直木賞受賞「少年と犬」 犬を愛する人の共感を呼ぶストーリー
7月15日に直木賞を受賞した、馳星周さんの「少年と犬」(文芸春秋)。犬と暮らすsippoライターの私が、最近読んで最も感動した本です。ぜひみなさんにも読んでみていただきたいので、どんなところが良かったのか、おすすめポイントをお伝えしたいと思います。
駐車場で出会った野良犬
物語は、大震災から半年後、仙台のコンビニの駐車場で、とある男性が「多聞」と書かれた首輪をつけた野良犬と偶然に出会うところから始まります。
「多聞」はシェパードと和犬の雑種。人間の言葉と感情をとても良く理解し、偶然出会ったその男性が、その野良犬を見捨てられずに飼うことになります。でもどこへ行っても、なぜか不思議なことに、「多聞」は常に南の方向へ行きたがるのです。そして、ある出来事をきっかけに、その男性とは離れ離れに。
その後、犬を愛する優しい人々に助けられながら、「多聞」は、場所と、飼い主と、名前を変えながらたくましく生きていきます。
そして、どこに行っても常に「ある場所」に行きたがる「多聞」が、最後にたどり着いた場所とは…。
言葉にできない何かに納得
筆者はシニア犬と暮らしていますが、話せない、口が聞けない犬の気持ちや体調を、目や、尾の振り方、全身の動かし方などから察することができます。
「少年と犬」では、「多聞」と出会う人々が、「多聞」の目や身体の動かし方から感情を理解し、深い関係を築いていく様子が細かく描写されています。その描写を通して「多聞」と人々の関係性を読み解くことができました。そして、犬と人間の強い絆を感じられる作品だと思います。
「多聞」から癒しを与えられた人々の心の変化と、「多聞」の強く賢くたくましい生きざまを描いたこの物語は、不可解ながらも、犬を飼ったことがある方なら「そうだよね」と、言葉にはできない何かに、なぜか納得し、共感できる物語です。
犬を愛する方は、涙無しでは読めない感動のストーリー。是非読んでいただきたい一冊です。
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