バッグに術後服、猫グッズ作りが心のケアにも 「愛猫のために手を動かす時間は貴い」

 愛猫のおもちゃや、古着からでもできる猫ベッド、術後服などの作り方を紹介する「猫と暮らす手づくり帖」(エクスナレッジ)が発売中だ。著者は手芸書を多数出版し、手芸教室を主宰する越膳夕香(こしぜんゆか)さん。同書に登場する猫用の通院バッグやエリザベスカラーなどは、19歳で天寿を全うした愛猫・ミケコの通院経験をもとに作られた。

 さらに、ミケコの主治医で同書の監修をした獣医師・渦巻氏がリクエストした「胃ろうチューブ収納ポケットつき術後服」をはじめ、市販品が少ない猫のケアグッズも充実している。越膳さんに初心者でも作りやすい猫グッズについてや、10カ月ほど続いたミケコの闘病と、通院時の心境について聞いた。

(末尾に写真特集があります)

無心で通院バッグを作って病状の不安を払拭

 越膳さんの愛猫・ミケコは、18歳のときに糖尿病を患う。定期的に通い始めた動物病院の待合室では、様々な方法で動物を連れてくる飼い主たちに出会ったという。

三毛猫ミケコ
「ミケコに作ったものは、毛皮の色に合わせて、 白、グレー、茶の組み合わせのものが多かった気がします」と越膳さん

「定期的な通院になるなら…と、バッグはいろいろ作りました。ミケコをバッグから出してスリングに入れて抱っこしていると、ほかの飼い主さんから『あら、きれいな三毛猫さん、おいくつ?』などと話しかけられたりして。

 待合室でのコミュニケーションって、けっこう救われるんですよね。似たような病気の子だと励まし合ったり、アドバイスをもらえたり、『おだいじに』と声をかけ合ったり」

 検査のため、朝から動物病院にミケコを預け、夕方には新しいバッグを作ってお迎えに行ったこともあったという。

「『検査結果はどうだろう……』という不安な気持ちを横に置き、お迎えの時間を目標にして、『あと1時間!』と自分を追い込みながらバッグを作るのに没頭したこともありました」

猫用首輪つきスリング
首輪つきスリング お互いの体温を感じて安心

 越膳さんは、無心でミケコのために手作りする時間が、愛猫を介護する中でのメンタルコントロールにも役立ったと語る。

「いま振り返ると、ミケコのためだったのか? 自分のためだったのか?って感じですね。でもこれ、けっこう大事なことで、ケアする人が健康で元気じゃないと、つらくなって行き詰まって、最悪の場合は飼育放棄にもつながりかねないと思うんです。飼い主が幸せな気持ちでいないと、猫を幸せにする余裕も生まれないですからね。自己満足もいいことだと思うのです」

愛猫のために手を動かす時間は“貴い”

 愛猫のグッズを手作りすることへのこだわりや想いについては、こう話してくれた。

「猫によって好みはいろいろですが、手作りであれば、猫の好みを探ったり状況に合わせたりしつつ柔軟に、作り直したりアレンジしたりすることができます。素材選びなど、安全に気を配って作ってあげることもできますしね。

 もちろん、既製品やオーダーメイドもありますが、病は突然の場合も多いので、注文した品が届くまでの一時しのぎにでも手近にあるものでちょっと作れたら……という気持ちで、古着リメイクの保定袋や介護服を考えました。何を作るにせよ、愛猫のために知恵を絞って手を動かし工夫する時間は、貴いと思います」

猫ベッド
セーターリメイクのベッド 飼い主の匂いがしみついた古いセーターを使うのがポイント

 越膳さんは、猫との時間は“有限”だからこそ、手作りに挑戦することを提案してくれた。

「今はおうちにいる時間が長いので、猫と一緒にいる時間も長くなっていることでしょう。ならばその猫との限られた時間の中で、猫のためにちょっとがんばってみるのはいかがでしょう? 難易度もさまざまなアイテムをご紹介しましたが、古着や端ぎれ、手芸店や100円ショップで買えるものなど、手近にあるものを利用してできるものばかりです。

 とはいえ、これはほんの一例に過ぎないので、みなさんの猫のために、愛を込めて工夫して作ってあげるヒントにしていただけたらと思います。いつか訪れるかもしれない闘病の時間も、必ずやってくるお別れの瞬間も、手作りの持つ力で乗り越えて、最後までずっと一緒に幸せに過ごしてもらいたいなと願います」

猫の好みを探りながら楽しく作って

 越膳さんによると、初心者でも作りやすいものは、「猫じゃらし」だという。

「猫じゃらしなら、家にある細長い布や糸を適当に束ねて棒の先にぶら下げるだけですから、どなたにでも作れるはずです。猫に試して反応が薄い場合は、素材を変えたり鈴をつけたり、光る素材を混ぜてみたりマタタビを仕込んだりと、試行錯誤をしながら猫の好みを探るのもまた楽しいと思います。自分で作ったおもちゃで遊んでくれる姿は、市販のおもちゃとは違った喜びがあるので、手作りするのが病みつきになってもらいたいですね。ただし、誤飲には気をつけて」

猫とねずみのぬいぐるみ
ねずみのぬいぐるみ 端ぎれを縫って綿を詰めたシンプルおもちゃ

猫が一緒に寝てくれるペンションで撮影

 同書で注目したいのは、手作りグッズの数々はもちろん、グッズを身に着けた猫たちの姿だ。リラックスした様子で登場する猫たちは、ペンションを経営するお宅に住む元保護猫たち。

 同書編集担当の鴨田さんが、撮影時の様子と同書のおススメポイントについて話してくれた。

「このペンションの猫ちゃんは、誰かが抱っこして連れてきたり、呼んだりしていないのに、猫ちゃん自ら部屋にやってきて寝てくれるんです。私も朝まで一緒に寝ました。初めて会った人の部屋で一緒に寝てくれるって、すごいことですよね。

 猫たちは元保護猫なのですが、ペンションを始められた飼い主のオーナーさんに感謝しているのか、そんな風にもてなしてくれるようです。今回の撮影で、この猫ちゃんたちに協力をお願いしましたが、人の言葉をよくわかっていましたね。

猫とくらす手づくり帖中ページ
かわいいだけでなく、介護や通院時にお役立ちな技ありなグッズが満載

『健やかなるときも病めるときも』をテーマに、おもちゃなどちょっとしたものから、病気やケガの時の軽くてソフトなエリザベスカラー、試行錯誤して作った術後服も載っています。愛猫を少しでも手助けしたい、読者の方に届けば嬉しいです」

撮影:白井由香里/ミケコの写真提供:越膳夕香)

猫と暮らす手づくり帖 おもちゃ・キャリー・ケアグッズ
著者:越膳夕香
監修:渦巻浩輔(市ヶ谷動物医療センター センター長)
出版社:エクスナレッジ
サイズ:B5変/104P
価格:1,500円+税
安田有希子
2015年からsippoにて「猫アレルギーですけど」の連載開始。2匹の元保護猫と暮らして4年目に猫アレルギーが発覚するも、平和に暮らす。猫の好きなパーツは、小さく並んだ門歯。幼少の頃「うちのタマ知りませんか?」のすごろくに大ハマりした年代。栃木県出身。

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