元気のない子猫を見つけた 助けるにはどんな方法があるの?

大阪市動物管理センターに持ちこまれた子猫。連れてきた男性は「親戚の猫が産み、育てられなくなった」と話した
大阪市動物管理センターに持ちこまれた子猫。連れてきた男性は「親戚の猫が産み、育てられなくなった」と話した

 「子どもとお散歩中に、元気の無い子猫ちゃんに出会いました。小雨が降る工事現場に1匹でうずくまり、顔は泥だらけ。助けてあげたかったけれど、何も出来ませんでした。どうすれば良かったのでしょうか」。読者の疑問や困りごとを募って取材する朝日新聞「#ニュース4U(フォー・ユー)」取材班に、30代の女性からLINEが届きました。助けるにはどんな方法があるのでしょうか。

行政に相談する場合 譲渡対象なのか確認を

 相談を寄せた女性が暮らす大阪市に聞くと、「区役所に設けられた保健福祉センターに連絡を」と案内されました。首輪が付いている場合や土日曜で窓口が閉まっている場合は、最寄りの警察署で相談に乗ってくれることもあるそうです。

 ただ、命の危険が迫っていない場合は保護しないことが多いといいます。特に生まれて間もない子猫の場合は、近くに母猫がいる可能性もあり、親と一緒の方が生存の可能性も高まることから「数時間から1日程度は様子を見て」と伝える場合もあるとのことでした。

 区役所が保護した場合に運ばれる市動物管理センター(愛称・おおさかワンニャンセンター、同市住之江区)を訪ねてみました。常駐して保護された猫の世話をしているのは、獣医師資格を持つ5人の職員。治療や世話をしながら、区役所や警察からの要請に応えています。

 センターには猫のための保護室が四つあります。保護直後、猫を収容し、検査やワクチン接種をするための猫室、検査後の経過を観察する検疫室、譲渡可能な状態の猫が暮らす保護室、さらに譲渡希望者と触れあえる「猫ふれあい室」です。収容できるのは最大50匹程度です。

 子猫は約1カ月かけて検査やワクチン接種をし、譲渡可能と判断されれば毎月第2・4水曜にセンターである譲渡会に出ます。事前審査を通過した希望者が対面し、決まれば家に連れて帰ります。子猫は希望者が多く、同じ子猫を希望する人が2人以上いた場合は抽選が行われます。

 譲渡の数は増加しているそうですが、センターの2018年度の殺処分数は犬が20匹、猫752匹でした。特に生後3週未満とみられる子猫はすぐに麻酔注射で殺処分されることが多いそうです。「離乳前の子猫はケアが難しく、人手も足りない」といいます。

 大阪市では去年3月、「犬猫の理由なき殺処分ゼロ」に向けた行動計画を策定し、今年4月には動物管理センターを「殺処分の場」から、命を保護し譲渡する場へと変えるための大規模な工事をしました。

 ただ、そのぶん職員の負担は増えているそうです。自身も保護された猫を2匹飼っている係長の木太俊雅さん(45)は「今の態勢で出来ることは精いっぱいやっているつもりですが、まだまだ救えた命があったのにと感じることもあります」と話していました。

保護団体を探す場合 アドバイスは可能な場合も

 保護猫カフェを東京、岐阜、大阪、広島で営むネコリパブリック。カフェでグッズなどを販売して収益を得ながら、各地の団体と協力して譲渡会などを開き、5年で約800匹の猫を新たな飼い主と結びつけました。代表の河瀬麻花さん(44)は「猫の保護は、地域や担当者の情熱によってかなりばらつきがあります。行政に断られたときは、地元の保護猫団体を探し、相談して欲しい」と話します。ただ、「預かっている猫たちで飽和状態の団体も多く、全てを引き取ることは難しいことも知って欲しい」とのことでした。

 大阪府堺市で保護猫活動をしているNPO法人おおさかねこ倶楽部に猫を保護している「シェルター」を見せてもらいました。2年前、大阪府内の住宅を買い取り、部屋と押し入れを猫が暮らしやすいように改装。現在、譲渡先が決まっていない120匹の猫たちが暮らしています。

 庄川節子さん(73)は「数人で手分けして毎日2回、それぞれ4時間ほどかけて掃除やお世話をしています。もっと助けてあげたいけれど、これ以上の受け入れは難しく、今が限界です」と話します。

大阪府内の保護猫シェルター。現在120匹を保護している
大阪府内の保護猫シェルター。現在120匹を保護している

 それでも、「手を差し伸べて欲しい」と訴えるのは、昨年発売された本「野良猫の拾い方」(大泉書店)の監修をした東京キャットガーディアンの山本葉子さん。「『拾っても最後まで責任を持てない』という理由で見過ごしてしまう人は多い。ただ、最初の数時間動くだけでも命をつなぐことはできます」。本では猫を保護し譲渡するまでの方法を、段階を分けて詳しく解説しています。

 近くに母猫がおらず保護を決めた場合、まずは野良猫を受け入れてくれる動物病院を探し、応急処置とノミやダニの駆除をしてもらいます。連れて行くまでタオルにくるんでカイロで温めるなど、子猫の体温が下がらないようにすることが大事とのことでした。

 「受け入れてくれる病院さえ見つかれば、相談窓口を探すなど時間の余裕ができます。命をつなぐための時間稼ぎだと思って、できることを探して欲しい」。保護している猫で手いっぱいの保護団体でも、猫の育成に関するアドバイスはしてくれる場合が多いそうです。「1~2カ月、自分の家で預かり、団体に余裕が出来るのを待ってから預けるなどの協力をして欲しい」

