数値規制の環境省案 従来より大きく前進、ただ気になる「穴」も

ペットショップで販売される白色の子猫
ペットショップで販売される子猫

 環境省が検討を進めている犬猫の繁殖業者やペットショップに対する数値規制を巡り、小泉進次郎環境相はこの春以降、何度も陳情を受けた。その度に、「動物愛護の精神にのっとった基準とする」という趣旨の発言を繰り返してきた。

犬や猫「交配できるのは6歳まで」

 その「答え」が10日、「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」で、環境省案として示された。環境省は、超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」が4月に小泉環境相に提出した案などを尊重したという。

 主なポイントをあげると、

  • 従業員1人あたりの上限飼育数は、繁殖業者では繁殖用の犬15匹、猫25匹。ペットショップでは犬20匹、猫30匹。
  • 犬の飼育施設の広さは、たとえば体長30センチの小型犬2匹を入れる場合の平飼い用ケージは、1. 62平方メートル以上。寝床に入れっぱなしで飼育する場合は、床面積を体長の2倍×1.5倍以上、高さは体高の2倍以上とし、運動スペースに1日3時間以上出すことを義務化。
  • 猫の飼育施設は、広さに関する計算式を規定したのに加え、平飼い用ケージでは猫が乗れる棚を2段以上設置した構造にする。
  • 繁殖については、犬猫ともに交配できるのは6歳まで。

 ほかにも、ケージの床材として金網を使用することを禁止。また、毛玉に覆われたり、爪が伸びたままだったりする状態にすることも禁じるなど、定性的な規制も盛り込まれた。

 これらの規制について違反を繰り返す場合には、自治体は、第1種動物取扱業の登録を取り消すことができる。

悪質業者による「酷使」の懸念も

 総合的に見れば、小泉環境相が発言してきた通り、ビジネスに使われる犬猫たちの心身の健康を守れる規制となるよう、踏み込んだ案になっている。これまで数値規制がないために悪質業者が野放し状態になっていたことを思えば、大きな前進と言えるだろう。

 ただ、多くの悪質業者を取材してきた経験から言えば、今回示された環境省案には、「穴」が見受けられる。

 たとえば、繁殖に関する規制について。環境省が参考にしたという超党派議連の案では、犬猫ともに「交配は1歳以上6歳まで」「出産は生涯6回まで」としていた。なるべく早く家庭動物としての「余生」を送らせてあげるのと同時に、出産回数を制限することで、母体と生まれてくる子の健康を守ることを目指したものだ。ところが環境省案では、下限年齢と出産回数に制限がない。

 この場合、10歳を超えても犬猫を繁殖に使っているような悪質業者が何を考えるか――。生後10カ月前後にくる最初の発情期から6歳まで、1度でも多く交配、出産させようとするだろう。個体差はあるが犬は1年に2回から2年に3回、猫は1年に3回の出産が可能なため、業者によっては犬で10回程度以上、猫で1819回程度出産させる「酷使」が行われることになる。

規制案のブラッシュアップを

 また、犬の飼育施設の広さなども気になる。議連案では、平飼い用ケージについて小型犬1匹あたり2平方メートル以上とした。

 対して環境省案は、体長30センチの小型犬では、平飼い用ケージの広さを1. 62平方メートルとしたうえで、その中で「2匹まで飼育可」とした。環境省にそう言われたら、悪質業者は必ず、一つのケージの中に2匹入れるだろう。なるべく狭いスペースで、なるべく多くの犬を飼育しようというのが、そうした業者の基本的な考え方なのだ。

 そして、1.62平方メートルといえば、ちょうど畳1枚分の広さにあたる。そんなスペースに常に2匹が同居していたら、相性によっては闘争が起きかねない。どちらかが子どもを産んだ場合には、お互いに相当なストレスがかかり、生まれたばかりの子犬に危害を加える恐れも出てくる。

 環境省は今後、もう一度検討会を開いて規制案について議論したうえで、秋までには中央環境審議会動物愛護部会に成案を報告する予定という。犬猫たちにとってよりよい環境を実現できるよう、規制案のさらなるブラッシュアップを期待したい。

 数値規制が盛り込まれた環境省令は、来年6月に施行される。

【関連記事】犬や猫の繁殖・販売業者への数値規制 なぜ必要?今後の焦点は?

太田匡彦
1976年生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当。AERA編集部記者、文化くらし報道部を経て、特別報道部・専門記者。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日新聞出版)などがある。

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