愛犬の心の不調、気づいてますか? 東洋医学的メンタルケア法を教えます
コロナ禍が長引く中で、ストレスを抱えているのは人間ばかりではありません。飼い主の在宅勤務時間が増え、「家にいるときは遊んでくれるはずなのに、なぜかまってくれないの?」と不安を感じているワンちゃんも多いようです。
アニマルライフパートナーの院長で獣医中医師・丸田香緒里さんが東洋医学の視点から動物を見つめる本企画、第3回は「犬の心の健康」について伺います。
季節と臓器と感情はつながっている!?
「東洋医学の考え方に『整体観念』というものがあります。人と自然界の密接な関係を表すもので、生き物は絶えず自然環境の影響を受けながら生きている、というもの。第1回にて、季節と臓器が関係し合っていることをお伝えしましたが、そこに感情も加わることをご存じでしょうか」
春と関連する “肝”は「怒る」、夏に関連する “心”は「喜ぶ」、長夏に関連する“脾”は「思う」、秋に関連する “肺”は「悲しむ」、冬に関連する“腎”は「恐れる」。季節と臓器と感情はそれぞれに影響し合っているというのが、東洋医学の考え方です。
「思い悩むことが続くと食欲が失せたり、怖がりすぎて尿が漏れてしまったり……誰もが経験してきたこの人体の不思議は、東洋医学的見地からすると、すぐに説明がつくことだったのです」
これらはもちろん動物にも当てはまります。とはいえ、ワンちゃんの心模様は、どう見極めればいいのでしょうか。
屋内でもできる、ストレス解消法
「たとえば、後ろ足で背中を掻くという行為。皮膚に異常がないのであれば、ストレスを感じているサインかもしれません。感情が偏ることで気の流れが滞り、体が硬くなって、背中にある肝の ツボをほぐそうとしている可能性があります」
そんなときは、「お散歩に行くなど、たくさん遊んであげるのが一番のストレス解消法!」と丸田さん。ただ、どうしても時間が取れなかったり、特に今は外出がままならないことも。そんなときはどうすればいいのでしょう。
「頭を使う遊びにトライしてみてください。転がすとおやつが出てくる知育トイで遊んだり、家の中におやつを隠して探すゲームなどもいいですね。要は犬の本能である探究心を刺激して、欲求を満たしてあげるのです」
注意したいのは、必ず成功で終わらせてあげること。レベルを上げると失敗が続き、長時間に渡るとワンちゃんの集中力も落ちてきます。
「最後は簡単なミッションにして、『よくできたね。はい、ご褒美』で終わらせましょう。大切なのは、遊びたいという欲求を上手に満たしてあげることなのです」
ワンちゃんのほっぺたをびよーん
さらに心を砕きたいのが、年齢を重ねて病を抱えているシニア犬などのメンタルケア。健康面に不安を抱えているワンちゃんに対して、どんなアプローチができるのでしょうか。
「いちばん大切なのは、飼い主さん自身が笑顔でいることです。ワンちゃんは『今、この瞬間』を生きているので、目の前の私たちが笑っていれば満たされるし、悲しい顔をしていれば不安になってしまう。少量だとしてもごはんが食べられたこと、昔より距離が短くなったとしてもお散歩に出かけられたこと、それらをプラス思考で喜び、褒めてあげましょう」
また冒頭で触れたとおり、東洋医学では心と体はつながっていると考えるので、スキンシップも効果大。
「ワンちゃんのほっぺたを優しくつまんで持ち上げて、笑顔につくるなんてどうですか? それを見てこちらが笑えばワンちゃんも喜ぶし、顔のツボも刺激されて一石二鳥。同じく耳を触ってあげるのも、ツボを刺激する意味でも効果あり。メンタルをケアするために、ボディにアプローチする。そんな東洋医学的ワンちゃん健康法を実践してみてください」
意外に手軽、お灸をやってみよう!
さて、今回学ぶのはなんと「お灸」! ワンちゃんにもトライできるのだそう。
「おすすめは、手軽に使える『棒灸』です。これはもぐさを棒状にして、紙で巻いたもの。先端に火をつけたら専用のフォルダをはめましょう。熱源と肌の間に適度な距離ができるので、安全に使用することができます」
温めたいのは、第1回のマッサージ術で紹介したおなか周りや、第2回のツボ押しで紹介した腎のツボなど、主に下半身です。
「突然温めると驚いてしまうので、まずは片手で体をスーッと撫でて、そのあとに棒灸を沿わせてみる。これを繰り返してみましょう。熱さの確認ができますし、ワンちゃんも『撫でられながら、どこか温かい……』と自然に受け入れてくれるはずです」
ピンポイントにツボを温めたい場合でも、当てるのは2、3秒ほど。頻度は2日に1回ぐらいから始めてみて、気持ちよさそうにしているならば毎日でもOK。くれぐれも火傷しないように注意して、ワンちゃんの表情を見ながら進めてみましょう。
第4回は、「犬にも漢方があるの? あらためて食事を見直そう!」をテーマにお届けします。
【第1回】春は犬もストレスがたまり不調になる!? おすすめごはんと簡単おうちケア
【第2回】愛犬のその症状、別の原因かも 東洋医学の未病治療とアンチエイジングのツボを紹介
- 監修:丸田香緒里(まるた・かおり)
- Animal Life Partner院長、獣医師。日本大学卒。動物病院勤務後「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーにAnimal Life Partner設立。獣医中医師、ペット栄養管理士など様々な資格を生かし、病院での診療の他、シニアケアや飼い主の心のケアにより力を入れた往診診療を行う。
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