犬の動物病院嫌い 苦手になる前に慣れれば、喜んで通うように
最近増えてきた相談の中に、「犬が動物病院を嫌がって攻撃的になるため、診察や治療を受けることができない」というものがあります。
動物病院でパニックになったり、攻撃するようになった犬の行動治療は簡単ではありません。また、パニックになるほどではなくても、動物病院に行くことがストレスになる犬はとても多いと思います。
強いストレスは免疫力を低下させ、病気の回復にも悪影響をもたらします。犬は動物病院に行くことが自分のためになるとは理解できません。病院では嫌なことをすることが多いので、何もしなければ病院嫌いになってしまうことがほとんどです。
そのため、まだ病院嫌いになっていない子犬の時期に積極的に予防しておくことをお勧めします。病院嫌いを予防するのにもっとも効果的なのは、動物病院で行っているパピークラスに参加することです。
動物病院は「知らない人が意味不明の行為をする場所」
パピークラスとは生後2カ月~4カ月頃の子犬と子犬の飼い主を集めて行うしつけ教室で、内容は主として次のようなものです。
①社会化プログラム:人間社会に適応し幸せに暮らすために社会性を育みます
②ハンドリングプログラム:日常のケアや健康管理を快く受け入れるように慣らします
③コミュニケーションプログラム:適切なコミュニケーションで信頼関係を築きます
④適切な食事管理と健康管理:病気を予防し、健康長寿をめざします
⑤子犬特有の問題行動への対処方法:困った行動を解決し、深刻な問題行動を予防します
パピークラスで行う子犬教育は、大好きな食べ物や楽しい遊びをごほうびにして行うため、子犬は喜んで動物病院に来るようになります。
また、この時期、ほとんどの飼い主さんは子犬特有の困った行動に悩んでいますが、適切なアドバイスによって早期に解決し、深刻な問題行動に発展することを予防できます。
さらに、獣医師や動物看護師との関係が驚くほど良くなります。例えば犬を抱くという行為も、飼い主がするのと見知らぬ人間が行うのでは、犬にとっては大きな違いがあります。
注射や採血の際に犬が暴れるのは、注射そのものの痛みよりも、覆いかぶさるような姿勢や拘束に恐怖を感じるためです。知らない場所(=動物病院)、知らない人(獣医師・動物看護師)、見慣れぬ道具(聴診器や耳鏡など)、意味不明の行為(=注射や爪切りなど)に不安を抱くのです。
病院に慣らすことで、病気の予防や早期治療につながる
従ってパピークラスで動物病院や獣医師・動物看護師に慣れておくこと、診察台での保定の動作などに慣らしておくことは、動物病院におけるトラウマを予防するためにとても有効です。
特に我々にとって一般的な不妊去勢手術も、犬にとっては大事件ですから、手術後に動物病院を怖がるようになる犬は非常に多いのですが、パピークラスに参加した犬は手術後も尻尾を振りながら来てくれます。
当院ではパピークラスを始めて20年以上経ちますが、私がパピークラスを実施していてもっとも楽しいと思うのは、犬たちが大喜びで病院にやってくる姿を見ることです。その様子を見て飼い主さんも笑顔になり、診察そのものが非常になごやかな雰囲気になります。
昔はよく診察の際に飼い主さんから「この近所まで来て行き先が動物病院だとわかると一歩も動かなくなるんです」と言われましたが、最近では「散歩で通りかかったら病院の前から動かなくなるんです」とか「病院の近くまで来たらわかるのか、一目散で入り口に向かっていくんです」と言ってくれる飼い主さんが増えました。
飼い主さんにとっても一番うれしいのは、犬が幸せそうにしているときではないでしょうか。たとえ病気の治療のためであっても、病院に来て犬が震えたり、パニックになっている姿を見るのは心が痛むことです。そのため、病院が嫌いな犬の飼い主さんは、連れて来ることをためらいがちです。
定期的な診察を行わなければ症状の変化に気づかないこともあります。犬が嫌がらずに動物病院へ訪れることができるようになれば、病気の予防や早期発見・早期治療を効果的に行うことができるようになるでしょう。
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。