猫にも人にも負担が少ない健康管理 獣医師が推奨する「おしっこだけ検診」とは?

 獣医師団体の「Team HOPE」では、猫の健康管理や予防医療として、健康診断の推進に取り組んでいます。それとあわせて推奨しているのが、月1回、猫のおしっこだけを動物病院に持参して検査してもらう「おしっこだけ検診」です。

 愛病のおしっこを検査することの重要性を、獣医師団体「Team HOPE」代表の太田亟慈(じょうじ)・犬山動物総合医療センター代表にお聞きしました。

太田亟慈先生
1977年北里大学畜産学部獣医学科卒業。犬山動物総合医療センター代表。ホスピタリティーをコンセプトとして、人と動物に優しい動物病院を目指す。2013年より全国の獣医師が協力してペットの未来を考える「Team HOPE」を起ち上げ、ペットの予防医療に取り組む。
犬山動物総合医療センター 公式サイト

我慢強い猫の異変をいち早く発見するために

――猫の尿検査では何がわかるのですか?

 膀胱(ぼうこう)炎や尿路結石、腎炎、腎不全など、猫に多い泌尿器の病気を早期に見つけることができます。病気の兆候に早く気づけば、食事管理や生活環境の見直しなどを行うことで、病気の発症や進行を防ぐことができるのです。

 猫は非常に我慢強い生きものです。トイレに行く回数が増えた、おしっこの量が少なくなった、おしっこのときに鳴き声をあげるようになったなど、飼い主が異変に気づく頃には、すでに病気が進行し、重篤な状態になっていることも少なくありません。病気の兆候を早期に見つけることが、猫が健康に長生きするためには大切です。

――猫は加齢とともに腎機能が低下するといわれています。尿検査を受け始めるタイミングは、シニア(7歳前後)にさしかかる時期からでよいのでしょうか?

 いいえ、0歳であっても、猫を家族に迎え入れたタイミングで始めることをおすすめします。泌尿器の病気はシニアに多いと思われている飼い主さんが多いのですが、うちの病院で治療した猫の中には、生後3カ月で尿路結石を発症した子もいます。若いから大丈夫と過信するのは禁物です。

 猫も人間も、健康管理で大切なのは、健康なときからデータを蓄積しておくことです。そのデータに変化があれば異常を疑うことができ、早期発見につながります。

 なかには、数値が異常でも、問題がない猫もいれば、正常でもどこかに問題を抱えている猫もいます。そういったことを把握するためにも、ふだんから定期的に検査をすることを推奨しています。

猫トイレに入る猫
健康に見えても何か問題がある場合も。それを知るためにも検査は大切です

「おしっこだけ検診」は猫にも飼い主にも負担が少ない

――太田先生は、月1回の「おしっこだけ検診」を推奨していますが、それはなぜですか?

 「Team HOPE」では猫の健康診断の普及を目指しています。成猫は1年に約4~5歳のスピードで年を取り、7歳でシニアとなります。猫の健康管理のためには、定期的に健康診断をして小さな変化を見逃さないことが大切です。

 そのため、0歳から7歳までの猫は年に1回、7歳以上の猫には半年に1回の健康診断をすすめています。猫が年を取るスピードを考えると、本来なら月に1回くらい受けていただくのが理想ではありますが、それでは猫の肉体的・心理的な負担はもちろん、飼い主の経済的負担も大きくなってしまいます。

 そこで、おすすめしたいのは「おしっこだけ検診」です。その利点は、猫を動物病院に連れていくことなく、おしっこだけを動物病院に持っていけば尿検査をしてくれること。

 検査結果によって、さらに血液検査やエコーなど他の検査をすべきか判断することができます。嫌がる猫を無理やり病院に連れていく必要がないので、猫にも飼い主にも負担が少なくてすみます。

猫トイレに頭を突っ込む長毛猫
猫はいつも通り、おしっこをするだけ。「おしっこだけ検診」は猫の負担が少ないキャットフレンドリーな健康管理法なのです

できるだけ新鮮なおしっこを持っていくことが大事

――「おしっこだけ検診」で注意すべきことはありますか?

 検査に必要なおしっこの量は、2ccが目安です。採尿したらすぐに保冷剤と一緒に動物病院に持っていき、新鮮な状態で提出すること。

 猫のおしっこに関する調査結果によると、おしっこを採取してから、常温であれば3時間、冷蔵庫で保管すれば6時間まで、成分が変わらないことがわかっています。動物病院には、何時に採取したおしっこなのか、時間も伝えるとよいでしょう。

――自宅で猫のおしっこを採るのは難しそうですが……。

 棒の先についたスポンジで吸いとるという専用のグッズもありますが、いちばん簡単なのは、おしっこが下のトレーに落ちる2段式のシステムトイレ。

 下のトレーのペットシーツを外しておき、そこにたまったおしっこをスポイトやしょうゆさし容器で採るのが、猫にも飼い主にもストレスのないやり方だと思います。

 おしっこを採るときには、上の段に入れる砂やチップを新しいものに変えてください。いろいろなタイプがありますが、おすすめは撥水(はっすい)性の高いシステムトイレ用のチップで、なおかつ“おしっこの成分に影響を与えない”チップ。非常によくできているので、僕の病院でも活用しています。

猫のシステムトイレ用チップ
おしっこを採る時のポイントは、「砂やチップを新しいものに変えること」と「おしっこの成分を変えない砂・チップを使うこと」

――どの動物病院も、「おしっこだけ検診」をしてくれますか?

 どこもやってくれるはず。かかりつけの動物病院があれば、相談してください。初めての病院だと初診料が必要になりますが、2回目以降、かかるのは検査費用だけ。病院によって違いはあるものの、1000~3000円程度で検査してくれると思います。

 猫は体の不調を言葉で伝えることができません。病気になる前の予防医療として、まずは「おしっこだけ検診」から始めてほしいと考えています。

一般社団法人Team HOPE
犬山動物総医療センター代表、太田亟慈獣医師の発案により起ち上がった、ペットの健康診断を推進する獣医師団体です。高齢化が進むペットの健康寿命の延伸を目的に、予防医療の大切さを啓発するさまざまな情報を発信するほか、現在それぞれの動物病院で行われている健康診断を全国で標準化し、ペットがより健康診断を受けやすくなるための環境整備を行っています。
毎年10月13日(じゅういさん)を「ペットの健康診断の日」と制定し、10月の1カ月間、健康診断キャンペーンを実施しています。
Team HOPE公式サイト
油科真弓
信州の山里で動物が身近にいる環境に育つ。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライター兼編集者に。雑誌や書籍、企業広報誌、ネットなどで編集・執筆を行う。猫と着物が好き。20年以上を共にした猫3匹を看取り、現在は保護猫3匹と生活中。人慣れいまいちの2匹を抱っこすることが、今の夢。

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この連載について
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