷うことはないし、保健所に戻されることもないんです」

 本田さんはまた、飼い主に考えてほしい “責任”もあるという。「犬や猫に癒やしてほしいから」という理由で飼うことについて、「一緒にいたら自然に癒やされるのはわかるけど、癒やしてもらうために飼うというのはおかしいですよね。犬や猫は人間の癒やしの道具ではないんです」と指摘する。

犬たちの生まれた場所も育った環境も、さまざまだ

「自分の年齢や体調を考え、最期までみとれるかを判断して飼うことが必要です。『なんとかなる』ことはありません。飼うのが難しいのならば、飼わないことも愛情です。飼わなくても愛護団体に遊びにきたり、ボランティアしたりする方法もあります」

 動物保護活動は命に関わることであり、責任も重い。緊急時には、昼夜を問わず飛び出していくこともある。めまぐるしい日々で、どんなときにこの活動をしていてよかったなと思うのか、本田さんに聞いてみた。

「幸せになった犬や猫たちが、譲渡先の家族と一緒に遊びに来てくれる。写真もずっと送ってくださるんですよ。それがやっぱりうれしいですね」

(磯崎こず恵)

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