ウクライナのシェルターより
ウクライナのシェルターより

動物が気になり現地取材 ウクライナ、戦火のなかでも犬と猫を救う人たちと出会って

 ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まり、映画監督で作家の山田あかねさんは、動物たちや犬、猫のことが気になり現地に向かいました。ポーランドとウクライナで、動物を助ける人達を取材した様子を伝えていきます。

(末尾に写真特集があります)

戦地の動物たちは?ポーランドへ向かう

 2022年2月24日。ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まった。次々と伝えられるニュースでがれきのなか、ぽつんとたたずむ犬の写真を見た。シェパードのような大型犬。途端に胸を突かれた。戦争で苦しんでいるのは人間だけじゃない。戦地で動物たちはどうなっているんだろう。犬や猫は?考え出すと止められなくなり、行ってみようと思った。

 無謀である。何のあてもない。調べてみると、戦火のなか、犬や猫を助けているひとたちがいることを知った。動物保護団体のメンバーや獣医師、ボランティアたちだ。彼らは自分の身を危険にさらしても動物を助けようとしている。その活動を見てみたい。できるなら記録したい。長年取材を共にしているカメラマンと二人で4月17日、ポーランドへ向かった。

 首都ワルシャワは、イースター(キリスト教の祝日)だったこともあり、にぎやかでとても平和に見えた。ウクライナの国旗や応援グッズを見かけたが、隣の国で戦争が起こっているなんて実感できなかった。けれど、ウクライナと国境を接する街、プシェミシルに着くと印象はガラリと変わった。戦火が迫っている……という危機感ではなく、ウクライナの人を助けようという熱気にあふれていたからだ。

プシェミシル駅構内には黄色いベストを着たボランティアがいる

どんなときも動物を助ける

 プシェミシル駅には、日に何度かウクライナからの列車が着く。戦争が始まった直後は避難民でごった返していたが、2カ月が過ぎてかなり落ち着き、構内には支援のためのコーナーがいくつもあった。水や食料を始め、子供向けのオモチャや医薬品など必要なものが無料で提供されている。相談に乗ってくれるボランティアもたくさんいて、列車が着くと避難してきた人達に「困っていることはないですか」と次々に声をかけていく。戦争の悲惨さを感じる前に、人を助けようとする熱意に触れて、気持ちが和らいだ。

 避難して来たひとたちも想像よりずっと明るい表情をしていた。やっと安全な場所に着いたからだろうか。何日も電車に揺られて疲れているはずなのに、生き抜く意欲のようなものを感じた。それはウクライナに入ってからも強く感じることになるのだけれど、その時にはまだ、戦争状態を生きることをうまく理解できなかった。

ニコライから避難し、ドイツへ向かう

 中には犬や猫を連れているひともいて、「置いて逃げるなんて考えられない」と当然のように話してくれた。「動物と一緒に電車に乗って大変だったのでは?」と尋ねると、「子供たちが遊んでくれて人気ものだったのよ」とうれしそうに答える人もいて、苦労したという人には会わなかった。

 この時から2週間あまり、ポーランドとウクライナで動物を助ける人達を主に取材した。プシェミシルにはスーパーマーケットの跡地を利用した巨大な避難所があった。

 小動物(犬や猫、うさぎなど)を連れた人は一緒に滞在することができ、避難所前には、世界中から駆け付けた動物保護団体のテントが並んでいた。フランスの俳優ブリジットバルドーが始めた財団や100年以上の歴史があるデンマークの動物愛護団体などが、犬と猫用のフードやケージ、リードなどを無償で提供し、簡単な治療を行っていた。

 地元のシェルターや獣医師の紹介もしていて、誰もが気兼ねなく相談できた。「日本から動物保護の取材に来た」と話すとどの団体のメンバーからもハグで迎えられた。「どんな時も動物を助けなきゃね」と笑顔で言われて、とても頼もしかった。

動物を助けるため世界中からボランティアが集まる

ケンタウロス財団のシェルター

 ウクライナとの国境近く、メディカにはポーランドの動物保護団体「ケンタウロス財団」が臨時のシェルターを作っていた。戦争が始まってすぐに来たといい、電気も水道もなく、発電機を使い、水は消防車から給水を受けていた。この時までに千匹以上の犬と猫をウクライナから保護して、ポーランド西部にある本部まで運びだしていた。ここにも、世界中からボランティアが来ていた。

 ドイツから12時間、車を走らせて駆け付けた女性、大学を卒業したばかりのベルギー人のカップルなど、シェルター内のコンテナで生活しながら、犬や猫の世話に明け暮れていた。プシェミシルには、個人でウクライナから犬や猫を引き受けている女性もいた。

 広大な庭を持つ彼女は自らウクライナに入り、公営のシェルターからもらい手の少なそうな犬や猫を積極的に受け入れていた。

個人で動物保護をしている

ウクライナで出合った地域犬

 ウクライナには通算3回、入った。初めはこわごわと向かったけれど、訪れたリビウやドロホヴィッチなど西部の街は、ホテルもレストランも普通に営業していて、日常生活が続いているように見えた。

 とはいえ、日に何度か空襲警報は鳴るし、建物の地下には避難所が設置されていて、戦時の緊張感はあった。そんな状態でも動物を助けようとするひとたちはいて、飼い主と犬と猫をつなぐQRコードつきのタグを無償で配っている企業家にも出会った。ウクライナで一番驚いたことは、地域犬のようなしくみがあることだった。

野良犬はのんびりしている

 街中では野良犬をよく見かけたが、どの犬ものんびりと昼寝をしている。道ゆくひとも特に気にする様子はない。戦地で立ちすくむ犬の写真に衝撃を受けたけれど、あの犬も野良犬だったのかもしれない。飼い主を失ってぼうぜんとしたのではなく、街が消失して途方に暮れたのかもしれない。

 どんなときでも動物を助けようとする人達に出会え、貴重な体験をした。同時に戦火の中を生きるひとたちの強さに少しだけ触れることができたように思う。これから続けて書いて行くのでぜひ読んでください。

「ハナコプロジェクト」が始まります!
飼い主のいない犬と猫の医療費を支援する「ハナコプロジェクト」が5月20日からスタート。一般社団法人ハナコプロジェクトの代表理事に山田あかねさん、理事を俳優の石田ゆり子さんが務める。保護犬、保護猫が負担なく医療を受けられるしくみをつくることが目的。第一歩として、「保護犬・保護猫・野良猫の不妊去勢手術」「飼い主のいない子犬・子猫のケア」から始める。寄付や詳細は、ハナコプロジェクト公式サイトへ。

山田あかね
映画監督・作家。2010年愛犬を亡くしたことをきっかけに、犬と猫の命をテーマにした作品を作り始める。主な作品は映画『犬に名前をつける日』、映画『犬部!』(脚本)、『ザ・ノンフィクション 犬と猫の向こう側』『ザ・ノンフィクション 花子と先生の18年』(フジテレビ)、著書『犬は愛情を食べて生きている』(光文社)など。元保護犬のハル、ナツと暮らす。

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