悲しい、寂しい、つらい・・・ガンになった先代犬が旅立ち 新たに運命の犬に出会えた
「次郎ちゃんの中には、モコが宿っているんじゃないかな。勝手ながら、僕はそう信じているんです」
そう笑顔で語るのは、ポメラニアンとチワワのMIX犬のモコちゃんを看取り、現在は保護施設から引き取った次郎ちゃんを育てている高橋さん。先代犬と今の子と。深く温かな絆について話を伺った。
(末尾に写真特集があります)
「先代犬のモコは、ありがたいことにずっと健康体でした。それが12歳のときに前立腺肥大となり、初めての手術を受けることに。そのときですね、ほっぺたの内側にしこりようなものを見つけたのは」
担当の獣医師からかけられた言葉はこうだった。「気になるのであれば、検査をしますか?」
「私たちに判断を委ねられた形でした。ネットで調べた次の病院でも同様の答え。また別の病院を探して検査をしてもらうと……驚きの結果が出たのです」
主治医と考えた、理想の旅立ちの形
それが唾液腺ガン。さらに余命半年という宣告がなされた。
「がくぜんとしました。それでも部分的な切除で終わるのかと思ったら、ほっぺたから口まですべての骨を取るとのこと。口が閉まらない状態で、唾液(だえき)が流れたままになったり、食べ物がこぼれてしまう可能性も。外科的処置以外となると放射線治療で、もちろん副作用が考えられます」
悩みに悩んだ高橋さんは、知人より東洋医学の獣医を紹介してもらい、漢方薬を取り入れた。これが功を奏し、余命が半年から1年まで伸びることに。
「ツテをたどるように別の動物病院を紹介してもらったところ、その先生の説明が素晴らしかったんですよね。今できる選択肢をすべて挙げたのち、それぞれのメリット、デメリットをていねいに解説してくれました。この人なら信頼できると感じ、手術をお願いすることにしたのです」
手術後は少し食欲も回復。容体は下降線をたどりつつも、ゆっくりなだらかなものになっていった。
「どうやったら穏やかな死を迎えられるのか。先生としっかり話し合い、最後は僕が抱っこしたまま、理想の形で旅立っていきました。それでも命を引き取ったその瞬間、僕は大号泣。変な話、親が死んだときも泣かなかった自分が、です。悲しい、寂しい、つらい。でもどこかやり尽くしたという思いもあって、晴れやかな気持ちで送り出すことができました」
大勢の保護犬のなかで、その子を選ぶ奇跡
モコちゃんが旅立って少し経ち、高橋さんは運命的な出会いを果たすことになる。
「それが、のちの次郎ちゃんです。家族とは『次は保護犬を飼いたいね』なんて話してはいたけど、モコが亡くなって2週間ぐらいは、意識的に犬という存在から目をそらしていました」
それが3週間ほど経ち、知らず知らずのうちに保護犬のサイトをのぞくように。
「どの子も愛らしいなと目を細めつつ、『あ、この子の臆病な表情、モコにそっくり』なんて眺めていたある日、娘が『この子可愛くない?』と見せてきたのが……まさに私が見ていたその子だったんです」
ただ香川県の施設に預けられていて、「四国もしくは近畿在住の方に譲る」と書いてある。関東圏に住む高橋さんは、もちろんその条件と合わない。
「娘にダメ元で電話してみようと言われ、事情を伝えると、すでに6人が待っている状態でした。すっかりあきらめていたら、1週間後に連絡が来たんです」
そこで聞かれたのは、「たくさんの保護犬がいるのに、なぜこの子を?」と言うことだった。そこで、先代犬と臆病な表情がそっくりなことや、今までのこと、現在の状況などをじっくり話した。
「20分ほど語り合ったあとでしょうか。保護施設の方が『わかりました。お宅に決めます』と。驚くと同時に飛び上がるほどうれしくて、すぐに娘に連絡。家族会議を開き、翌週末に迎えに行くことにしました」
次郎ちゃんとの初対面が叶った日。それは期せずして、モコちゃんの四十九日だったのだ。
野犬の個性を知って育てていきたい
「ビビリ屋だったモコの次の男の子なので、次郎と名付けました。臆病な表情、挙動不審な振る舞いはモコとそっくり。ただ、決定的に違う点がありました。それが育った環境です」
野犬だった次郎ちゃんは、蛇口から水が出る音、フライパンなどの金属音、ドアの開け閉めまで、生活音を異常に怖がる。
「人も怖がるので、最初の2日間は家から出さずにスキンシップに徹し、3日目でようやく庭に出て、1週間目にして公園に抱っこしていき、トコトコと歩くようになったのは1カ月が経ったころだったと思います」
ちなみに高橋さん宅には、もう1匹動物がいる。それがウサギの小次郎ちゃんで、次郎ちゃんは小次郎ちゃんのことが大好きなのだそう。
「群れの仲間だと認識しているのだと思います。ふたりが家で駆け回る姿は、もう『トムとジェリー』の世界ですよ(笑)」
もともと野犬だった次郎ちゃんに対して、高橋さんはゆっくり社会を知っていってもらいたいと考えている。
「次郎ちゃんは、モコが連れてきてくれた私たち家族の宝物。このご縁を大切に、時間をかけて育てていくつもりです」
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。