リアル『僕のワンダフル・ジャーニー』 愛犬が私を探してる!

犬の顔
いつだってアイコンタクトで会話ができた先代「ジャス」

 何度、生まれ変わっても大好きな飼い主を探して会いに行く。
 そんな映画のような出来事が私にも起きました。

愛犬が私を探している!

 私は「ジャス」という愛犬と、彼女が天寿を全うする14年3カ月を共にしました。いつも何をするにも一緒。彼女がいなくなり片割れとなってしまった私は、ジャスを返してほしいと願い続ける日々を過ごしていました。

 ジャスが亡くなり半年がたった頃、庭に狸が出現。じっと見つめ合う狸と母。突然のことで母は茫然……のちに、「あれはジャスだったのだろうか?」と感じたとか。

 以来、狸は二度と現れませんでした。

先代犬
ジャス。姿は見えなくなってもいつも一緒

 不思議な出来事から6カ月経った冬。庭でジャスがよくゴロゴロしていた場所に白猫が。そのしぐさに「え?ジャス?」と私。ガラス越しに見つめあう白猫と私たち。母はふと言いました。

「なんで猫なの?あとね、もっとわかりやすい形で来て」

 なんて要求をするんだ……この人は。母から猫に視線を戻すともう猫の姿はなく、以来、白猫も二度と現れませんでした。

 狸に続き白猫。これは……ジャスが私を探してる!? 映画『僕のワンダフル・ジャーニー』が脳内再生されるのでした。

ジャス発見!? 驚くほどの共通点

 白猫事件からだいぶ時間が経ち、私は気まぐれに見ていたサイトで「ジャン」というジャスにそっくりな顔の犬を発見します。画像をクリックすると出てくる詳細——「宮崎」「遺棄2回」「保護犬」——並ぶキーワードのインパクトは相当なものでした。でも私の頭に浮かんだのは、「あれ?ジャス?なんで宮崎にいるの?迎えにいかないと」だったのです。

保護犬
偶然みたサイトに掲載されていたジャン

 名前もジャンとジャスで1文字違い。こんもりお山のおでこも同じ。体重も同じ。何より衝撃だったのは、ふとした瞬間のまなざしやしぐさがあまりにもそっくりだったのです!

 ジャンの年齢は5歳で、ジャスが亡くなった日からちょうど5年。まさにこれは生まれ変わり!? のちにわかったことですが、記録に残るジャンが保護された日、12月17日はジャスの誕生日でもあるのです。

あれ?運命の再会のはずが…

 保護犬のことは正直よくわからないけれど、とりあえずジャンに会いに行くことにしました。東京から宮崎に降り立ち、空港まで迎えにきてくれた保護主さんの車の後ろに、いた!ジャスだ! 私のハートはすっかりテンションお化けです。

 でも一方のジャスはビクビク。少ししか触らせてくれません。車の中では私の背後でフンフンにおいを嗅いではまた座りなおすの繰り返し。

 東京へと帰る際、「だいぶいい感じの反応ですよ。もう少し通ってもらえると」という保護主さんの励ましの言葉がつらい……。いや、もっと感動的な再会といいますか、奇跡的な仲良しシーンを見せるつもりだったんです。

 両親に報告すると、「似てるね。おでこは同じ……狸みたいな顔やねこの子」と母。この人はまたなんてことを言うんだと、よみがえる狸エピソード。

 本当にジャスかな?と心揺れる中、宮崎にてお泊り会が実施されました。そして事態は一変します。

 二人っきりになると戻る、ジャスの面影。抱っこと甘えてきたり、隣にぴたりとくっついたりと、ジャスとのあの頃の時間が戻ってきたようでした。

うちの子デビュー!

 初めてジャンに会ってから2カ月。

 保護主さんとのやりとりや、ジャンを一人にさせられないため車での長距離移動をどうするのか、環境作りのために東京での物件探しから一転、滋賀の実家へ引っ越すなど数々の試練を経て、いよいよジ ャンが我が家にやってきました。

 初めての家なのにすべてを知っているかのように2階へ駆け上がり、ベッドに飛び乗るなど驚くほど慣れた姿を見せる一方で、こわごわとへっぴり腰で水を飲む姿、一人では1階に降りてこられない、音に敏感ですぐ驚いてしまう、など保護犬特有と思われる行動はしばらく続きました。

 特に男性は苦手なようで、父にはとにかく唸る、吠えるのミルフィーユ。溺愛という魔力で怒れない私はじゃっちゃんの鼻やおでこに濃厚なチューで応戦します。するとじゃっちゃんは唸ることをやめ、おとなしくなるのです。

 我が家にきて8カ月経ったいまも、この父への姿勢と私の対抗策は変わらず続いています。

犬の気持ち
だんだん自信が出てきてやんちゃな一面も見せるように

親バカぐらいでちょうどいい

 私だって大変な目にあってきたら、拒絶反応を示して逃げたくなります。そんな気持ちのときに怒られたら、わかってもらえない悲しさで寂しくなります。学習能力に長けているから警戒して唸るし、「こっち来るなよー」と主張するのです。

 じゃっちゃんはなんて賢いんだ! 主張する自由があるって素晴らしいじゃないか!

 そう、私は親バカです。

 こんなふうに、もし自分が同じ境遇ならと思いを巡らせながら日々じゃっちゃんと対話しています。じゃっちゃんはいま、新しい環境で一人っ子状態になり、まるで大学デビューした学生のように“本来なりたい自分”になり始めているのではないか?とも思うのです。

川見安美
宝島社に勤務する編集者。『愛犬を長生きさせるコツ』をはじめ愛犬MOOK累計44万部のムック本他、ライフスタイル、ビューティなど幅広いジャンルの本の編集を手がける

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