家族になって6年 保護された秋田犬と飼い主に訪れた変化

 思わず抱きしめたくなるような、ふさふさの長毛の七海(ななみ/6歳)は、生後3カ月の頃に河原に捨てられていた元保護犬。体重は21キロと秋田犬にしては小柄な女の子だ。6年前、がんを克服した飼い主のKiyomiさんのうちにやってきた。

(末尾に写真特集があります)

犬と暮らすのが夢だった

「元気になったら犬を飼おう」

 はじめて自分の病名がわかり大泣きした日、Kiyomiさんを励ますために夫がかけた言葉は、いま振り返ると、新しい人生のはじまりだった。

 七海と出会うきっかけになったのは、退院後に知った動物愛護団体。譲渡先を探していた当時4カ月の七海は、今と変わらぬつぶらな瞳にまるでぬいぐるみのような容姿で、小学4年生だったKiyomiさんの息子さんを魅了した。

「息子が『何この子~!!』って大興奮。大型犬と暮らすのは私の夢でしたが、秋田犬は40キロ位になるというし、初心者なのに大丈夫かなと夫とちゅうちょしましたが、息子は聞く耳を持たず。でもあの時、息子が言い続けてくれてよかったです」とKiyomiさん。
 

なかよしコンビ、犬友だちのライトと
なかよしコンビ、犬友だちのライトと

家族になって6年 飼い主にも愛犬にも変化が

 団体の代表の後押しに加え、ドッグトレーナーを紹介してくれたこともあり、晴れて七海は家族の一員に。ほどなくして七海は、家族を癒やし、幸せな気持ちにさせてくれる存在になったのだが、この6年、飼い主として心配になることがなかったわけではない。

 七海はもともと膵臓(すいぞう)が悪かった。消化酵素を採り入れることが必要不可で、さらに肝臓や甲状腺の機能も弱く、おなかをこわしたり、せきも出やすかったため、Kiyomiさんは長らく、七海の体質改善に試行錯誤を重ねていた。

 全然よくならない……と思っていたところ、好転の兆しが見えてくる。動物病院の転院をきっかけに手作り食に切り替え、獣医のアドバイスで、七海の体質に合うごはんがわかるようになったのだ。

「七海は下痢つづきで、口の周りは赤くかゆみが出るように。そうしたら、中医学に詳しい先生が『鶏肉は体を温めるから、冷やす食材がいい』と。人間的には体を冷やすのはよくないと思いがちですが、秋田犬は北国の犬。目から鱗(うろこ)でした。脂のない馬肉と魚をメインにしたら、かゆみはなくなり、体調も改善していきました」

北国の女なんです
北国の女なんです

 七海の健康管理でもうひとつ決め手になったのは、ストレスケアだった。

「気を使い、空気を読む子なので、ストレスを感じてもほえたり、物をかじることがない代わりに、体に症状が出ることがわかったんです。私がいけなかったのかなと反省しました」

 Kiyomiさんが心をあらためたのは、多くの人に触られないようにすること。お散歩へ行けばいろんな人が「触りたい」と寄ってきてくれるのはうれしいのだが、七海は穏やかな性格なので、我慢していたこともあったかもしれないと気づいた。

 というのも、同じ犬種でも性格はみんなそれぞれ異なるが、特徴のひとつに、飼い主以外にあまり懐かない「ワンオーナードッグ」という性質があるからだ。

 シャンプーやカットも、自宅でKiyomiさんがするようにしたところ、さらに七海のストレスが減ったようで、おなかやせきの症状がだいぶ落ち着いた。

ベンチに行きたいー!
ベンチに行きたいー!

わがまま女子の七海を尊重したい

 やさしい性格の七海だが、ちょっとわがままな女子的な一面もある。お散歩休憩で、ベンチに立ち寄りおやつをもらったことを覚えていて、最近はおやつをもらうために「ベンチへ行く」と言ってきかないそうだ。

 でもその主張も「尊重したい」とKiyomiさんは言う。

「社会生活のなかで、しつけをきちんとするのは大事ですが、嫌がることをしないことも大切。犬としての欲求を押さえつけないで、犬らしく、七海らしく、バランスよくありたい」

七海「お兄ちゃん、ラグビーがんばってね」
七海「お兄ちゃん、ラグビーがんばってね」

かけがえのない日々を家族みんなで

「私が病気になったとき、まずは死ぬわけにいかない。次に、逆らわずにシンプルでいようと思ったんです。七海の体調を観察していても、必要だから起きるんだなって思いました。食べ過ぎたらおなかをこわすのは自然、ストレスで体調を崩すのも自然。この6年、七海から教わったことはたくさん。この先も、彼女が安心して暮らせるように寄り添っていきたいです」

「落ち着く」いつも寝ている定位置
「落ち着く」いつも寝ている定位置

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言中、家族がずっとうちにいたため、七海はしばらくうれしそうにしていたそうだ。

 七海が来てからの6年、家族みんなでさまざまなところへ車で出かけ、思い出をたくさんつくってきた。冬は七海も一緒にスキーへ行くのが恒例行事。また家族旅行へ行ける日が待ち遠しい。

小見山友子
2020年4月~sippo編集部に所属。 ファッション業界に従事後、オウンドメディアの編集長をする傍ら、2014年にWEBマガジン「INUTONEKOTO」を主宰。2015年にフリーライター・編集者として独立。ペット、ファッション、旅、サーフィン関連の執筆、編集をしている。instagram @tomokokomiyama

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