愛されて、グゥちゃん天国へ チャペル館長の名物犬が急死

スタッフの中西英揮さん(左)と片桐美羽さん=2018年5月28日、和歌山市湊通丁北2丁目
スタッフの中西英揮さん(左)と片桐美羽さん=2018年5月28日、和歌山市湊通丁北2丁目

 和歌山市のホテル「アバローム紀の国」の名物チャペル館長「グゥちゃん」。ふわふわの毛並みと優しい笑顔でスタッフと利用者を癒やしたゴールデンレトリバーは5月、たくさんの愛に包まれて、天国へ旅立った。

 グゥちゃんの本名はグウィネス。メスで推定11歳。2016年6月、近くに住む飼い主の留守中にホテルの敷地内に迷い込んだことがきっかけで、ホテルとの交流が始まり、17年1月にチャペル館長に就任。結婚式の来客を出迎えたり、新婦へブーケを運んだりしてきた。

あしり日のグウィネス
あしり日のグウィネス

 勤務は非常勤で結婚式がある時や週末に出勤。志願したスタッフが、交代でグゥちゃんの飼い主宅へ通い、日々の散歩やエサやりをした。チャペルのある庭園には「グゥちゃんのじむしょ」と呼ばれる犬小屋が作られた。世話をしていたスタッフの一人片桐美羽さん(42)は「事務所の前とか日陰になる事務所の横とかによくいましたね」。同じく世話をしていたスタッフの中西英揮さん(42)は事務所近くのベンチを指さし、「ここに座るのがお気に入りでした」。

 4月1日が、グゥちゃんが出席した最後の挙式となった。当時、足取りは良く、エサも食べていた。

末期がん 最後まで笑顔だった

 異変があったのは4月25日ごろ。エサを食べなくなった。病院にも行ったが、原因がわからなかった。5月5日、ついに立てなくなった。再び病院に行くと、末期がんであることがわかった。獣医師は「いつ死んでもおかしくない」。

 スタッフは飼い主宅へ通い看病を続けた。床ずれを起こさないようにお尻を持ち上げたり、水を飲ませたりした。片桐さんは「痛がる様子とか苦しい様子はなかった。ハアハアしてるんですけど、顔はニコニコしてました」。スタッフたちは「あと数カ月は死ねへん」と信じたという。

 10日午後3時過ぎ。片桐さんはグゥちゃんの世話を手伝ってくれていた知人の女性から電話をもらった。「様子がおかしい。来た方がいい」。会議中だった片桐さんは会議を抜け、飼い主宅へと向かった。片桐さんが到着した時、すでにグゥちゃんは息を引き取っていた。

全国のファンから花や手紙

 「眠るようでした。間に合わなかったんですけど、まだ温かかったです」と片桐さん。他のスタッフや近所の人も続々と訪れ、線香や花をたむけた。訪問は夜遅くまで続いた。グゥちゃんは花束で埋まるくらいだったという。その日の夜、ホテルのブログでグゥちゃんが死んだことを伝えると、全国のファンからも手紙や花が届いた。

チャペルの庭にある「グゥちゃんのじむしょ」
チャペルの庭にある「グゥちゃんのじむしょ」

 「おとなしくて人懐こくて、こんなワンコは他にいないんじゃないかと思うくらいでした」と中西さん。犬が苦手だったという片桐さんはグゥちゃんと出会って犬好きになった。「一緒にいると、優しい気持ちになれる。生まれ変わってまた迷い込んでほしい。いつでも待ってるよって言いたいです」とほほえんだ。

 ホテルでは近日中に1階にグゥちゃんの写真を収めたアルバムなどを展示する予定という。

(本間ほのみ)

朝日新聞
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