愛犬のその症状、別の原因かも 東洋医学の未病治療とアンチエイジングのツボを紹介

 アニマルライフパートナーの院長で獣医中医師・丸田香緒里さんに、動物と東洋医学についてお話を伺うこの企画。第2回のテーマは「東洋医学の診療法」についてです。今日覚えてすぐにできる、万能に効くツボ押しも教えてもらいました。

「体質だから仕方ない」とあきらめないで

「東洋医学では人間も動物も自然もすべて一緒。地球を構成する一部の存在と捉えます。その視点は身体を見るときも同じ。異常のある患部だけに注目するのではなく、体全体のバランスをしっかりと見ていきます」

 言うなれば、東洋医学はオーダーメード。症状はあくまで表に出てきているものなので、その根本となる元を探し、治療を施していきます。

「たとえば下痢という症状ひとつとっても、胃腸の疾患なのか、ストレスからくるものなのか、水分代謝がうまくいってないからなのか、原因はワンちゃんそれぞれ。その症状を引き起こす原因を見つけ出し、アプローチしていくのが東洋医学なのです」

 ある困った症状が出て、西洋医学の動物病院へ行っても、『体質だから仕方がないですね』と言われてしまうのはよくある話。そんなときこそ、東洋医学を取り入れるタイミングだと丸田先生は言います。

「たとえば春~夏になると、必ず皮膚が荒れてしまう柴犬のワンちゃんがいたとします。柴犬は繊細で神経質なので肝に熱を持ちやすく、その熱のせいでジクジクとした皮膚病になりやすいんですよ。それを体質だからと塗り薬や飲み薬を処方するのではなく、肝に熱を持ちすぎないようにして防いであげる。病気を予防する“未病”という考え方ですね」

ワンちゃんの目がキラキラ輝く!?

 何より驚くのが、治療したあとのワンちゃんの表情が激変することだそう。

「今まで眉間にシワが寄っていた“困り顔”のワンちゃんが、施術を受けるうちだんだんと“ハッピー顔”になるんですよ(笑)。特に目の輝きは一回治療するだけで確実に変わります。みんなキラキラお目々になっていきますよ。ワンちゃんを大切に思う飼い主さんほど、その変化に敏感に気がついて、驚いてらっしゃいますね」

 獣医中医師である丸田先生の診療は、まず丁寧な問診から始まります。今の状態、体調、環境、すべて細かくヒアリング。暑がりか寒がりか、温かい場所と冷たい場所とどちらで眠るのが好きか……など西洋医学を軸とする動物病院では聞かないようなことも、東洋医学にとっては大切な要素なのだそう。

「続いて体全体を眺め、目の色を見て、舌を観察し、後ろ足の内股で脈を計ります。脈の打ち方を見ながら体の状態や精神状態の観察をします。それぞれの臓器に付随するツボがあるので、そこを温めたり触ったりして滞りをなくし、気・血・水の巡りを整えていくのです」

「気」は体を構成する基本要素で生命活動を維持する。「血」は体のすみずみに栄養を運び潤す。「水」は血以外の水分で体の中を循環し潤す。

 けがで骨折している、大量に出血しているなどの治療は西洋医学が得意とするところ。一方で、老化による体調悪化や慢性化してしまった病気などは、かかりつけの動物病院と並行して、東洋医学も頼ってほしいと語ります。

「ワンちゃんは飼い主さんの影響を受けやすい生き物です。仕事が忙しいなら一緒にいる時間に何をすればいいのか、ごはんをどう調整すればいいのかなど、生活環境を整えることを含めて、一緒に治療していきたいと考えています」

初心者がトライしたい「腎のツボ押し」

 そこで今回教えてもらうのは、ワンちゃんに効く万能のツボ。その効果的なやり方も伝授してもらいます。

「どんなワンちゃんにもおすすめしたいのが、腎兪(じんゆ)という腎のツボ。場所は背骨沿いで、おなか側の肋骨(ろっこつ)がちょうどなくなったあたり。背骨を挟むように対称に2カ所あります(イラスト参照)」

赤い●が腎兪のツボ。背骨沿いで、おなか側の肋骨がちょうどなくなったあたり。

 東洋医学では、生まれたときに親からもらったエネルギーを腎にためており、それを少しずつ使い、さらに食事をしたり呼吸をすることで、エネルギーを取り込みながら生きていると考えるのだそう。「死」とは西洋医学では心臓が止まったときですが、東洋医学では腎の気が枯渇したときと捉えます。だからその腎兪のツボを押すことで、腎の気を補うことがものすごく重要なのです。

「押し方のコツは、3秒かけて押して、3秒キープ、3秒かけて離す。とにかくゆっくりゆっくり進めること。グイグイ押してしまうのはNG。もしワンちゃんが嫌がったら、手のひらで温めるだけで十分効果があります。シニア犬はもちろん、全世代のワンちゃんにぜひおすすめです」

 第3回は、「ワンちゃんの心の不調に気づいてますか?」をテーマにお届けします。

【第1回】春は犬もストレスがたまり不調になる!? おすすめごはんと簡単おうちケア
【第3回】愛犬の心の不調、気づいてますか? 東洋医学的メンタルケア法を教えます

監修:丸田香緒里(まるた・かおり)
Animal Life Partner院長、獣医師。日本大学卒。動物病院勤務後「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーにAnimal Life Partner設立。獣医中医師、ペット栄養管理士など様々な資格を生かし、病院での診療の他、シニアケアや飼い主の心のケアにより力を入れた往診診療を行う。

本庄真穂
編集プロダクションに勤務のち独立、フリーランスエディター・ライターとなる。女性誌、男性誌、機内誌ほかにて、ペット、ファッション、アート、トラベル、ライフスタイル、人物インタビューほか、ジャンルとテーマを超えて、企画・編集・ライティングに携わる。

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