愛猫と過ごす「自粛」の時 かけがえのないものと教えてくれた本
「自粛」が始まった頃、一冊の本が送られてきた。それは、最近出版された横尾忠則さんの画集『タマ、帰っておいで』だった。横尾さんのうちにふらりとやってきた野良猫タマは15年をそこで過ごし、2014年5月31日に逝った。
「タマの墓に白い砂利を敷き詰め花の植木鉢を並べて、小さい『タマ霊園』をこしらえる」
画集に掲載されている、横尾さんの14年6月3日の日記だ。
この画集は、タマと共に暮らした日々、亡くなった日、四十九日、三回忌、そして最近になっても書き継がれるタマへの思いが詰まった言葉と、描き続けられたタマの絵で構成されている。
亡くなった直後、14年6月1日の日記には「『タマ』の名で始まる朝はもう来ない」「半日公園でタマのことを思う」。
14年8月2日には「アート作品にするのではなく、猫への愛♥を描いた」「それこそアートじゃない」。そんなことを、久しぶりに会ったオノ・ヨーコさんと話している。
14年10月22日には夢でタマと再会し「こっちも『おいで』と言ったらいつもの駆け足でやってきた」。
そして、一年を経て、15年5月30日、「死した者の歌は生者のための鎮魂歌だ」「これから絵は一点一点を遺作だと思って描かなければならない」。そんな言葉に至る。
ページをめくる度に、タマへの愛がこぼれ落ちて、それを手で抱えながら読み、その絵を見つめた。
横尾さん、ありがとうございます。うちのチャッピーも15歳になります。時々寝ていると不安になって、ちゃんと呼吸しているか確かめたりする自分がいます。一緒に家にいることが増えた今、「自粛」の時間をとても大切なかけがえのないものと思うことができました。
そして、「次元を超えた死者は厳然と実在する」という言葉を読み、一昨年亡くなった父や、もう会えない何人かの友人や、恩人たちへも思いを馳せることができました。その死を思うことは、自分の死を思うことのようでした。
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