動物愛護に尽力した人々を表彰 第3回「川島なお美賞」が決定
今年9月24日、4回目の命日を迎えた、女優の故・川島なお美さん。芸能界を代表する愛犬家として知られた川島さんの遺志を継ぎ、動物愛護に尽力する人々を称える賞が「川島なお美動物愛護賞」です。その第3回となる授賞式が26日、東京・南青山で開かれました。
主催は、日本文化のさらなる深まりと広がりを促進するために、各分野の著名人がボランティアで参集した「エンジン01文化戦略会議」の動物愛護委員会。川島さんの遺志を継いで設立された「川島なお美動物愛護基金」によって運営されています。
授賞式には、委員長であり音楽評論家の湯川れい子さん、会議メンバーである放送作家の山田美保子さん、作詞家の東海林良さん、経済評論家の勝間和代さん、元海上保安庁長官で日本空港ビルディング副社長の鈴木久泰さん、そして川島なお美さんの元夫でパティシエの鎧塚俊彦さんが出席しました。
グランプリにあたる「動物愛護・川島なお美賞」には2名、犬や猫との絆が深い個人・団体を表彰する「動物愛護・ワンダフル・パートニャー賞」には3名の方が選ばれました。
動物愛護・川島なお美賞
◆大木トオルさん
一般財団法人国際セラピードッグ協会代表・ミュージシャン。動物愛護家として日米の友好親善に貢献。殺処分寸前の犬たちをセラピードッグとして育成、障がい者施設や高齢者施設、病院、教育の現場などでの動物介在療法を39年にわたり行っている。
【受賞の言葉】
捨て犬の救出をするようになって42年経ちます。当時、音楽活動のためにアメリカに移住、そこで動物の救助と愛護を学びました。そのころの日本は年間65万頭もの犬が殺処分されていました。
今は殺処分ゼロまでもう一息というところまで来ています。それでも、殺処分寸前の犬たちの中から、私が救い出せるのは一回に4~5頭。ほかの子たちは見捨てて来たんです。
私はただただ手を合わせることしかできませんが、救い出した子たちがセラピードッグになって人を癒している姿を見るのは、無上の喜びです。これからも皆様のお力をお借りして、がんばりたいと思います。
◆山田あかねさん
映画監督、小説家、脚本家、演出家。映画『犬に名前をつける日』の監督として注目を集める。犬や猫をテーマとしたドキュメンタリー作品を数々手がけ、今年6月は『犬と猫の向こう側』で放送文化基金優秀賞を受賞。
【受賞の言葉】
撮影をはじめたころ、動物を保健所に持ち込む人のことを「悪者」だと思っていました。しかし「悪者探し」の視点で作品を作っても仕方がないことに気づいたんです。
多頭飼育崩壊は高齢者が多い。彼らは「もうこれ以上飼えない」とは言い出せないんです。言えば無責任だと責められる。そして、なすすべもないまま数が増えるという悪循環。彼らを責めても何の解決にもなりません。
人間は不完全だからこそ、寄り添ってくれる動物が必要。ならば「助けてほしい」と声をあげても責められない社会を目指すべきではないでしょうか。来年以降は映画も予定しています。少しずつでも、続けていけば世の中は変わると信じています。
動物愛護・ワンダフル・パートニャー賞
◆廣田美嘉さん
動物愛護団体ドッグレスキュー代表。20年以上、人間と動物の共生を図る社会を目指し、協力団体とともに、過酷な状況を強いられる犬や猫を救出。適切な治療ののち、新しい飼い主への譲渡を推進。活動範囲は全国におよぶ。
【受賞の言葉】
私は「自分がやりたいから」活動しています。命を救っているという意識もありませんし、犬に頼まれたこともないです。家族にも一緒に活動しているスタッフにも、本当に頭が上がりません。
活動は保健所からの引き取りがメイン。選ぶことなどとてもできないので全部引き取ります。猫も一時期は43匹いました。
なかには病院に直行する子も、そのまま亡くなる子もいます。寝たきり、目が見えない、歩けない。重度の疾患の子もいます。物好きなもので、そういう子ほど愛おしいんです。
譲渡会は全国で開催しています。最期の瞬間までお世話したい。最後までお世話くださる方に託したい。その思いで、この賞を励みに今後もがんばります。ありがとうございました。
◆原口美智代さん
『月刊ねこ新聞』副編集長。創刊25周年を迎えた『ねこ新聞』は、各界の著名な筆者による詩やエッセイ、絵画などを掲載。編集長(夫)が病に倒れた後、夫の介護と副編集長を長年にわたり務めている。
【受賞の言葉】
『ねこ新聞』は動物愛護の精神で作ってはおりますが、直接手を差し伸べて命を助けているわけではないので、この賞をいただいていいものかどうか迷いました。
25年前に夫が創刊。しかしその1年後、脳出血で倒れました。5年ほど休刊したのち、復刊。左半身麻痺、要介護5の夫を編集長として、私が副編集長として作ってまいりました。
ついに昨年、私の手では介護しきれなくなって、夫は施設に入りました。そこでこの受賞は、夫へのご褒美ではないかと思い、ありがたくいただくことにしたのです。
私もこれまで、原稿でしか接してこなかった動物愛護について、今後は積極的にお手伝いしていきたいと思っています。
◆山路徹さん
ジャーナリスト。国内初、紛争地専門のニュース通信社・AFP通信社を設立。東日本大震災の被災地での動物救出活動をきっかけにブログ「とらマロ通信」を立ち上げ、愛護問題に取り組んでいる。
【受賞の言葉】
私が動物愛護活動を始めたのは東日本大震災の動物救助活動がきっかけでした。「人間が大変なときに何をしているのか」「動物のほうが大事なのか」という批判の声も受けました。
ですが、大事な家族が戻ってきたときの飼い主さんの喜びようを見ると、ペットは本当に家族なのだと実感しました。
今や日本は14歳以下の子どもよりも動物の飼育頭数のほうが多い時代。ペット同伴避難もできるようになってきました。僕に何ができるのか、まだまだ先は長く、今このような賞をいただくのは早いと思いますが、いつも心の中にいる川島なお美さんに叱咤激励されながら、これからもがんばりたいと思います。
「飼いとげよう」は動物じゃなく、私たちのための言葉
「飼いとげよう」。ポスターには愛犬のシナモンとココナッツを抱いた川島さんの姿があります。
受賞者のコメントを受けて、委員会メンバーの経済評論家・勝間和代さんは「ペットなんて経済活動には何の役にも立たないのではないかと言われることがあります。とんでもない。動物たちが私たちに与えてくれるものは、お金には代えられません。我が家にも8歳と13歳の保護猫がいます。子どもたちはいつしか独立して出て行きましたが、猫は変わらずいてくれます。『飼いとげよう』というのは、動物のためじゃなくて、私たちのためにある言葉ではないでしょうか」
授賞式のしめくくりには、動物愛護委員会委員長の湯川れい子さんが言いました。
「次世代にどんな社会を残していくのかを考えたとき、誰もが動物と暮らせて、飼えなくなる日が来ても救済できる、施設や仕組みを作っていくことが大切だと思います。殺処分がゼロになる日が来ても、私たちエンジン01が取り組むべき課題はまだまだたくさんあります」
人と動物の幸せで持続的な共存をめざして。動物を愛する一人ひとりが、自分にできることを考えればきっと実現できるのではないでしょうか。
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