「動物の看護師」ってどんな仕事? 想像以上にプロフェッショナルでユニークだった!

「動物の看護師さん」より(大月書店提供/(c)北原明日香)

「動物看護師」という仕事をご存じだろうか。

 ペットを動物病院に連れて行った時に、受付で対応してくれるお姉さん、診察台で震えているペットに声をかけ、診察時に暴れないよう押さえてくれるお兄さん。実はその人たちは、私たちの想像を超えた知識と、動物とその飼い主へのただならぬ思いを持つ、動物看護のプロフェッショナルだった。

 「動物の看護師さん」(大月書店)は、動物看護師という道を選び、時に壁に突き当たって、もがきながら成長していく実在の6人の動物看護師の姿を描いたノンフィクション本だ。

 獣医師の活躍の陰に隠れがちなその仕事にスポットライトを当てた、著者の保田明恵さんに、お話をうかがった。

“プロフェッショナルでユニーク”な仕事

――「動物の看護師さん」を書かれた経緯を教えてください。

 動物看護の専門誌でライターをしています。動物看護師というお仕事について、はじめは「獣医師の手伝い」くらいの認識だったのですが、実際に仕事で関わっていくうちに、想像以上にプロフェッショナルでユニークな存在だと感じました。

 そこで、動物看護師という仕事をもっと世の中に広めたいと思い立ち、過去に仕事で関わった6人の動物看護師の方に手紙を書いて、本の執筆の許可をいただいたのが始まりです。

――動物看護師の“プロフェッショナルでユニーク”な点とは?

 動物看護師の重要な役割のひとつが、「動物の代弁者」であることなんです。動物たちは体の調子が悪くても、自分の言葉で説明したり、治療を受けたいという希望や意思がありませんよね。そこで、動物看護師は動物の様子や表情を観察し、異常があればいち早く気付いて獣医師に取り次がなければならない。注意力や気配り、とっさの判断ができなければつとまりません。

 

「動物の看護師さん」より(大月書店提供/(c)北原明日香)

 さらに、動物だけでなく飼い主との繊細なコミュニケーションも必要になります。動物の場合、治療の主導権を持っているのは患者である動物じゃなくて飼い主ですよね。飼い主が動物たちの治療方針を決断する裏には、それぞれの複雑な思いや事情があります。

 動物看護師は、飼い主とのコミュニケーションの中から、治療に対する本音や家族の事情を引き出し、その動物に関わる全員が納得できる形を考えるんです。動物看護の知識や技術だけでなく、人とのコミュニケーションを含めての仕事というところがとてもユニークですよね。

「動物の看護師さん」より(大月書店提供/(c)北原明日香)

――本書の中でも、愛猫の通院を拒否する老夫婦と、動物看護師の女性のエピソードがありますね。

 彼女も、老夫婦の旦那さんとの、ある会話がきっかけで、飼い主の心に寄り添うことの大切さに気がつきました。

 本書で取り上げた6人の動物看護師は、いずれも動物だけでなく、“人”の心にどう寄り添うか、悩んだり失敗したりしながら学び、成長していきます。動物看護師という仕事がいかに繊細なコミュニケーションを必要とするかを感じてもらえると思います。

労働環境に改善の余地

――動物看護師の方は、日々どのような業務を行っているのでしょうか。獣医師との違いは?

 まず、獣医師は国家資格です。日本では獣医師法により、動物の診察と治療は獣医師のみが行えます。

 一方、動物看護師の業務範囲は広く、獣医師が行う診療行為以外の全てが仕事といってもいいでしょう。中でもメインとなるのが、「診療補助」、「入院動物の看護」、「飼い主のサポート」の3つの業務。この3つ以外にも、薬の在庫管理、院内の掃除、ディスプレーと、細かい業務を挙げればキリがありません。

「動物の看護師さん」より(大月書店提供/(c)北原明日香)

