ネコはなぜ頭部を回転させるの? 「猫ドリル」はエネルギー消費をおさえるためだった

頭部を左右にぶるんぶるんと振る通称「猫ドリル」(イラスト:長崎訓子)

「猫ドリル」という言葉を知っていますか? ネコが頭をぐるぐるっと高速回転する様子が、まるでドリルのようにみえることからネコ好きの間で広まっている呼び名のことです。「猫ドリル」は主に、水を浴びた後などにみることができます。この頭部を高速回転するしぐさは、ネコだけではなくイヌやマウスなどさまざまな動物でもみられます。今回は、動物が頭部を高速回転する仕組みについて調査した論文 " Wet mammals shake at tuned frequencies to dry "を紹介します。

動物はエネルギー消費をおさえるために体を震わせる

 動物の中でも哺乳類は、体が水にぬれるとその水を乾かすためにぶるぶると震えます。体についた水分を蒸発させるためには1日のカロリー摂取量の20%が必要だとか。そのため、一刻も早く効率的に乾かす方法として、体をぶるぶると震わせるのではないかと考えられています。

 この仕組みは、たとえばデジタルカメラなどにもつかわれており、センサーからほこりを取り除くためにシェーカーと呼ばれる機能が搭載されています。同じように火星探査機にもソーラーパネルにたまったほこりを取り除くためにも使われているそうです。

 アメリカ・ジョージア工科大学とアトランタ動物園の研究チームは、イヌやネコ、マウス、ブタ、クマなど33匹(16種と5種のイヌ)の動物がぬれた水をどれくらいの速さで震えて乾かすのかを調べました。

 まず動物たちの体重と胸囲を測定します。続いて、ハイスピードカメラでぬれた動物たちを撮影しました。小さい動物にはスプレーで、大型動物にはホースで水を振りかけたそうです。いくつかの動物の映像は研究者のYouTubeでみることができます。

ネコは1秒間に9回、頭部を回転させる!

 調査に参加したラブラトールレトリバー(35kg)の結果は、振れ幅はなんと約90度、1秒あたり約4.5回揺れていることがわかりました。さらに皮膚は60度くらいたわむそうで、筋肉と毛皮がゆるくつながっていることで、エネルギーコストをおさえることができるとのこと。また、さまざまな動物を調査した結果、大きなクマは1秒間に4回、ネコは約9回、マウスは30回以上と、体が小さくなるほど揺れる回数が多くなることがわかりました。

イヌは四つ足のままですが、マウスは前足をあげて頭部を揺らします(イラスト:長崎訓子)

 研究チームは「ウェットドッグシミュレーター ( wet-dog simulator ) 」という装置をつくり、毛皮から飛び散る滴の動きを再現しました。結果、揺れて発生する遠心力は重力よりも多くの滴が排出されることがわかりました。しかし、より長くまたは速く振ったとしても、速く乾燥するわけではありません。それぞれの動物は最低限の動きで一番速く乾燥する速度を知っているようです。

 ネコの祖先は水のない砂漠で生まれたことがわかっており、極端に水を嫌います。なのでわざと水をかけることはよくありませんが、もし水がかかってしまった時は「猫ドリル」の回転数を数えてみてください。

愛猫スカイのドリルを撮影しようとカメラを構えるも、そう簡単にはやってくれないのがネコという生き物

今回ご紹介した論文
Wet mammals shake at tuned frequencies to dry

服部 円
編集者・研究者。武蔵野美術大学卒業後、ファッション誌の編集者を経てフリーランスに。 2011年にWEBメディア「ilove.cat」を立ち上げる。2021年、麻布大学で修士号(動物応用科学)を取得。現在は京都大学野生動物研究センターの博士後期課程に在籍し、ネコとヒトとの関係について研究を行っている。Instagram @madokahattori

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この連載について
ネコ研究最前線
京都大学野生動物研究センターに在籍中の著者が、ネコにまつわる最新の論文を紹介しながら、ネコ研究の面白さを伝えていきます。
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