町工場が開発、ヤギ毛の小型犬用歯ブラシ 「今までより磨ける」
大阪府八尾市の小さな町工場が、小型犬用の歯ブラシを開発した。これまで下請け生産してきたが、創業70年で初めての自社製品。獣医師の助言を受け、ヤギや馬の天然毛を使った、人間用より柔らかい毛先が特徴だ。完成した商品は今月、増産に入った。
「多葉刷子(たばぶらし)工業所」は歯ブラシの柄の先の小さな穴に毛を植える過程を担う。祖父が始めた工場の3代目が、多葉宣宏社長(42)だ。兄でシステムエンジニアの経験を持つ秀夫さん(46)も昨年10月、「メーカーになりたいと言っていた弟の力に」と家業に加わった。
きっかけは、実家の愛犬の歯石除去
開発のきっかけは2年ほど前。多葉社長の妻の実家で飼っていたトイプードルの歯石がたまり、動物病院で除去しようとしたら、歯が抜けてしまった。「技術を生かして何かできないか」と考えた。
当初は難航した。下請けとして受注生産をしてきた同社には商品開発の経験がない。いくつかの動物病院に協力を求めたが「犬は歯磨きを嫌がるから難しい」と断られた。
転機になったのは今年3月、知人に市内のとよなが動物病院を紹介してもらったこと。院長の豊永真弥獣医師(52)は「犬は歯周病にかかりやすく内臓に問題が出ることも。歯磨きを好きになってほしい。八尾から作ってみましょう」と引き受けてくれた。
独自の技術で、柔らかいヤギ毛の植毛に成功
「もっと柔らかい毛を」「ヘッドは小さい方が使いやすい」。豊永さんからはいくつも助言をもらった。多葉社長は「零細企業が他社と同じものを作っても勝てない。獣医さんの要望を全部聞いていこう」と応じた。
人間用の歯ブラシは一般的にはナイロン製だが、かんでのみ込んだ場合を考えて天然素材にした。馬の毛や、化粧ブラシに用いる、さらに柔らかいヤギ毛を使うことに。しかし、細いヤギの毛は歯ブラシの先に植えることが難しい。
そこで、下請けとして馬の毛を植毛してきた経験が生きた。製造機の部品を削って調整。動かす速度を落とすことで、ヤギの毛を植えることに成功した。会社を存続させて雇用を守りたいという思いも開発の力になった。
「今までより嫌がらず磨かせてくれた」
そして完成したのが「MIGAKENDE(ミガケンデ)」(税込み1408円)だ。ヤギ、馬、その両方を使った3種類。ヤギの毛の歯ブラシは植毛数が人間用の約10倍とぎっしりだ。
4千本を製造。10月、ネット通販アマゾンで売り始めた。飼い主からは「今までより嫌がらずに磨かせてくれた」との声が届いた。新しい取引先ができ、増産した。
多葉社長は「ワンちゃんの健康のため、役立ててほしい」と願う。
(徳永猛城)
- <多葉刷子工業所> 1949年創業。従業員24人。天然毛を使ったペット用の歯ブラシとして、「MIGAKENDE」を特許出願中だ。ホームページ(https://migakende.com/)で歯磨きの仕方を伝える動画を公開している。
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