自然治癒力を高める中医学で、春の不調を和らげる

愛犬・愛猫の健康をともに考えよう!ペットの「中医学」講座Vol.5

寒暖差の激しい春は、人間だけでなく動物も体調を崩しやすい季節。引っ越しや転勤など、春ならではの環境の変化もペットには大きなストレスになります。病気とまではいかないけれど調子が悪そう……。そんな愛犬や愛猫の治療に、今「中医学」を選択する飼い主さんが増えています。獣医療に漢方や鍼灸治療を積極的に取り入れている獣医師の先生に、春のペットの健康管理のコツとペットの中医学についてお聞きしました。

気象の変化がペットの体に与える影響

 “寒の戻り”や“花冷え”などの言葉があるように、春は気温差が激しい季節です。朝晩の気温差も大きく、日中は暑いくらいの陽気なのに朝晩はぐっと冷え込むこともよくあります。

「そんな体に影響を及ぼすような気象の変化を、中医学では“外邪(がいじゃ)”と言います」

 と、大分県中津市にあるハートフル動物病院の時松和美副院長は話します。

ハートフル動物病院の時松和美副院長
ハートフル動物病院の時松和美副院長

 “外邪”には、風・寒・暑・湿・燥・火の六つがあり、適度であれば人体や動物にも悪影響を与えませんが、激し過ぎたり足りない場合、または人体や動物自体の抵抗力が落ちている場合には病気の発症原因になると中医学では考えるそうです。

「ペットが大きく体調を崩さないように、温度差を小さくするなど飼い主さんの方が気を配るようにしてあげてください」

 さらに、この時期に意外と多いのが熱中症だとか。

「熱中症は夏のイメージが強いため、『まだ大丈夫だろう』と飼い主さんが油断しがちですが、よく晴れた日の窓を閉め切った車の中などではかなり高温になるので、注意が必要です」

 また、人間と同じく、花粉によるアレルギー症状に悩まされるペットも春には多く来院するそうです。これも中医学では“外邪”が影響していると考えます。

「アレルギーによる症状としては目や皮膚をかゆがる子が多いですね。皮膚のかゆみを起こす原因の一つには、冬毛がうまく生え変わらないために皮膚が蒸れて炎症を起こしている場合もあります。毎日ブラッシングで換毛を促してあげると、皮膚の疾患を防げるだけでなく毛艶も整ってくるのでおすすめです」

 漢方では「炎症」や「くしゃみ・鼻水」など、症状に合わせた対応もできます。

生活環境の変化によるストレスにも注意

 さらに、春のペットの健康管理で意外と見落としがちなのが生活環境の変化によるストレスです。

「転勤で引っ越しをしたり、進学や就職で家族構成が変わったり、春はペットの生活環境に変化が起こりやすい季節でもあります。人間は頭で理解することができますが、動物にはそれができません。ある日、家族の中で大好きだった人が突然いなくなるということは、私たち人間が想像するよりも大きなストレスになります」

 ストレスによって、ごはんを食べなくなったり、元気をなくしたり、寝ている時間が長くなったりする犬やネコは多いそうです。

「もともと体力のない、高齢の子や腸の働きの弱い超小型犬は特にストレスの影響を強く受けがちです。ただ、ストレスによる不調は病気ではないため血液検査やレントゲンではわからないことが多い。そんな “未病”の段階でも何らかの手を打てるのが『中医学』です」

 ストレスによる不調のある時は、まずはリラックスさせる働きのある漢方が有効だそうです。

病院に併設されたドッグラン。ワンちゃんたちの運動不足やストレス解消にも役立っている。
病院に併設されたドッグラン。ワンちゃんたちの運動不足やストレス解消にも役立っている。

体が本来持っている治癒力を高める漢方

 時松副院長が、ペットの医療に「中医学」を取り入れ始めたのは4年前。ご自身の子育てが一段落し、自らの獣医師としてのあり方を改めて考えるようになったことがきっかけでした。

「わが子同然の大切な存在であるペットに対して、飼い主さんたちはどんな治療を望まれるだろうかと考えました。その結果が体の本来持っている自然治癒力を上げ、自らの力で元気になるのを手助けする『中医学』だったのです」

 20143月に中国で「獣医鍼灸師認定証」を取得。それまでの西洋医療に加え鍼と温灸、さらに漢方を組み合わせる治療を開始。

「中医学を取り入れてから西洋医学だけではケアできないところまでケアできるようになりました。ストレスや生活習慣の乱れから崩れた体のバランスを整え、同時に免疫力を上げるため“未病”の状態から処方できる漢方は、加齢により抵抗力が落ち始めた高齢の子にも処方できます。生薬由来で副作用が小さいため、長く処方することもできます」

 ただし、どんな処方を組み合わせ、どれくらいの量を処方するかは、その子のその時の状態に合わせて考える必要があるといいます。

「全体的な様子を見る(望診)だけでなく、体を触ったり(触診)、ニオイを嗅いだり、声を聞いたり(聞診)、という五感を使った『四診』で健康状態を細かく診察。日頃の状態を飼い主さんから聞く(問診)こともとても重要なんですよ」

ワンちゃんごとの状況を把握し、それぞれに合わせた治療を実施。
ワンちゃんごとの状況を把握し、それぞれに合わせた治療を実施。

一日でも長く幸せな時間を共に過ごすために

 鍼灸と漢方による治療で、目を見張るような回復を目の当たりにすることも多いそうです。

「特に椎間板ヘルニアや肥満によって自分の足で立てなくなったり、歩けなくなったりしている子が、2〜3週間後に自分の足で歩けるようになるケースはよくあります。その場合は飼い主さんにもマッサージやリハビリの方法を指導し、自宅でも温灸や症状に合わせた漢方を続けてもらっています」

 ペットの病気は獣医師だけで治せるものではなく、飼い主さんとの二人三脚で治すもの、と時松副院長。

「なぜなら、ペットのそばに一番長くいるのは飼い主さんですから。飼い主さんと獣医師が連携して健康管理を行うのが理想だと思います」

 開院して23年。地元に根ざした第一次診療を心がけているハートフル動物病院には、高齢のペットも多く来院するそうです。病院が掲げている目的は「ペットと飼い主が少しでも長く楽しい時間を過ごせること」。

「残念ながら、犬やネコの寿命は人間より短く、いつかはお別れの日がやってきます。でも、だからこそ、それまでをどのように過ごすかが大事だと思います。一日でも長く自分の足で歩き、自分で排尿・排便し、ごはんもおいしく食べてもらうためには、中医学で体のバランスを調整することが大事だと考えています。

大切なペットと一日でも長く幸せな時間を共有したいと願う飼い主さんたちに、しっかり寄り添える獣医療を目指したいと思っています」

昨年5月に建て替えられたハートフル動物病院。獣医師は時松聖潤院長、時松和美副院長、下瀬昭広さんの3人体制。
昨年5月に建て替えられたハートフル動物病院。獣医師は時松聖潤院長、時松和美副院長、下瀬昭広さんの3人体制。

【ハートフル動物病院】

871-0022 大分県中津市相原3748-1

http://www.heartful-pet.jp/

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