散歩を知らずに育った元繁殖犬 甘えん坊の末っ子として愛情いっぱいに暮らす
和歌山市で暮らすHISAYANさん一家は、県の愛護施設から繁殖引退犬のチャイを迎えた。愛情深く、フレンドリーなチャイは、生まれて初めての散歩やあたたかい家族を経験し、幸せに暮らしている。
繁殖引退犬を家族に
「もう一度犬と暮らしたい」。先代の愛犬が亡くなって1年半経った2020年の夏、そう思い立ったHISAYANさんは、県の動物愛護施設のホームページで1匹のポメラニアンに一目ぼれした。
ポメラニアンのプロフィルにあったのは、「繁殖引退犬」の文字。
「これまで人間のために苦労してきた子だから、一緒に残りの人生を楽しく過ごそう。そう思いました」
とHISAYANさん。娘のかほさんも大賛成し、一家はすぐに譲渡を申し込んだ。
コロナ禍でお見合いができなかったため、初対面はトライアルの日となった。
「意外と明るいんだ!」
繁殖引退犬に暗いイメージがあったHISAYANさんとかほさんは、やってきたその犬が一切ほえることもなく、ニコニコしているような穏やかな表情で驚いたという。
「生活環境は恵まれていなくても、人間への不信感はなく、はじめから穏やかな性格でしたね」とHISAYANさんは振り返る。
一家はポメラニアンの毛色からチャイと名付け、トライアルが終了する前に正式に家族に迎えることを決めた。チャイは一家にとって初めての小型犬で、初めての女の子。
「小さくて、抱っこできて、可愛い」
かほさんは、おとなしく腕に抱かれるけなげな様子にすぐに心をほだされた。
生まれてはじめての散歩
「チャイは、散歩を知らなかったようで、初めてハーネスをつけられたときは固まって動きませんでした。リードをつけてもなにをされているのかわからないらしく、前に進まないので抱っこしてやると、手足が犬かきのように空中で動き出し、エアウォークし始めたんです」
そこでHISAYANさんが地面に下ろしてやると、他の犬についてまわり匂いを嗅いだりおしっこをまねた。チャイの人生に散歩という楽しみが生まれた瞬間だった。
チャイは、人はもちろん犬にも穏やかな性格だ。それまでの愛犬たちは、けんかっ早い性格や怖がりな性格だったため、散歩中に他の犬とコミュニケーションが取れなかった。一転、チャイはどんな犬にもフレンドリーで、散歩中は体の大きな犬たちにも物おじせず近づいた。そのため、犬仲間が増えて、散歩が楽しくなったと娘のかほさんは話す。
一度だけ、散歩中にトラブルもあった。
「大みそかの日、娘がチャイを散歩に連れ出したときに、リードから抜けた大型犬に驚いて爪を折ってしまったんです。幸い大事には至らなかったのですが、チャイを抱えて帰ってきた娘の服が血で真っ赤に染まっていて、見た瞬間に血の気が引きましたよ」
大晦日なので開いている動物病院が見つからず、ドラッグストアで応急処置。知り合いのつてで開いている病院をなんとか探し出し、処置を受けた。
「本当に肝が冷えました。家族みんなでパニックになりましたね」HISAYANさんは振り返る。
甘えん坊な末っ子に
チャイはHISAYANさんのことが大好きな“お母さん子”。家の中では常にHISAYANさんを追いかけ、HISAYANさんが寝転がってスマホを見ていると、かまってほしくてスマホを踏みに来るという。
「母が仕事で出て行くと、ほえて母を呼んだり、玄関を見つめてじっと待っているんですよ」かほさんは明かす。
それまで犬に関しては無関心だったHISAYANさんの夫と長男も、フレンドリーなチャイには少し反応が違う。
「息子は初代のころから犬があまり得意ではなかったのですが、チャイのことは歴代の愛犬の中で一番可愛がっていますね。夫も、女の子とあって、“娘に甘い”感じ(笑)。夫が冷蔵庫を開けるとチャイは足元にお座りして、大好物のさつまいもとブロッコリーを催促するんです」
HISAYANさんがそう話すと、かほさんも同意する。
「父は、チャイにおねだりされるとすぐに甘やかす。人間の食べ物もすぐにあげてしまうので、『長生きさせたいなら我慢させて』と私がクギを刺すんです」
チャイは、かほさんの彼氏とも仲がいい。
「娘と娘の彼氏が2人で散歩している様子を後ろから見ていると、なんだかほっこりするんですよ。私たち一家にとって、チャイはみんなに愛される“末っ子”という感じですね」
繁殖犬として生まれたチャイだが、HISAYANさん一家に出会った今は愛情いっぱいの日々を過ごしている。
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