猫との別れを描いた絵本 愛猫家の作者が実体験きっかけに創作

絵本に登場する猫のモデル「みけちゃん」を抱っこする村上しいこさん
絵本に登場する猫のモデル「みけちゃん」を抱っこする村上しいこさん

 猫を題材にした絵本を多く手がけ、自身も愛猫家である児童文学作家の村上しいこさん(50)の最新作は、「ねこなんていなきゃよかった」(童心社)。猫との死別とその受容がテーマです。背景には老いゆく飼い猫との暮らしがありました。

猫は耳やしっぽで「おしゃべり」

――猫が主人公の作品が多くありますが、どんなところが魅力ですか。

 猫には表情があって、よく人の話を聞いています。耳やしっぽの動き、目の大きさ、ひげの向き……。それぞれで「おしゃべりする」ので見ていておもしろいし飽きません。自由きままだけど、ちゃんと自分の考えを持っていて、「なにか考えているんだろうな」と思わせ、創作しやすいのかもしれません。

――ご自身でも猫を飼われています。

 20年前になります。今回の作品に登場する三毛猫の「みけちゃん」が、玄関を開けたら入ってきたんです。そのうち出て行くかなと思ったらずっといて、とりあえず家に置いて様子を見ることに。けがをしていたので病院に連れて行くと、1歳くらいだとわかりました。獣医師に引き取り手を探すのは厳しいだろうと言われたので、飼うことにしたんです。今では、みけちゃんの弟分の猫2匹とあわせて3匹と一緒に暮らしています。

昨年末に刊行された絵本「ねこなんていなきゃよかった」(童心社)。絵は、みけちゃんの写真などを参考にささめやゆきさんが描いた
昨年末に刊行された絵本「ねこなんていなきゃよかった」(童心社)。絵は、みけちゃんの写真などを参考にささめやゆきさんが描いた

愛猫が発作、限りある命を意識

――最新作のきっかけは、実体験だそうですね。

 みけちゃんが3、4年前に発作を起こしたんです。全身がけいれんして、よだれを垂らして。死んでしまうかもしれないと思いました。幸い1分ほどで治まって、病院に連れていくと、もう高齢なので、好きなことをさせて、好きなものを食べさせて、ゆっくりさせてあげてと言われました。そのとき初めて、限りある命と向き合っていかないといけないと思ったんです。

 ちょうど同じ頃、友人たちが飼っていた犬や猫が死んでしまうことも続きました。落ち込んでいる友だちにどう声をかけていいかわからず、そういうときに贈ることができる本があればいいなと思って書き始めました。

「気持ちをはき出せる誰かがいたら救われる」

――子どもにとってもペットの死は大きな出来事です。

 昨日まで一緒にいた小さな命がなくなるという悲しみや孤独を、子どものうちに経験することは決してマイナスではないと思います。この作品でも、女の子は最初「ねこなんていなきゃよかった」と、悲しみを自分の中に閉じ込めていますが、家族と共有することで向き合って乗り越える。ペットに限らず、悲しみを隠すのではなく、誰かに打ち明けたり、共有したりすることは大事だと思います。

 実は私は子どものころ、いじめや虐待にあった経験があり、その頃に猫がいればよかったと感じることがあります。年をとってきたみけちゃんは、ただ寝ていることも多くなりましたが、私は今も「母ちゃんが悪いと思う?」などとよく話しかけています。

 人は、自分の気持ちをはき出せる「誰か」がいたら、それだけで救われる。みけちゃんが、残された日々をかけて教えてくれているように思います。

猫が登場する絵本や児童書、新作つぎつぎ

 猫が登場する絵本や児童書は長年読み継がれる名作と共に、毎年、多くの新作も生み出されている。昨年12月に発表された「MOE絵本屋さん大賞2019」。全国の書店の児童書売り場担当約3千人のアンケートで年間ランキングを決めるこの賞で、猫を題材にした本がベスト10に3冊入った。1位の「なまえのないねこ」の文章を手がけた童話作家の竹下文子さんは、猫の自由な生き方を描いた冒険ファンタジー「黒ねこサンゴロウ」シリーズなど、これまでも多くの猫の物語を書いてきた。「餌はもらっても人の命令には従わず、つねにマイペース。明るい面もミステリアスな面もあるので、いろいろな物語が生まれます」と話す。

 一方、絵本・児童書の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんは、読者にとっても、自由気ままに物語の中に存在しているように感じられる猫は特別だという。「たとえ主人公でも、性格が悪かったり、ずるかったりしても許されるのは猫ならでは。存在そのものが愛されているのかもしれません」
(矢田萌)

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