愛おしい「残念すぎるネコ」 撮影者が投影された人間臭さ
“いけてない猫”の写真ばかり集めた写真集『残念すぎるネコ』(大和書房)が発売された。撮影・筆者は、SNSやメディアで人気の猫写真家・沖昌之さん。前作『必死すぎるネコ』に続く写真集だ。「カワイイ」「インスタ映え」とは真逆、実に人間臭い仕上がりになっている。
路上で大股を開いて横になり、他の猫の逢瀬を物陰からのぞき見たり、他の猫に顔をなぐられたり……。本書には、屋外で暮らす猫たちのリアルな一瞬を切り取った、ちょっと残念な写真が約90枚納められている。
壁にもたれて眠り、路上で寝転がる姿は、酔って終電を逃したサラリーマンそのもの。すべての写真が、まるでどこかの誰かみたいなのだ。
当初の企画段階では「タイトル案が違った」と、大和書房の担当編集者・長谷川恵子さんが教えてくれた。
「最初は『残念すぎる人』というタイトルで、中身を猫にした写真集を作ろうとしたんです。それほどまでに、沖さんの写真が人間的でした。でも写真を見ているうちに、猫も感情があり、彼らなりのロジックがあり、何かを懸命にするから、失敗した時に滑稽だったり残念だったりするとのだと伝わってきた。さらに眺めているうちに愛しくなって……。一生懸命な者への眼差し、奇跡の瞬間がこの本にあふれています」
本書は、写真の選定からアートデレクションまで、日本を代表する装丁家の鈴木成一さんが担当した。鈴木さん自身も猫飼い。沖さんが5年間撮りためた22万枚からテーマに沿った写真を選び出すという膨大な作業を引き受けた。
「膨大な写真をひとつの世界観にまとめてくださり、本当に見応えのあるものになりました。いろいろな見方があると思いますが、いわゆる可愛さだけでない新たな表現方法として、楽しんでほしいと思います」(長谷川さん))
撮影対象は、島の猫や、東京の下町に暮らす地域猫が中心だ。沖さんは長い時間をかけて、ひたすら猫たちに寄り添う。猫たちはそれを受け入れたかのように、カメラの前で緊張することなく、自然に振る舞う。撮影には24ミリ~105ミリのレンズを使い、中には至近距離で写したものもあるという。
「たとえば猫島で写した中に、シッポを舐めているうちに2頭身みたいに縮こまってしまった猫がいるんですが、3、4日滞在しているうちに、『あ、いるの?』という感じに僕という存在に慣れてくれました」と沖さんは説明する。
思い入れのある写真についても聞いてみた。
「兄弟4匹の猫が歩いているところを撮影したんですが、前に3匹が並んで歩き、その後を1匹がくっついて歩いている。おっと待てよ、これ中学の時の自分だ。ヤンキーぽい子たちがつるんで前を歩いているけど、いま横切ったら面倒なことになる、だからわざと靴ひも結び直して距離を置こうかな……。あの頃感じたモヤモヤっとした切なさが、ファインダー越しにわきました」
写真には、今まで撮影者が体験してきた“心が揺れたこと”が反映される。だから自分の人生が明るみに出るようで、恥ずかしい、と沖さんはいう。
「時にへたれ、時に失敗する猫は、僕そのもの。今回、赤裸々に見せちゃいました」
表紙は、悔し涙を腕でぬぐうような猫の写真。帯には、猫マンガ「俺、つしま」の主人公「つーさん」の猫らしく容赦ない一言も添えてある。「俺が泣かしたんじゃないからね!」
リアルで、猫愛あふれる一冊だ。
- 沖昌之さんのツイッター
- https://twitter.com/okirakuoki
- 『残念すぎるネコ』
- 著者:沖昌之/出版社:大和書房/体裁:A5サイズ・96ページ・オールカラー/定価:1200円+税
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