高齢猫(老猫)との生活 老猫ホームや老人ホームという選択肢も

 猫の一生は、家猫の場合、平均で16年ほどになります。(ペットフード協会調べ 2017年)その間に、猫はだんだんと年老いていきますし、人間も同様に年を取ります。猫の16年と人間の16年は同じではありませんが、人間にとっても、16年というのは短くない歳月です。小学生だった子供は独り立ちして家を出ているかもしれませんし、現役で働いていた人も、猫がシニアになるころには引退して、老後を過ごしている可能性もあります。

 このように、16年のあいだには、飼い主さん自身の環境や体調も変わっていきます。16年後の暮らしが、猫と飼い主さんにとって負担が少ないものであるように、まずはどんな生活スタイルがあるのか、選択肢を知っておきましょう。

猫と飼い主が一緒に 自宅で最期まで

 環境の変化を嫌う猫にとって、一番負担が少ない暮らし方は、「最期まで飼い主さんと一緒に自宅で暮らす」ということです。もちろん、これは飼い主さんにとってもメリットの大きい方法ですし、いつまでも自宅で愛猫と穏やかに暮らしていければ、それに越したことはないでしょう。

 しかし、長いあいだには、飼い主さん自身が年老いて高齢猫の介護ができなくなったり、自分自身に介護が必要になってしまったりといったこともあるでしょう。また、健康であっても、家族と離れて一人暮らしをしている方は、家の中で転んだり、急病に襲われたりした場合、猫も飼い主さん自身も危険な状況に陥りかねません。

 このように、猫とともに飼い主さんがシニアになった場合は、それぞれの健康や介護について意識した暮らし方を選択する必要があるでしょう。

健康や介護を意識した暮らし方を
健康や介護を意識した暮らし方を

高齢猫を預けられる「老猫ホーム」

 老人ホームと同様に、高齢猫を預けることができる「老猫ホーム」という施設があります。飼い主さんが入院しなければならなくなったり、高齢猫の介護をするのが難しくなったりした場合などに利用を検討してみましょう。

・老猫ホームの選び方

 大切な猫を預ける老猫ホームですから、預けることを考えている場合は、インターネットや人の紹介などで安易に決めてしまわずに、実際に現地を訪問することをおすすめします。自分自身での訪問が難しい場合は、信頼できる家族などに様子を見てきてもらいましょう。実際にその施設で暮らす猫の様子や、設備などについて確認しておけば、安心して愛猫を預けることができるはずです。

・老猫ホームを選ぶ際に気を付けるポイント

 猫を預けたあと、「どのように毎日の様子を報告してくれるのか」「もし、また飼える状況になったら引き取れるのか」「ほかの猫が苦手でも快適に過ごせるか」「病気になったときはどうするのか」「面会はできるのか」などについてもチェックしておきましょう。不安なことは事前に確認し、なるべく書面で返事をもらっておくと安心です。

 また、かかる費用についても、病気の場合、猫がホームで亡くなった場合、入院が必要になった場合など、いろいろなケースに応じて確認しておくようにしましょう。何十万円という高額な費用がかかることも珍しくないため、十分納得した上で利用するようにしてください。

老猫ホームの利用は、十分納得した上で
老猫ホームの利用は、十分納得した上で

猫と一緒に入れる老人ホームも

 人間の老人ホームには、特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、さまざまな種類があります。通常、その人の身体的状況や経済状況、施設環境、求めるサービスなどに応じて施設は決まります。

・猫と飼い主、一緒に住み替え

 猫と暮らしている方にとっての選択肢となるのが、「猫と一緒に入れる老人ホーム」です。特別養護老人ホームでは数が少ないものの、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅であれば、ペットと一緒に入居できる施設も増えてきています。猫だけでなく、飼い主さん自身も年老いてきたと感じているときは、一緒に住み替えをするという選択肢もあります。

 猫と一緒にこのような施設に入居するときは、飼い主さんに万が一のことがあった場合、猫に対してどのような対応をとってくれるのかなど、詳しく説明を聞いて検討しましょう。

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監修:服部 幸
東京猫医療センター(東京都江東区)院長。JSFM(ねこ医学会)CFC理事。 北里大獣医学部卒。2005年から猫専門病院長を務める。2012年に東京猫医療センターを開院。2013年、国際猫医学会からアジアで2件目となる「キャット・フレンドリー・クリニック」のゴールドレベルに認定される。

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この連載について
高齢猫との暮らし方
室内飼いが増え、猫も長寿に。高齢猫と長く幸せに暮らす方法や、万一の時の対応について、猫専門の服部幸獣医師が解説します。
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