故・川島なお美さんの動物愛護賞 山根獣医師、太田記者ら受賞

受賞した3氏。前列左から太田氏、山根氏、金木氏(坂上氏は欠席)
受賞した3氏。前列左から太田氏、山根氏、金木氏(坂上氏は欠席)

 動物愛護に貢献した人を表彰する「川島なお美動物愛護賞」の授賞式が25日、東京・南青山で開かれました。同賞は2015年9月、54歳の若さで急逝した俳優・川島なお美さんの遺志を受け継いで設立されたもの。2回目となる今回は、動物愛護・川島なお美賞に、動物臨床医学研究所理事長の山根義久氏、朝日新聞記者の太田匡彦氏の2人、ワンダフル・パートニャーズ賞に、日本動物生命尊重の会アリス代表理事の金木洋子氏、俳優の坂上忍氏の2人が選ばれました。

 主催しているのは、日本文化のさらなる深まりと広がりを目的に、各分野の著名人が集まったボランティア団体「エンジン01(ゼロワン)」内の動物愛護委員会。東京オリンピック2020までに、東京都内の動物殺処分を限りなくゼロに近づけようと、さまざまな活動を行っています。授賞式には、委員長であり音楽評論家の湯川れい子さん、会議メンバーである放送作家の山田美保子さん、作詞家の東海林良さん、歌手の神野美伽さん、そして川島なお美さんの元夫でパティシエの鎧塚俊彦さんが出席しました。

受賞の喜びを語る山根義久氏
受賞の喜びを語る山根義久氏

エンジン01動物愛護・川島なお美賞

◆山根義久氏・公益財団法人動物臨床医学研究所理事長

 倉吉動物医療センター・山根動物病院/米子動物医療センター会長
 国立大学法人東京農工大学名誉教授

 獣医師として、獣医学博士として、動物医療の基礎研究、臨床研究はもちろん、地域に根差した動物医療の最前線で尽力。平成25年には自ら直接的な動物愛護活動を行うため、鳥取県と連携で「人と動物の未来センター”アミティエ”」(鳥取県倉吉市)を開設。日本初の本格的な動物終生飼育を理想とする保護センターとなっている。

【受賞の言葉】
 気が付けば50年もの年月、動物の福祉のため、健康のために働いてきました。さすがに大学も退官、多くの仕事からも退く年齢になりました。これまで手掛けてきた仕事を振り返ってみて、気づいたことがあります。長年、犬や猫など、動物たちを救いたい一心でやってきた。そのつもりでいたのですが、むしろ、私は犬たちや猫たちに救われていたのだ、と思うようになったのです。

 おかげさまで、多くの方の賛同と協力を得て、地元倉吉に「アミティエ」という施設を建てることができました。人生があとどれくらい残っているかわかりませんが、残る時間のすべてを、引き続き、動物たちのために捧げたい。この賞を一番喜んでくれるのは、おそらく施設の職員たちでしょう。ありがたくいただき、今後の励みとしたいと思います。

◆太田匡彦氏・朝日新聞文化くらし報道部記者

 10年以上にわたり、生活文化としてはもちろん、政治面から、社会面から動物愛護の実態を取材。実態をまとめた書籍「犬を殺すのは誰か、ペット流通の闇」は、動物愛護を語る上での貴重な啓発書となっている。sippoでもコラムなどを執筆。

【受賞の言葉】
 エンジン01動物愛護委員会の勉強会には何度か、講師としてお招きいただいたこともありました。故・川島なお美さんも非常に熱心に私の話を聞いてくださり、本当に動物のために真摯に取り組んでいらっしゃる姿に感動したものです。その遺志がこのように受け継がれ、昨年の第1回の授賞式には取材記者として出席しておりましたので、このたび自分が選んでいただけたことは望外の幸せです。日々取材をしていると、動物愛護管理法の「動物は命あるもの。ペットは家族と同じ、大切な存在である」という精神に現実が追い付いていないなと痛感させられる場面を目の当たりにします。これからもこの賞を励みとし、今後も日本の動物たちを取り巻く環境について、少しでも良くして行けるような記事を書いてゆきたいと思います。

ポスターに使われた川島なお美さんの写真
ポスターに使われた川島なお美さんの写真

エンジン01・ワンダフル・パートニャーズ賞

◆金木洋子氏・NPO法人日本動物生命尊重の会アリス代表理事

 東京都動物愛護相談センターや埼玉県動物指導センターなどから犬や猫を引き取り、多頭飼育崩壊現場や飼育放棄現場からの動物の救済など多彩に活躍。廃校を利用した動物シェルター設置を働きかける署名活動などを精力的に続けている。

【受賞の言葉】
 ひたすら手探りに、地道に活動してまいりました。理不尽な理由で命を奪われる動物を、1匹でもいいから救いたい。車を走らせ、一時預かりをお願いする方を募り、里親募集をして命をつないできました。私たちにできることを続けてきた、ただそれだけですが、こうして改めて評価していただけたことは、スタッフ一同にとっても大変光栄なことと思っています。エンジン01動物愛護委員会のような活動は、本当に私たち動物ボランティア団体にとって励みになります。これからも命に向き合うにふさわしい会でありたいと思います。

◆坂上忍氏・俳優

 保護犬を含む12頭の犬たちと暮らすため、ドッグラン付き一戸建てを購入。その中には義足をつけた3本脚の犬もいる。日々更新されるブログでもその生活ぶり、飼育ぶりが紹介され、どんなに忙しくても1日3回、犬たちの散歩は自ら手掛け、犬とともに暮らすすばらしさを発信し続けている。

【受賞の言葉】
 テレビ番組出演中のため、授賞式に出席できず申し訳ありません。このような賞をいただけて、恐縮しております。川島なお美さんの遺志を受け継ぐ活動であるとお聞きして、ますます光栄に思っております。今、12匹の犬と暮らしていますが、今後も僕なりに、動物たちと深くかかわってゆきたい。動物にとってのよりよい環境について勉強してゆきたいと思っております。本日はありがとうございました。

遺志を引き継いで

 川島さんの元夫の鎧塚俊彦さんは、「正式な遺書ではないのですが、妻の走り書きのようなものが残っておりました。そこには、動物の殺処分を限りなくゼロに近づけたい。そのために尽力なさっている方がたくさんいる。微力ながら、そういう方々を少しでも応援できればと、この賞を設けました」と、成り立ちについて説明されました。

 壇上には、愛犬を抱く川島さんの写真に「飼いとげよう。」と書かれた、エンジン01動物愛護員会のポスターも。

 社会を変えるのは簡単なことではないかもしれない。けれど、動物と暮らす一人ひとりが終生、生き物の命を尊重できる世の中になれば。そんな川島さんの遺志が受け継がれた授賞式でした。

浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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