シェルター1のモテ男「クマくん」 ただならぬオーラを放ち、老若男女を夢中にさせる

 4年前、海辺に現れた流れ者の雄猫クマ。シェルターで猫たちの仲間入りをした日から、その絶対的な風格で、一目置かれる存在に。雌猫たちは老いも若きも、雄猫までも、クマくんにラブラブなのだ。

(末尾に写真特集があります)

格別なオーラ

 南房総の海辺の町に、NPO法人「ドリームキャット」はある。斉藤重男さん・千鶴子さん夫妻が、自宅を開放して保護猫たちのシェルターとし、敷地内に診療所も持つ。

 シェルターを訪ねると、猫たちがゆったりとまどろんでいた。人懐こい子は、我先にと寄ってくる。ふと視線を感じて片隅を見やると、黒茶の長毛猫が、深緑の瞳でじっとこっちを見ていた。ひっそりと、だが、全身からただならぬオーラを発して。

斉藤重男さん・千鶴子さん夫妻とキジ猫クマ
敷地内の診療所「ゆう動物病院」内で

「クマは、いつもこうして、物静かに座って、仲間たちを見守っているんです。そして、どこかでバタン! と物音がしたりすると、飛んでいく。やってきたのは4年前なのに、たちまち、古くからいる猫たちの誰もが慕うボスになりました。女子も男子も、クマが大好きです」

 そう語る千鶴子さんは、クマが海辺に現れた日のことを鮮明に覚えている。

悠然と仲間入り

 4年前のある日。いつものように、面倒をみている海岸猫たちの餌場に車で行くと、見たことのない大きな猫が混じっていた。

「びっくりしました。ものすごい風格だった。ビビりもせず、威嚇もせず、悠然と猫たちの真ん中にいるんです。当時すでに10歳くらいでしょうか、流れ者の猫特有の匂いがありました」

 クマと名付け、そのまま、海辺で面倒をみることにした。クマは、海辺猫グループの新参にしてボス的存在となり、「ウ~~」と低く唸るだけで、捨てられた子猫をカラスから守った(その後、子猫は保護)。

 同じ餌場に前後して現れた三毛猫のサッちゃんとカナちゃんと共に、避妊去勢手術をし、シェルターで休ませて元に戻した、その翌朝。車でかなりの距離を移動したから、自宅の場所などわかるはずはないのに、塀の上に3匹がいるではないか!

「賢いクマが、2匹を連れて夜通し歩いて訪ねあてたんだと思います。ほだされて、3匹共シェルター猫としました」と、千鶴子さんは笑う。

シェルターの猫たち
クマは、どの猫に対しても公平に優しい。クマの隣に行きたがるロビン

庭猫もクマにお熱

 ドリームキャットでは、海辺に捨てられた子猫や若い猫たちをシェルターに一時保護し、譲渡につなげる活動を何年も続けている。シェルター猫として迎えるのは、年を取ったり、気弱だったり、病気を持っていたりして、海辺では暮らせない猫だ。クマたちのように健康な猫を迎えるのは例外だった。

 賢いクマは敷地内からは出ていかず、自由に庭にも出してやる唯一のシェルター猫である。たまに近場の雄猫が庭に侵入したりすると、「ウ~~」というクマの低いひと唸りで、追い払われる。

 室内や集団生活が苦手なため、庭に小屋のある猫もいる。おばあちゃん猫キミも、若いミミやモモも、クマにたちまち熱をあげた。クマが庭に出ると、そばを離れない。キミは去年旅立ったが、晩年をクマのそばで過ごせて、さぞ幸せだったことだろう。

庭の猫たち
2年前。庭でさび猫キミちゃんと三毛猫ミミちゃんの熟女たちと

クマの隣は特別席

 譲渡前の一時保護や、避妊去勢手術やけがの治療のための一時保護はしょっちゅうなので、シェルター内の猫の数は多いときで20匹を超す。

「クマは、誰が来ても、平等にやさしく守ろうとしますね。そして、雄雌問わず、誰もがクマを大好きになる」と、千鶴子さん。

 キジトラの雌猫チーたんは、外暮らしだったが、ある家の飼い猫と仲よくなった。その子の後をついて家に入ろうとして、飼い主に蹴られる場を通りかかった千鶴子さんは、チーたんをシェルターに迎えた。甘えん坊で独占欲の強い彼女は、クマくんの隣の席をいつも狙っている。叶うと、本当にしあわせそうだ。

 雄猫だって、クマ様愛は負けてはいない。茶白のロビンは、2~3年前に兄弟のロンと共に海辺の餌場に現れた若い雄猫だった。ロンは足が不自由だったので、いつも寄り添っていたロビン共々、シェルターに迎えた。

 片割れのロンを去年失ってから、ロビンの愛情はひたむきにクマに向かう。クマだって、ときにはひとりで休みたいであろうに、クマが猫ベッドでくつろいでいると、むりやり隣に割り込む。だが、なんせ、ロビンは、シェルター一の巨体なのだ。覆いかぶさる格好になるが、やさしいクマは、そのままでいる。

茶白猫ロビンくんとキジトラ猫クマ
シェルターで一番大きいロビンくんも、クマが大好き

神様の贈り物?

 重男さんも千鶴子さんも、クマは「ちょっとやそっとの猫ではない」と思っている。「悲しいことや心配なことがあったとき、クマは、私の顔を覗き込むようにして、あのまなざしでじっと見つめてくれるんです。何かありましたか、という風に」と、千鶴子さんは言う。

 クマは、重男さんや千鶴子さんにとっては、シェルター運営の力強い同志。雌猫にとっては、惚れ惚れするいい男。雄猫にとっては、頼もしい憧れ。子猫にとっては、やさしいお父さん猫なのだろうか。

 もしかしたら、クマは、それぞれにつらい思いをしてシェルターにたどり着いた猫たちへの、神様からの贈り物なのかもしれない。

※TNRとは、外猫を捕獲(Trap)し、不妊手術を施したうえで(Neuter)元の場所に戻し(Return)、1代限りの命を地域で見守る地域猫活動の一環。

(文・写真 佐竹茉莉子)

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