味のあるオトコ、ゴン太
味のあるオトコ、ゴン太

「ゴン太、なんて可愛いの」 ボロボロで保護された猫、愛情深い家族の元で幸せに

 千葉県に住む加藤家に初めての猫がやってきた。譲渡会で一家4人が心惹かれた猫は、鼻周りのぶちひげがご愛敬で、2歳過ぎの愛らしさに、ふとしたしぐさのオッサンぽさも併せ持ち、人間大好きの「かまってちゃん」だった。多頭飼育崩壊現場に置き去りにされ、ボロボロで保護されたという過去を持つ「ゴン太」は、やってくるや一家の心をわしづかみにしてしまった。

(末尾に写真特集があります)

猫ってこんなに可愛いものとは

 ある日曜日。加藤家のダイニングには朝からみんなが集まっている。智之父さん、麻子母さん、高校生の紗和(さわ)さん、小学生の達海(たつみ)くん。みんなが思いきり目尻を下げて見つめる先には、家族になったばかりの「ゴン太」がいる。

 子どもたちが大きくなってからは、こうしてソファに4人でくっついて並んで休日を過ごすなんてなくなっていたのに、復活した。ゴン太がぴょんとソファに飛び乗り、「御神渡(おみわた)り」を始めた。まず父さんのひざで甘え、紗和さん、達海くんと続く。そして最後に、母さんのひざでまどろみ始めた。

家族と猫
一挙手一投足がすべて可愛いゴン太

「忖度(そんたく)の猫なんですよ、ゴン太は。ほんとは僕のひざにもっと長くいたいんだけど、『ちょっと他のひざにも行ってくるからね』って移っていくんです。いやあ、なんて賢いんだろう、なんて可愛いんだろう」と目を細める智之さんは、じつは、ずっと犬派だった。

「譲渡会で、ゴン太をひとめ見て、この子って決めて、そこから動かなかったのは、僕だけ。あとの3人は、他の猫も見てましたからね」と、達海くんは、最初からゴン太ひとすじだったことを主張する。

「ゴン太はほんとに可愛いです。何をしていても」と、紗和さん。

「ダラダラしてるのが好きな私と、ゴン太は波長がピッタリなんです」と、麻子さん。すかさず、智之さんが茶々を入れる。

「そうだな。ゴン太を迎えたばかりの時、心配で会社からメールしたら、いつだって「ゴン太は今、私のおなかの上」って返信だったもんな」

 とにかく、一家はこぞって「ゴン太、どうしてそんなに可愛いの」なのだ。

ひざの上の猫
麻子さんのひざの上のゴン太

劣悪な現場からボロボロで保護された

 譲渡募集のゴン太のキャッチコピーは「人間が大好きな甘えん坊」だった。会場でも、懐っこい彼は人気者で、ケージから手を出してきて「かまって」アピールをしていた。チュールのおやつタイムでも、大喜びで達海くんの手から食べた。

 だが、保護時のゴン太は、そんな猫ではなかった。

 ゴン太は、とある劣悪な多頭飼育崩壊現場にいた猫である。行政などと連携し、社会福祉活動として猫たちの保護を続けている千葉県の団体goens(ごえん)が、SOSを受け、レスキューすべく行政と共に現場に入った。ゴン太は、現場の家の主に「その子は、近所のおばあさんが置いてった子で、うちの猫ではない」と言われたが、いっしょに保護してもらえた。

保護された猫
脚先をケガしていた保護時(goens提供)

 保護時は、ボロボロの状態で、多頭飼いされていた他の猫たちと同様、「大事にされる」という経験がなく、人との接し方も甘え方も知らなかった。左脚先をケガしていたため、手術をした。

 保護後のゴン太はどんどん甘えん坊になり、スタッフたちにも譲渡会の来場者たちにも大人気だったのだ。

猫エイズキャリアだって、幸せになれる!

 ゴン太は、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)のキャリアである。goensでは、これまでにたくさんのキャリアの子を送り出し、どの子も理解ある譲渡先でしあわせに暮らしている。

 加藤家の父さん母さんも、猫エイズについていろいろと調べ、「ストレスや体調に気をつけていれば、発症せずに寿命をまっとうする猫も多い」という知識を持った上でゴン太に接している。「猫エイズの子を迎えたからといって、何も変わらないです」と、智之さんは朗らかに言う。

「つまり、その子の健康と幸せをいつも考えて愛情を注ぎ、出来るだけの長生きを願うということに尽きる。それにどんな病気を発症しても、その時に最善を尽くしてやるのは、どんな猫でも同じでしょう?それより、ゴン太は、すごく僕たちの健康に貢献してくれていると思う。楽しいし、笑えるし、仲よくしていられて、ストレスなしの日々(笑)」

ゴン太に話しかける達海くん

 そんなゴン太の「可愛いところ」をめいめいに語ってもらった。

「人懐っこい。しぐさが可愛い。顔もちょっと可愛い。あと……全部!」と、達海くん。

「気持ちいい時にゴロゴロ言いながら半眼になるところが、すごく可愛い」と、マニアックな紗和さん。

「のんびり穏やかにそばにいてくれるところ」と、麻子さん。

 智之さんのゴン太愛は、極めつきだ。

「どうしてこんなに可愛いんですかね。帰宅時にマンションのエレベーターの前に立った時に、ゴン太が上目遣いで出迎えてくれる顔が浮かんできて、『いやあ、ゴンちゃん、可愛いよな』と独り言が出ちゃいます」

 加藤家では、帰宅時の第一声がみんな「ゴンちゃんただいま」「ゴンちゃん、どこ?」だそうだ。

スマホと白黒猫
加藤家のスマホ待ち受けは、全員ゴン太

 保護後、goensでは、口内炎の通院治療を尽くした上でゴン太のトライアルをスタートさせたのだったが、この取材後に、獣医さんから勧められた奥歯の抜歯手術も受けさせた。

 智之さんから、抜歯後のゴン太の近況メールが届いた。

「手術入院から戻ってきまして。歯を抜いてすっかり気分がよくなったらしく、ダラダラ猫だったのが元気はつらつ猫になりました。猫じゃらしではしゃぎまくり、円卓に飛び乗り、床でゴロンゴロン転げ回っています。元気で楽しそうなゴン太に泣きそうです。可愛すぎて食べちゃいたくなります。ゴン太愛がこの先どうなっていくのか、自分が怖いです」

 活発になっても、人のそばが大好きでいつも足元にいることは変わらないという。寝ている紗和さんの顔に足をドンと乗っけて寝ていたり、達海くんが修学旅行の支度をせずにお母さんにガミガミ言われていた時も、足元で付き添った。

 ゴン太よ、ゴン太。愛情深い家族たちと楽しく猫生を謳歌(おうか)せんことを。

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佐竹 茉莉子
人物ドキュメントを得意とするフリーランスのライター。幼児期から猫はいつもそばに。2007年より、町々で出会った猫を、寄り添う人々や町の情景と共に自己流で撮り始める。著書に「里山の子、さっちゃん」「猫だって……。」など。Webサイト「フェリシモ猫部」での「道ばた猫日記」は11年目。

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