犬の肥満を防ごう 体形チェック法と脂肪が健康によくない理由
ぽっちゃりした犬は、飼い主にはかわいい体形に見えがち。ところが「肥満は万病のもと」という言葉のとおり、犬は脂肪と共にさまざま病気のリスクを抱えている状態です。犬の肥満が健康寿命の危険信号である理由を知っておくことが大切。特に高齢になると身体にさまざまな不調を抱えることから、肥満は要注意。愛犬の理想の体形や体重をチェックし、運動や食事の工夫で健康寿命をのばしましょう。
愛犬は本当に太っていない? 見て触ってチェック
飼い主が愛犬の体形を標準体形と思っていても、実は”ちょいぽちゃ”の場合も少なくありません。また”ちょいぽちゃ”に見えていても、実は“かなりぽちゃ”というケースもあります。まずは愛犬の体形を確認しましょう。
犬の標準体形は触ると骨格を確認でき、無駄な体脂肪がありません。上から見て腰のくびれは大きくありませんが、横から見ると腹部が上がっています。詳しくは犬の「ボディ・コンディション・スコア(BCS)」で確認を。次に自宅でチェックできる5つのポイントを紹介しましょう。
首の後ろ
首の付け根のあたりに脂肪による段ができて、盛り上がっていたら危険信号です。
尾の付け根
オスワリをさせたときに尾の付け根が盛り上がっていたら肥満のサイン。
あごのたるみ
あごからのどへのラインが脂肪で埋まって角度がなくなっていたら要注意。触るとタプタプしてたるんでいたら太りすぎです。
ウエストのくびれ
横から見て、胸から足の付け根のラインにくびれがなく、地面と平行に見えたら要注意。
胸部の感触
胸部を触って肋骨が確認でき、脂肪がうっすらと感じられるくらいが標準。肋骨が確認できず、脂肪に厚みがあるように感じたら肥満です。
犬の体重から肥満かどうかチェックする
犬の体形に加えて体重でも肥満をチェックできます。たとえば「適正体重から15%増えたら肥満」と定義しているドッグフードメーカーもあります。
適正体重の目安は、一般的には犬が1歳時の体重です。ただし早い段階で避妊・去勢手術をした犬は、1歳頃にはややふくよかになっていることもあります。犬は避妊・去勢手術により基礎代謝が落ちたり、食欲が増進したりして太りやすくなる傾向にあります。ただし食事量を減らすのではなく、運動量を増やす工夫を。愛犬の体重や体形について気になることがあれば、動物病院に相談しましょう。
脂肪が犬の健康に悪影響をおよぼす仕組み
犬にも肥満が万病のもとになることはよく知られています。それでも肥満の犬が減らないのは、「なぜ脂肪が健康によくないのか」という理由まで知られていないからかもしれません。肥満の悪影響について知っておくことも重要です。
ひとつは、犬が脂肪の重りを背負って生活しているような状態になり、関節疾患などを引き起こすリスクが高まるからです。先天的股関節形成不全や膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)の素因をもっている犬は、体重が負担になって発症する心配もあります。
もうひとつは、脂肪細胞から分泌される脂肪細胞由来伝達物質(アディポサイトカイン)が、犬のさまざまな病気の発症に関わるからです。この物質の影響で、糖尿病、心疾患、呼吸器疾患などの発症リスクが高まります。
さらに、食欲の亢進やインスリンへの抵抗性によって、肥満がさらに進行する「肥満のスパイラル」に陥ってしまいます。
犬を肥満にさせないために 何歳からでも運動を
犬を肥満にさせないためには、基礎代謝を上げて摂取したカロリーを消費させること。何歳からでも運動する習慣を取り入れ、筋肉量を増やすことを心がけることが肥満の予防につながります。高齢になり老犬になっても維持していきましょう。
犬が将来太りやすい体質になるかどうかは、成長期に決まることも知っておきましょう。肥満予防で効果的な方法は、脂肪細胞の数を増やさず、サイズを大きくさせないこと。犬の脂肪細胞がもっとも増えて大きくなるのが成長期なので、この時期に標準体形を心がけるだけでも太りにくい体質になります。
老犬は食生活を改善してダイエットを
犬が高齢になってから肥満を解消するためには、食生活の改善が大切です。ダイエットをさせる場合、極端な食事制限は身体のバランスを崩し、筋肉量を落とすことにつながります。運動量を増やし、栄養バランスに気を付けながら、適切な量を与えましょう。
主食のドッグフードを1日に必要なカロリーの80%に減らし、残りの20%以内を肥満の改善が期待できるトッピング食に変えるのも一案です。エネルギー代謝をうながすビタミンB2を多く含む食材(魚介類、レバー、納豆など)、腸内環境を整え、糖質の吸収抑制作用のある食物繊維(野菜、果物、きのこなど)、体内の脂質をエネルギーに変えるL―カルニチン(ラム肉、馬肉、乳製品など)を、栄養バランスが崩れない程度に与えましょう。
老犬は一度に食べると胃腸に負担がかかるため、1日の食事の回数を3〜4回に。食事を小分けにすることで満腹感も持続するのでダイエットにも有効です。
病気で犬の体重が増えることも
代謝を下げる甲状腺機能低下症やクッシング症候群を発症した犬は、体重が増えていきます。もし食事量や運動量が変わっていないのに犬が太ってきた場合は、動物病院を受診すること。
肥満にばかり目がいきますが、実は痩せすぎも犬の健康寿命にはマイナス。食事を十分に摂れない、食べても栄養分を吸収できない、吸収した栄養を体内で利用できない場合、犬は痩せてきます。体重の増加だけでなく減少にも気を配り、犬の健康寿命をのばしていきましょう。
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