単行本『結んでつくるマクラメの猫ハンモック』から探る 猫にとっての居心地の良さ
猫との暮らしにおいて、安全や健康のためにも完全室内飼いが推奨されている今。家の中で猫がストレスなく過ごせるよう、快適な居場所づくりは必要だ。
猫ベッドやキャットタワーなど様々あるが、昨年2月に発売された単行本『結んでつくるマクラメの猫ハンモック』(エクスナレッジ)は、猫の居場所として“猫用のハンモック”を提案し、作り方を掲載するハウツー本だ。
同書の編集を担当した鴨田彩子さんと、誌面に登場する“猫のための住宅”を設計した「猫と建築社」中村裕実子さんにも話を聞きながら、この本を通して「猫にとって居心地の良い場所」について探った。
ハンモックは猫にぴったり
「ハンモックは、空間を上下に使い、高いところを好む猫にぴったり」と話す鴨田さんは、過去に5冊、猫ベッドや首輪、術後服などの手作り本を作ってきた。
今回、さまざまな猫グッズをチェックしている中で見つけたのが、海外の手芸愛好家たちの間で作られていた「マクラメ」で作る猫ハンモックだった。マクラメとは、アラビア語を起源とした、ひもの結び方でさまざまな模様を作る技法のこと。装飾的で丈夫なので、バッグやミサンガなどのアクセサリー、近年では吊るして楽しむ植物「ハンギングプランツ」でも知られている。
「マクラメの猫ハンモックは知らない人も多いでしょうし、ハンモックに適した丈夫さに加え、デザイン性も優れていることを広く知ってほしいと考えました。猫は気まぐれなので、いつ使うか分からない。慣れるまで時間もかかるかもしれないので、ぶら下げているだけでもインテリアとして映えるのは魅力的だと感じました」
マクラメのハンモックの魅力が伝えられるよう、鴨田さんはSNSを中心に猫がいる素敵な家を地道に探し、2軒の家にたどり着く。持ち主の方に許可を得て、実際にハンモックを設置して撮影をさせてもらった。
猫も人も快適であるということ
「猫と素敵に暮らす、というのは、猫と人、双方が快適な家ということです。1軒目は、猫飼いの方があきらめがちなインドアグリーンを上手に取り入れている家を選びました。植物の癒やしとハンモックの解放感あるたたずまいが調和していました」
「2軒目は、猫と暮らす前提で注文設計した家です。キャットタワーやキャットステップと組み合わせて、アスレチックの一部のようにハンモックを使う提案ができました。この家は猫と人が一緒にいながらも、行動エリアがうまく住み分けされていて、双方が快適なんです」
2軒の家から伝わるのは、猫にとって心地よい居場所は、人にとっても快適な空間となっていること。
また、どちらの家庭の猫ものびのびと暮らしているためか、新顔の猫ハンモックに猫たちは“様子見”という感じだったそう。猫の好みに合わせた高さ、場所、吊るし方の調整が必要そうだと思われたことから、本には使い方のガイドも掲載されている。
怖がりな子には、最初は置き型を
2軒目の、猫と暮らす前提で建てられた家を設計したのが、神奈川県にある「猫と建築社」。人と猫が快適に過ごす家づくりを提案している建築設計事務所だ。
「猫と建築社」の中村裕実子さんは、猫との生活も長く、地域猫のボランティア活動も行う“猫との暮らし”のスペシャリスト。猫ハンモックを導入するメリットや、設置場所について中村さんからもアドバイスをいただいた。
「猫は床レベルよりも少し高い位置を好む傾向にあるのと、体に沿う形状・素材が好きなことが多いので、ハンモックはいいですよね。最初は不安定な動きを怖がる子もいると思いますが、馴れればその気持ち良さに気付いてもらえると思います。怖がりな子には、最初は置き型で馴れてもらう方がいいかもしれません」
「また吊るすタイプなら、寝ている猫を動かすのがかわいそうで掃除ができない……なんてことも気にしなくて良いので楽だと思います」
「ハンモックは、リラックスしたイメージを与えるアイテムです。吊るされているだけでもなんとなく優雅な気持ちになり、心地よい空間に感じられると思います。そこへ愛猫が乗って気持ちよさそうに眠っている姿を見たときには……これ以上の癒やしはないのではないでしょうか」
置き場所は窓の側がおすすめ
配置について中村さんは「窓の側がおすすめ」と教えてくれた。ふんわり揺れを感じながら外の景色を眺めるのは、猫もリラックスできて楽しいそう。
「あとは、人間のベッドやリビングのソファの横など、家族の近くが安心して良いと思います。冬は少し高め、夏は低めなど室温の分布に合わせ、またエアコンの風が直接当たらない位置にしたりするなどの配慮を。ドアの近くなど、人の動きが多い場所も避けた方が良いでしょう」
様々な高さ、方角に猫の居場所を
ご自宅でも、3匹の猫たちのために居心地の良い場所づくりを実践している中村さんに、猫のための空間づくりのヒントも聞いてみた。
「猫はそれぞれ自分で快適な空間を探します。でも猫って、一生の中で若い頃と高齢になってからでは好きな場所が変わりますよね。1年、何なら1日の時間帯でも変わります。なので、猫が自分の意志でくつろげる場所を探せるよう、各部屋のさまざまな高さ、方角に居場所をつくってあげて欲しいです。新築なら、全方角にたくさん窓を。猫は立体的に動く動物なので、人と違って高さも色々と工夫ができます」
猫のための余剰空間
家を建てたりリフォームをしたりしなくても、各部屋で色々な高さの場所をつくってあげることはできると言います。例えば、本棚なら全部詰め込むのではなく一カ所空けるなど、いろいろな場所に余剰空間をつくるのも一案だそう。
「“猫モジュール”で考えるというか。人と猫の過ごしやすさは異なりますが、お互いが過ごしやすいよう、猫目線になってみて部屋を見て欲しいですね」
猫にとって快適な居場所づくりは、猫の居場所を増やしてあげることから。
どんな家にも今から導入でき、素敵な見た目で人にリラックス感を与え、猫にとっては心地よい居場所のひとつとなる――。愛猫のために、マクラメの猫ハンモックを手作りしてみてはいかが?
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