3歳以上の犬の8割は歯周病?! 老犬ほど発症率が高くなる
年老いた愛犬の歯肉が赤く腫れている、歯石がついて取れない、口が臭い……なんてことはありませんか? もしかしたら歯周病になっているかも。お口の健康は、人間同様、全身の健康に大きく関わっています。犬や猫の口腔衛生に詳しいフジタ動物病院院長の藤田桂一先生にお話を伺いました。3回に分けて掲載します。
歯周病とは、文字通り「歯の周りの病気」。歯の表面や、歯と歯肉の間で歯垢の中にある細菌が感染を起こすと、歯肉が赤くなったり腫れたりする「歯肉炎」に。それを放置すると、歯肉はもちろん、歯を支える「歯根膜」や「セメント質」、歯の下にある「歯槽骨」といった歯の周りの組織にも炎症が及ぶ「歯周炎」になります。
「歯肉炎と歯周炎を合わせて、歯周病と呼びます。3歳以上の犬の80%以上が歯周病を持っていると言われており、高齢になるにしたがって歯周病の発症率は高くなります」(藤田先生)
◆愛犬が歯周病になると、こんな変化が現れる
歯周病になると、口、体、そして行動に以下のような変化が現れます。今すぐ愛犬をチェック!
##お口のトラブルチェック・リスト##
(該当する項目が多いほど歯周病の可能性が高い)
- ・歯茎に赤みや腫れがある。
- ・歯に歯石が付着している。
- ・口臭がある。
- ・口の周りを触られるのを嫌がるようになった。
- ・食欲はありそうだが食べられない。
- ・食べるのに時間がかかるようになった。
- ・食事中、食べ物をよくこぼす。
- ・柔らかいものしか食べない。
- ・前脚に血液やよだれのあとがある。
◆犬が歯周病になる原因 皮膚病や嚙み合わせの悪さも
手術を含む保険金額請求理由では、「犬の入院」「同・手術」のいずれも「歯周病」がトップに(「アニコム 家庭どうぶつ白書2016」)。いかに多くの犬が歯周病を抱え、病院にかかっているかがわかる。
歯周病を引き起こし、悪化させる誘因を藤田医師に解説してもらった。
・ハミガキが不十分
歯垢のうちはハミガキで除去できるが、それを怠ると歯垢が歯石になり、その上にさらに歯垢がたまる……という悪循環に。
・高齢
年齢とともに、口の中を殺菌する作用がある唾液の分泌が減ってしまう。
・全身性因子
免疫機能障害、血液疾患、糖尿病、腎機能障害などがあるとリスクが高まる。
・皮膚病
皮膚を気にして自分の体をなめたときに口の中に入った毛に雑菌が繁殖し、歯周病の原因になることも。
・噛み合わせが悪い
乳歯が残っていたり、歯と歯が重なるなど歯並びが悪かったりすると、唾液が口内全体に回りにくいため炎症が起きやすくなる。
・小型犬
大型犬や中型犬に比べると、小型犬は頭の大きさに対して歯が大きく、歯と歯の間隔が詰まっている。そのため歯垢がたまりやすく、唾液も口内全体に回りにくい。さらに、パグやシーズーなどの短頭種は上顎の骨が内側にカーブしているため、奥歯まで歯ブラシが届きにくいなどケアがしづらく、歯垢、歯石がたまりやすい。
・柔らかい食事を摂っている
ウェットフードや手作り食は水分が多く柔らかいため、歯垢が残りやすい。
そして、藤田医師はこう警鐘を鳴らす。
「歯周病が引き金となって起こる口や鼻の病気、さらには全身疾患を引き起こす可能性もあります」
次回は、歯周病によって起こる病気を解説します。
■藤田桂一 (ふじた・けいいち) 獣医師・獣医学博士。1956年生まれ、日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)大学院獣医学研究科修士課程終了。日本小動物歯科研究会会長などを務め、研究活動を行う。フジタ動物病院(埼玉県上尾市、http://www.fujita-animal.com/)には、全国から愛犬の口腔疾患で悩む飼い主が訪れる。
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