ピーターラビットの世界を写真で再現 ウサギやリスのびのび

「ピーターラビットの仲間たち 写真集」から。辰巳出版提供
「ピーターラビットの仲間たち 写真集」から。辰巳出版提供

 イギリスで生まれ、世界35か国の言語で発行された名作絵本「ピーターラビット」。日本語の初版は1906年に発行され、最近ではハリウッドで実写映画化もされた息の長い人気作だ。そんな誰もが知る絵本の世界観を写真で体感することができる「ピーターラビットの仲間たち 写真集」(辰巳出版)が発売された。

(末尾に写真特集があります)

 本を開くと、絵本の舞台となった緑いっぱいのイギリスの湖水地方で、ウサギはもちろん、リス、アヒル、猫、小鳥、ブタ、ねずみなどが、のびのび暮らしている様子を見ることができる。作者のビクトリアス・ポターが生きた百数十年前そのままのような、自然豊かな風景が広がる。

 絵本のイラストも掲載されているので、絵と写真を見比べて楽しむこともできる。

「ピーターラビットの仲間たち 写真集」から。辰巳出版提供
「ピーターラビットの仲間たち 写真集」から。辰巳出版提供

 撮影したのは、写真家の菜十木ゆき(なとき・ゆき)さん。1973年、東京生まれで、大学卒業後にロンドンに留学し、写真を学んだ。ピーターラビットの本に出会ったのをきっかけに、動物たちの写真を撮るため、10年ほどイギリスに通い続けた。観光客が行かないような奥地の牧場に泊まり込み、その土地に溶け込むことで、動物たちの素顔を捉え続けたという。

 しかし、菜十木さんは「絵本に登場する動物すべてを撮る」という目標を前に、病に倒れ、2016年、42歳の若さで亡くなった。菜十木さんと生前から付き合いのあった出版社に菜十木さんの母が写真を託し、1冊の本になった。

「ピーターラビットの仲間たち 写真集」から。辰巳出版提供
「ピーターラビットの仲間たち 写真集」から。辰巳出版提供

 同書の編集を担当した辰巳出版の宮田さんに背景を聞いた。

「菜十木さんは生前、雑談で『ピーターラビットをテーマにした写真を撮っているんです』とおっしゃっていました。あるとき連絡がつかなくなると、お母様からのお手紙で亡くなったことを知り、未発表の写真を送っていただくことになりました。

 大きな段ボール箱2つにデータのCDとポジがぎっしり。1枚ずつ全ての写真に目を通し、ピーターラビットたちが写真の中で本当に生きているような感動を覚えました」

ピーターラビットの仲間たち 写真集
ピーターラビットの仲間たち 写真集

 本の見どころについてこう語る。

「やんちゃなウサギ、いたずらっこなリス、ちょっと意地悪そうなキツネ……、絵本のキャラクターそのままの表情や仕草を写真で楽しめます。野生の動物たちが、カメラを意識したり、警戒した様子がないことに驚かされます。ビアトリクス・ポターも菜十木さんも、その動物の本質を捉えているということに改めて感動しました」

 写真集を眺めることで、ピーターたちの暮らしを覗き見たような気分を味わってみてはいかがだろうか。

(安田有希子)

『ピーターラビット™の仲間たち 写真集』
著者:菜十木ゆき/出版社: 辰巳出版/単行本(ソフトカバー): 96ページ/価格:1,836円(税込)

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