“ネコ生”も“十匹十猫” 動物愛護週間に観たいネコ映画3選

「人生いろいろ」と言いますが、イヌやネコの“イヌ生”や“ネコ生”も、多種多様です。例えば、ペットとして愛くしまれて生を全うする場合もあれば、地域猫として自由気ままに生きるパターンもありますし、時には人間の身勝手な扱いにより、痛ましい最後を強いられるケースもあります。

 ちょうど9月20日(日)から26日(土)まで、動物愛護週間ということで、sippoでは毎年恒例のチャリティーイベント「みんなイヌ、みんなネコ」を、オンラインで開催中です。そこで今回は、改めて“猫生”について考えさせられる3本の映画をご紹介します。

堅物のガンコオヤジの心を解きほぐす子猫

映画版ネコナデ

 まず1本目は、仕事ひと筋の堅物オヤジが、とびきり愛らしい子ネコにほだされていくという『映画ネコナデ』。本作は、小木茂光主演の連ドラで好評を博した「ネコナデ」の劇場版ですが、こちらの主演は亡き名優、大杉漣が務めています。

 大杉さん演じる鬼塚太郎が醸す、がむしゃらな企業戦士の哀愁が、たまりません。彼は、倒産寸前の会社を立て直そうと、冷徹なコストカッターとして、リストラを実行していく鬼の人事部長でした。

 太郎は「まじめか!」とツッコミを入れたくなるほど、会社のために身を粉にして尽くす清廉潔のサラリーマンで、家でも決して羽目を外さない生真面目な頑固者。でも、内心は、リストラをすることで、心を痛めていました。そんななか、夜の公園に捨てられていた1匹の子ネコに出会います。

 会社の研修用のマンションで、こっそりと子ネコを飼い始めた太郎ですが、なんとも愛くるしい子猫が、彼の頑なな心を解きほぐしていきます。とにかく子ネコの無防備な表情が胸キュンで、ネコ好きならずともメロメロになりそうです。

 監督は、朝ドラ「あさが来た」や、2021年放送開始の吉沢亮主演による大河ドラマ「青天を衝け」を手掛ける脚本家としても知られる大森美香。ネコとの出会いで、自分の人生が彩られていく物語は、観ていてほっこり。折しもコロナ禍なので、太郎のように格闘しているサラリーマンが多いかと思うと、公開当時とは違う感慨も覚えます。

地域猫ならではのぬくもりと背中合わせの悲劇

先生と迷い猫

 2本目にお届けする『先生と迷い猫』は、『映画ネコナデ』と同様に、偏屈なおじさんとネコとの交流を描く物語ですが、こちらは、ただのヒューマンドラマという枠に収まる作品ではないんです。

 地域猫の三毛猫ミーちゃんと人々の交流を描くノンフィクション「迷子のミーちゃん〜地域猫と商店街再生のものがたり」を原案にした本作。イッセー尾形演じる主人公の森衣恭一は元校長先生ですが、近所でも浮いている変わり者で、妻を亡くしてから一人暮らしをしています。

 恭一の家に毎日やってくるのが、亡き妻が可愛がっていた地域猫のミーちゃん。最初は、妻のことを思い出すからと、邪険に追い出していた恭一ですが、やがてミーちゃんに癒やされ、姿が見えなくなると、必死に行方を探そうとしていきます。

 いつしか、先生のミーちゃん探しは、町の人々をも巻き込み、気がつけば、交流の輪がどんどん広がっていきます。ところが本作では、琴線を揺らす感動の物語と裏打ちするように、ある男の子の孤独さや心の闇が挿入され、観終わったあと、なんとも心がざわめきます。

 監督は「神様のカルテ」シリーズの深川栄洋監督です。ネコがつなげてくれた人と人とのかかわりを、優しい目線で描いていますが、それとは別に、哀しい現実をも突きつけてきます。ネタバレは避けますが、そこは、私たち人間が目を背けてはいけない出来事です。動物愛護週間ということで、ぜひ観てほしい1作です。

ネコと共存する町の豊かさを考えてみる

猫が教えてくれたこと(字幕版)

 最後にレコメンドするのは、トルコの古都・イスタンブールで暮らす個性豊かなネコたちの“ネコ生”を描く1本です。タイトルに思わずうなずいてしまう、『猫が教えてくれたこと』というドキュメンタリー映画をご紹介。

 市場の食べ物を狙う虎猫の「サリ」、なでられるのが大好きなメス猫の「ベンギュ」、ネズミ退治を仕事にしている「アスラン」、けんかが強いが嫉妬深い「サイコパス」、下町の市場に住む看板猫の「デニス」といった具合に、7匹の猫とイスタンブールの人々がふれあう日常が、生き生きと描かれています。

 イスタンブールは、古くから“ネコの町”とされ、人間とネコが非常にバランスよく共存しているようです。日本で言うところの青島みたいな感じなんでしょう。野良ネコたちは、町の風景にすんなりと溶け込んでいて、非常にいい表情を見せています。

 もふもふなネコたちのオンパレードに思わずにんまり。ネコに元気をもらい、その分を人間側からもお返しをする。とても素敵なふれあいのキャッチボールができていて、これぞ理想的なネコライフなのかなと思ったりもします。

 やはりネコも人間も、幸せの価値観はそれぞれだなとつくづく実感。特にネコはイヌとは違って、放置プレイを好むタイプもいますし。

 3本通して思ったのは、ネコも人間も、お互いを尊重し合うことがなによりも大切さなんじゃないかということでした。動物愛護週間ということで、あらためて身近にいる動物たちを、優しい目線で見てほしいです。

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山崎伸子
ライター、ときどき編集者、カメラマン。映画やドラマのインタビューやコラムをメインに執筆。趣味は旅行、酒場&酒蔵巡り、パンダグッズ集め。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』。実家に帰るとやんちゃなわんこが二足歩行でお出迎え。

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この連載について
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