ミルクボランティアを探す場合 SNSでの判断、慎重に

 数年前から「ミルクボランティア」という活動が全国に広がっています。行政や保護猫団体では面倒が見きれない生まれたての子猫を、数週間から2カ月程度個人の家庭で預かり育てる活動です。

 京都市で4年前にミルクボランティアを始め、100匹以上を育ててきた木村かおりさん(45)宅を訪ねました。リビングに入ると子猫たちが足にまとわりついてきました。10日ほど前に路上で保護された4匹のきょうだい猫で、保護団体からミルクボランティアの依頼があったそうです。

自宅でミルクボランティアをする木村かおりさん
自宅でミルクボランティアをする木村かおりさん

 「きっかけは、近所の空き地で野良猫を保護したことでした。1、2カ月間の寝不足は覚悟しなければなりませんが、やり方を覚えれば個人でも始められます」。生後3週間が経過するまでは、約3時間ごとに猫用のミルクを与え、自力で排泄(はいせつ)が出来ない子猫の世話をします。

 「こうして、湿らせたティッシュでおしりの下をポンポンと刺激するとおしっこが出てきます。意外と簡単でしょ」。ただ、幼い猫は状態が急変することも多いので、動物病院や相談できる保護猫団体とつながりを持っていることが大事だと木村さんは話します。

 成長に合わせて、動物病院で感染症の検査をし、ワクチンを接種します。子猫用のミルクや離乳食などのえさ代も含めると、2カ月間で1匹あたり約3万円ほどの費用がかかるそうです。体力的にも経済的にも決して楽ではありませんが、木村さんは命をつなぐミルクボランティアにやりがいを感じています。「新しい飼い主さんから成長した猫の写真が送られてくると、とてもうれしい。猫ちゃんたちを通じて大勢の人とつながることができました」

 ミルクボランティアを探す場合には、SNSが活用できます。「緊急の場合、ツイッターで『#ミルクボランティア』と『#地域名』をつぶやいて下さい。猫を助けたいという方が情報を拡散して、助けが見つかることもあります」。SNSは譲渡先を探すのにも役立つそうです。

 ただ、注意も必要です。ネコリパブリックの河瀬さんによると、「引き取り希望者の中には、飼育禁止のマンションに住んでいたり、転売や虐待目的の人も一部いたりする可能性もあります。会話だけで信用できる相手かどうかを判断するのは難しいので、できれば相手の身分証のコピーを預かったり、自宅の状態を見たりして下さい」。

 せっかく保護して育てた猫が新しい飼い主と一緒に幸せに暮らせるよう、慎重にやりとりしたほうがよさそうです。

(高橋大作)

取材後記 ペット飼育は社会的責任伴う

 「人と動物の共生する社会の実現を図る」。動物愛護法は第1条で、目的をこう定めています。

 ただ、犬や猫などの動物が苦手だったり、嫌いだったりする人もいます。朝日新聞デジタルで行ったアンケートには、犬や猫の飼育に伴う問題を指摘する声も寄せられました。

 「まだまだ、犬の散歩で、モラルの低い人が多い」(香川県・50代男性)

 「庭先に猫が来て排泄(はいせつ)して困り、その対策に数百万円も使ってしまった」(新潟県・60代男性)

適切な餌やりと糞尿処理を徹底し、飼い主のいない猫と地域環境を守る(坪井大地さん撮影)
適切な餌やりと糞尿処理を徹底し、飼い主のいない猫と地域環境を守る(坪井大地さん撮影)

 こうした事態を招かないために、飼い主には、自分のペットが人に迷惑をかけたりしないよう適切に飼育するよう努めることが、同じく動物愛護法で義務づけられています。

 また、飼い主のいない猫については、捕まえ(Trap)、不妊・去勢手術をし(Neuter)、元の場所に戻す(Return)、いわゆる「TNR」を通じ、地域住民によって保護・管理する地域猫対策が広く行われるようになっています。猫には一代限りの生をまっとうしてもらいつつ、餌やりをするボランティアらが糞尿(ふんにょう)も適切に処理しようという取り組みです。

 地域猫にかかわる活動を撮り続けている写真家の坪井大地さん(30)は、「かわいがるのであれば、本来は室内飼育を徹底すべきです。でも実際にはすべての猫に家を用意するのは不可能なので、苦肉の策として地域猫対策が行われている。この活動によって、猫による地域環境への悪影響を減らし、住民同士のトラブルも防止することができます」と話します。

飼い主のいない猫が増えないようボランティアらが餌やりを通じて猫を捕まえ、不妊・去勢手術を行う(坪井大地さん撮影)
飼い主のいない猫が増えないようボランティアらが餌やりを通じて猫を捕まえ、不妊・去勢手術を行う(坪井大地さん撮影)

 今国会で行われる動物愛護法の改正では、地域猫対策を後押しするための規定も盛り込まれます。

 今回の改正ではほかにも、ペットの犬や猫に不妊・去勢手術などをし、繁殖できないようにすることが新たに義務づけられます。ペットを増やしすぎて飼い主が適切に対応できない「多頭飼育崩壊」と呼ばれる状態になって、周辺環境に悪影響を与える事例が全国で相次いでいるためです。

 すべての人と動物が共生していくために、犬や猫などのペットを飼育する行為には、社会的な責任が伴うのです。

(専門記者・太田匡彦)

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