猫24匹、多頭飼育崩壊 強烈な糞尿の臭いに白骨化した死骸も

多頭飼育崩壊の現場。玄関を開けると、強烈な臭いが鼻を突いた
多頭飼育崩壊の現場。玄関を開けると、強烈な臭いが鼻を突いた

 ペットの犬や猫が増えすぎて、飼い主が対応できなくなる「多頭飼育崩壊」が山形県内でも相次いでいる。犬や猫の適正飼育の啓発や相談受け付けなどを行う愛護団体「置賜動物愛護推進連絡会」の代表山村牧子さん(48)に同行し、山形県南陽市の現場を取材した。

 ◇       ◇

 4月中旬の朝、山村さんと向かったのは60代の男性が一人で暮らしていた同市内の一軒家。

 男性は病気で昨秋から入院し、今年3月に亡くなった。男性の死後、市の職員が訪ねたところ、家の中に猫が24匹もいることが発覚。山村さんに支援を求める連絡が入った。

 山村さんが玄関の扉を開けた瞬間、糞(ふん)尿の強烈な臭いが鼻を突いた。猫の毛やほこりがこびりついた床の上を歩くと毛が舞い上がる。

 8畳ほどの居間で、山村さんがエサを補充すると猫が10匹ほど集まり、身を寄せ合ってエサを食べ始める。傍らには白骨化した猫の死骸。共食いしたとみられる。

 台所と居間を仕切る引き戸の木枠は猫が爪を研ぐため、すっかり細くなっていた。居間の窓際にはふんが20センチほど積み上がる。その上で差し込む光を求める猫たちが日なたぼっこをしていた。

ふんの山の上で日なたぼっこをする猫
ふんの山の上で日なたぼっこをする猫

 「猫は本来、きれい好きな動物なんだけどね」。山村さんはそうつぶやいた。

 地区の自治会長の男性は「まさかあんなに猫が増えていたとは」と驚く。

 会長によると、かつて飼い主の男性は猫を外で放し飼いにしていた。だが、あまりにも臭いがひどかったために数年前に苦情を伝えると、猫の姿を見ることはなくなったという。

 山村さんは「飼い主は地域社会で孤立していたうえ、屋内で猫を飼うようになり、外から状況が見えなくなってしまったのだろう」と分析する。こうした多頭飼育崩壊は、山村さんが支援に入ったケースだけでも最近3年間に13件。保護した犬や猫は300匹近くに上るという。

 多頭飼育崩壊が起きると、保護すべき犬や猫の数は多くなる。なかには譲渡先が見つからず、保健所に収容されるケースもある。その後、殺処分されたり、押し出される形でほかの犬や猫が殺処分されたりということにもなりかねない。

福祉や行政の担当者も対応着手

 福祉や行政の担当者も対応に乗り出し始めた。

 山形市社会福祉協議会は今年2月、多頭飼育崩壊を学ぶセミナーを初めて開いた。地域の民生委員、高齢者の相談に応じる包括支援センターの職員らが対象で、約40人が受講。山形市内で起きた事例、猫の繁殖力の強さや不妊去勢手術の必要性などを解説した。

 また、こうした状況に陥る飼い主は地域での孤立や心の病など福祉的な支援が必要な場合もあることを説明した。セミナー後、受講者から「地域に猫が増えている家がある」との連絡も寄せられたという。

 同協議会地域福祉課の児玉和行さんは「現場の人たちが知ることで早期発見や防止につながる。今後もセミナーを継続していきたい」と話す。

 山形市動物愛護センターによると、最近は高齢の飼い主の入院や死去で放置されるペットも増えている。松野尚・副センター長は「福祉関係者と連携し、できるだけ早く状況を把握し、譲渡先を探す支援をしていきたい」と対応に取り組む考えを示した。

 山村さんは「これまではどうしようもなくなった段階で連絡が来ていたが、それでは負担が重すぎる。行政内でも情報共有し、増えすぎる前に対応することが大切だ」と話している。
(宮谷由枝)

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