白黒の猫も、個性いろいろ イラストに描いてキャラクター化

 Suicaのペンギンや、千葉県のチーバくん……、個性的なキャラクター・デザインで知られるイラストレーター・絵本作家のさかざきちはるさんは、白黒猫と一緒に暮らす愛猫家でもある。昨年から、個性的な模様の白黒猫をイラスト化するプロジェクト「白黒さんいらっしゃい」を始めた。「白黒」へのこだわりを聞いた。

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 さかざきさんの愛猫は「てんちゃん」(メス、9歳)。1人と1匹、甘えん坊の猫と水入らずの生活をしている。

 朝は先に起きてさかざきさんの顔を撫で、それでも起きないと、ザリザリと顔を舐める。仕事から帰ると、居間でお待ちかね。ソファに座ると、膝に飛び乗り、寝る時もまったり一緒だという。

「ごはんをあげてその場を離れようとすると、ニャニャ(食べる間見てて)と目で私を追い、先に寝室に行こうものなら、ニャニャ~(なぜ置いてくの~)とダメだし。ツンデレとほど遠いキャラですね。猫と暮らすと、こんなに楽しいなんて」

ペンギンみたいな「てんちゃん」
ペンギンみたいな「てんちゃん」

ペンギンみたいな猫

「てんちゃん」との出会いは、7年前にさかのぼる。

「それ以前は家でウサギを飼っていたので、猫は無理だと思っていました。でも手狭になって住居と事務所を分けることになり、自宅で猫を飼うことにしたんです。迎えるなら、お店で買うのでなく、違う選択肢がいいなと思いました」

 さかざきさんは『捨て犬のココロ』という動物愛護の写真絵本を作った経験もあり、保護活動をしている友人もいる。保護猫サイトで猫を探して、「はっ」と引きつけられたのが「てんちゃん」だった。

「鼻に句読点の点のような模様がある、1歳くらいの可愛い白黒猫でした。出産経験もあるようでしたが、私は仕事で家を空けるし、子猫よりは成猫がいいと思っていました。しかも顔が黒くて、お腹が白くて、ペンギンみたいで、自分にぴったり(笑)」

 そう思いながらも、譲渡を申し込まないでいるうちに、東日本大震災が起きた。

「人生でしたいことはしなければ」

 さかざきさんは猫を飼うことを決心した。サイトで見初めた時から3カ月経っていたが、「てんちゃん」は譲渡されず、ずっと保護主さんのお宅に残っていた。

白黒猫の魅力について話す、さかざきちはるさん
白黒猫の魅力について話す、さかざきちはるさん

3日目には膝の上に

 さかざきさん宅にやって来た初日、「てんちゃん」はさすがに緊張していたようだ。

「しばらくキャットタワーのハウスの中にもぐっていました。何時間かして、お腹をすかせて出てきたので、あえて素知らぬ顔をしたんですが“ええ、私はここにいません”というように、そっと足をしのばせて歩いて。あれで心をつかまれました」

 1人暮らしの静かな環境に、安心したのだろう。2日目には普通にごはんを食べ、3日目には膝に乗ってきたという。以来ずっと、膝の上がお気に入りの場所だ。特技は、さかざきさんが集中して見ている“物との間”に入ること。

「家で仕事をすることもありますが、パソコンの前に来るので、繊細な作業はできないですね(笑)」

「てんちゃん」と暮らしたことでよい影響もあった。「猫の絵が進化した」というのだ。

「それ以前も、映像等を通して分かったつもりでいましたが、複雑な恰好でも“生”で見ると、ああこうなっていたのかと腑に落ちる。理解して描くのと、想像で描くのでは、全然仕上がりが違いました」

てんちゃん(左)をモデルに、さかざきさんがキャラクター化した猫
てんちゃん(左)をモデルに、さかざきさんがキャラクター化した猫

白黒猫をキャラクターに

 さかざきさんは日頃から動物をモチーフにしたキャラクターを描くことが多く、色を絞ったシンプルな作品が多い。

 ペンギン以外にもパンダなど白黒の動物も好きだが、特に白黒の猫はペンギンやパンダ等と違い、模様が多様なところに興味を引かれるという。

「2色に奥深さを感じ、『てんちゃん』を飼いながら白黒猫のブログを見ることも多くなりました。白黒模様の豊かさは“雑種のよさ”でもあるのかもしれませんね。こうでないとだめという決まりはなく、どんな模様でもその子の個性として認められるので。白黒柄はデザイン性も優れていると思います」

 白黒猫へのこだわりから、昨年にはタカラトミーと協力し、新たなプロジェクトを始めた。白黒の猫だけの写真投稿を募るウェブサイトを設け、応募された中から選んでイラスト化する「白黒さんいらっしゃい」だ。

「私自身、そもそも単色のイラストが得意なので、今度はひとさまの白黒猫を描きたいという願いもあって、タカラトミーさんに相談したら採用されました」

「白黒さん」がデザインされたグッズ
「白黒さん」がデザインされたグッズ

 投稿された写真は、制作チームが選考してサイト内の「あなたの白黒さん」というコーナーで公開。その中から、さかざきさんが選んだ猫をイラストにして、「白黒さん」のキャラクターとしてグッズ化するというものだ。

「カブキの隈取りのような顔とか、黒猫に見えてお腹だけ白いとか、『白黒』といっても模様の入り方がいろいろ。好きな白黒猫をたくさん見ることができて楽しい仕事です。見た目だけではなく、添えていただくエピソードの面白さもポイントになっています」

 スタートから1年で、3千枚以上の写真が投稿され、52匹がイラストになった。今秋には週めくりカレンダーも発売予定だ。制作チームには「犬は描いてもらえないのか」「色の付いた猫はだめなのか」といった質問も寄せられるという。

「その気持ちよくわかります。ペットの色は、その子の持ち味ですから。キジにはキジ、三毛には三毛、単色には単色のそれぞれの良さがあり、飼い主さんもその子の色が好きですよね。カラーで描いてみたいという気持ちもあるんですよ」

◆「白黒さんいらっしゃい」パネル展、さかざきさんサイン会
 8月16日(木)~20日(月)に京王百貨店新宿店で開かれるペットイベント「みんなイヌ、みんなネコ」内で、「白黒さんいらっしゃい」のパネル展を開催。全52匹を紹介します。グッズ販売もあります。
 18日10時半~12時には、さかざきさんのサイン会も開催。オリジナルポストカードにイラストを描いてもらえます(会場で「白黒さんいらっしゃい」グッズを当日1精算で税込み2000円以上購入の方が対象。先着100人)。

◆sippo×「白黒さんいらっしゃい」
「みんなイヌ、みんなネコ」内で、sippoでも紹介されたユニークな白黒猫「かっぱちゃん」「サリーちゃん」を、さかざきさんがイラスト化し、特設コーナーで展示します。

◆インスタで「sippo写真展」参加、イラストになるかも?
 今回のイベントに合わせ、sippoはインスタグラムを通じて写真コンテストを開催します。「#sippo写真展に参加したい」とタグを付けて、愛犬や愛猫の写真を投稿すると、プリントされて会場に貼り出されます。犬、猫、色柄は問いません。
 また、8月20日までに投稿された写真の中から犬1匹、猫1匹をさかざきさんが選んで、イラスト化します(白黒かカラーかはその時のお楽しみ)。



藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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