動物愛護週間に考えてみよう 保護犬・保護猫を引き取るという選択肢

保護犬
保護犬・保護犬を迎え入れるには?

 9月20日(月)~26日(日)は動物愛護週間です。動物愛護週間とは、動物愛護管理法に基づき、国民に動物の愛護や適正な飼育について広く理解・関心を深めてもらうために毎年行われているものです。

 犬や猫を家族に迎える方法は、ペットショップやブリーダーから購入するだけではありません。保護犬や保護猫を迎えるという選択肢もあります。今回は保護犬・保護犬についてお話したいと思います。

コロナ禍で変化したペット業界

 新型コロナウイルスによって社会は大きな影響を受けましたが、ペット業界も例外ではありません。外出自粛期間が長期化したことによるおうち時間の増加、自粛ストレスの影響などを受け、ペットのお迎え需要は増加しました。

 需要の高まりでペットの取引価格が急騰する一方、安易に飼い始めた結果、職や住環境の変化、飼い始めたら思っていたのと違う、手がかかりすぎて飼いきれない……などと購入してすぐに愛護団体等に保護を頼むケースや飼育放棄される犬猫が増えています。

 また、自治体などによる保護犬・保護猫の譲渡会などは、コロナ禍において開催されにくくなっていることもわかっています。社会の流れが滞る時、影響を受けるのは言葉を持たない動物たちですね。

 2013年9月に改正された動物愛護法では、ペットの飼い主の責務として、「終生飼養」(飼育している動物が、その寿命を迎えるまで適切に飼育すること)の努力義務が明記されました。しかし日本全国で毎年多くの犬や猫が、動物愛護センターに収容され殺処分となっています。以前に比べると殺処分数は減少しましたが、今もなお多くの命が収容され、殺処分されているのが現状です。

殺処分ゼロを目指すには

① 引き取られるペットの数を削減すること
「終生飼養」に反し、無責任に保健所や愛護団体に引き取らせる飼い主がいることが問題です。かわいいからといって、命ある生き物を衝動買いしてはいけません。家族として迎え入れる犬猫の一生に責任を持ち、終生飼育することは飼い主の義務であることの理解を広めることが大切です。

②引き取られたペットを殺処分せずに済ませること
 結果として、動物愛護センターに引き取られたペットが殺処分されずに済むように、行政や自治体、ボランティア団体等が一体となって積極的な返還・譲渡活動等を行っていく必要があります。また、譲渡後に同じような問題が繰り返されないように、保護されているペットに対してケア(不妊去勢措置やマイクロチップ挿入、しつけなど)を行い、ペットを送りだす努力も必要となってきます。

保護猫
かわいいからといって、命ある生き物を衝動買いしてはいけない

保護犬・保護犬を迎え入れる上で注意したいこと

 保護犬・保護猫がかわいそうだからといって、無責任に迎え入れることだけは絶対にやめてください。犬猫を飼うのには命の責任が伴います。家庭の家族構成や住環境、ライフスタイルなどをいま一度見直し、家族みんなで話し合いましょう。

 新しい飼い主に引き取られても、譲渡先でのむやみな繁殖により、子犬や子猫が生まれて増えてしまい、さらに飼育放棄されては不幸の連鎖は止まりません。

 そのため、不妊去勢手術をすることを譲渡の条件としたり、譲渡前に手術を施す自治体が増えてきています。また、保護犬・保護猫は心に傷を負っている場合もあり、人に慣れるまでの時間、人との信頼関係を築く時間に時間がかかる子も多いです。そのような状態を受け入れる覚悟も必要です。

 飼わないという決断も大切です。適切な世話ができないから、“今は飼わない”という選択をすることも、ペットの命を預かる責任を果たしていると言えるでしょう。

確認してみよう!

 一度は居場所がなくなり、殺処分となるところを引き出された犬や猫です。同じようなことはさせたくないためにご家族側にもある程度の基準を設けられているところが多いです。

  • ペットが飼える住宅環境か
  • 適正に飼養できるスペースが確保されているか
  • 一定の収入やペットを飼うための費用があるか
  • 動物を飼うことを家族全員が賛成しているか
  • 愛情と責任を持ち、終生飼養できるか
  • 不必要な繁殖を防ぐため、不妊または去勢手術を受けさせられるか
  • 迷子にならないよう、マイクロチップなとで所有者明示をして飼うことができるか
  • 猫は完全室内飼いができるか
  • きちんとしつけをし、他人に迷惑をかけないように飼えるか

保護犬
猫や小型犬であっても適正な飼養スペースが必要

まとめ

 動物を飼うことは、動物の命を預かることです。言葉を介さない動物にも命があり、それを守るのは飼い主です。

 一頭でも多くの命をつなぎ、犬や猫と暮らしたいと思った時に、“保護犬猫を迎える選択肢”が当たり前になるようしていきたいですね。

【前の回】アナフィラキシーショック、発熱… 犬猫でも起こりうるワクチン接種後の副反応

石村拓也
獣医師。東京農工大学農学部獣医学科卒業。横浜市内の動物病院などを経て、2017年3月にシリウス犬猫病院開院。川崎市獣医師会、日本獣医皮膚科学会、耳研究会、日本獣医輸血研究会所属。

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この連載について
獣医師さんから
病気やトラブルから犬や猫を守るため、飼い主さんにぜひ知っておいてほしい知識を、シリウス犬猫病院院長の石村拓也獣医師が教えてくれます。
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