――それだけのハードな業務をこなすのに、待遇面では課題があると書かれていますね。

 その通りです。やりがいがある一方、動物看護師の労働環境は、改善の余地が大きい……。

 まず、動物看護師として活躍するためには、膨大な知識やスキルが必要です。多くの動物病院は、人間のように器官ごとの診察をしない。目も歯も皮膚も、すべての受診に対処できる知識とスキルが必要です。さらに言うと、動物病院には犬や猫以外の動物も来ますよね。動物看護師が覚えることは山のようにあるんです。

 それだけ専門が幅広く、実務では動きっぱなし立ちっぱなし。動物の扱いに慣れていても、時には引っかかれたりかみつかれたりして、けがをするリスクもある。さらに、手厚く看護した動物が亡くなってしまうという精神的なショックも重なってきます。

 しかし、病院によって異なりますが、少なからぬ動物病院では、そんな動物看護師の働きに見合ったお給料が出ない現状もあります。

――そんな中、動物看護師を国家資格化する動きが出ているそうですね。

 現在の動物看護師にあたる役割を国家資格化した「愛玩動物看護師」という資格が誕生しました。遅くても2023年には、最初の試験が行われます。

 海外には、アメリカやイギリス、オーストラリアのように、動物看護先進国といわれ、よき手本となる国々も存在します。

「動物の看護師さん」より(大月書店提供/(c)北原明日香)

 日本でもこの国家資格化によって、これまで獣医師の活躍の陰に隠れていた動物看護師という仕事にスポットライトが当たり、環境が変わる第一歩になることを願っています。

すべての動物看護師にエールを

――「動物の看護師さん」をどんな方に読んでほしいですか?

 本書はノンフィクションですが、動物看護師の成長物語として楽しんでいただける側面も強いので、動物が好きな全ての方に楽しんでいただきたいです。中でも、動物関係の仕事に憧れている10代の方に手に取っていただき、動物看護師という仕事を将来の選択肢にしていただければうれしいですね。

 それから、現役の動物看護師の方で、仕事を続けるか悩んでいる方にはぜひ読んでいただきたいと思っています。動物看護師は女性の方が多く、結婚や出産というライフイベントが仕事を続けるかどうかの大きな岐路になる。本書でも、そんな葛藤を抱える女性の動物看護師が登場します。彼女がどのような道を選択したのか。まさに今、同じ悩みを抱えている方に参考にして欲しいです。

 もちろん女性だけでなく、この本を手に取ってくれたすべての動物看護師の方が、「動物看護は経験を積むことで深めていける、人生をかけて取り組むに値することなんだ」と感じてもらえたら光栄です。

「動物の看護師さん」より(大月書店提供/(c)北原明日香)

――最後に、sippoの読者へメッセージをお願いします。

 私自身は現在ペットを飼っていないのですが、もしいつか飼うとしたら、動物病院にかかったときに動物看護師さんにきちんとお礼を言いたいと思っています。 

 看護は“していること”が隠れがち。動物は、入院して元気になって帰ってきても、どう看護されたかなんて報告してはくれないですよね。だけど実際は、獣医師の診療の裏で、心を砕いて親身に動物のお世話をしている動物看護師の姿があります。

 愛するペットの治療が終わったら、ぜひ獣医師さんだけでなく、動物看護師さんに感謝の気持ちを伝えてください。忙しい環境の中でも愛情を持って動物たちに接している動物看護師たちにとって、飼い主からの感謝はなにより励みになるはずです。

「動物の看護師さん」
著者:保田 明恵
発行:大月書店
定価:本体1,600円+税
四六判・224ページ
(書影をクリックすると、アマゾンにとびます)

原田さつき
広告制作会社でコピーライターとして勤務したのち、フリーランスライターに。SEO記事や取材記事、コピーライティング案件など幅広く活動。動物好きの家庭で育ち、これまで2匹の犬、5匹の猫と暮らした。1児と保護猫の母。猫のための家を建てるのが夢。

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