子犬は散歩好きとは限らない? 好きにさせ、トラブルを防ぐ方法

犬がみんな散歩好きとは限らない?
犬がみんな散歩好きとは限らない?

 子犬を迎えるときは、多くの方が散歩について考えると思います。実際に、散歩は犬にとって貴重な社会との関わりの時間ですから、毎日欠かさずに行ってあげたいものです。

 ところが、いざ散歩に行こうとすると、なかなかうまくいかないこともあります。犬の散歩をしているほかの家族を見ながら、「どうしてほかの家の犬はうまく散歩ができるのだろう?」と悩んでしまうこともあるかもしれません。迎えたばかりの子犬は、最初から上手に散歩できるわけではありません。そこで、ここでは散歩の際のトラブルや対処法についてご紹介します。

犬は散歩が好き?

「犬は散歩が大好き」という印象を抱いている方は多いでしょう。しかし、実際に子犬を迎えて散歩に連れて行こうとすると、玄関から動こうとしなかったり、少しも楽しくなさそうだったりすることがあります。

 もちろん、最初から散歩が大好きな犬もいますし、最初は好きだったのに、何かをきっかけに散歩嫌いになってしまう犬もいます。犬にも個性がありますし、犬だって毎日の生活の中でさまざまなことを考えています。「絶対に散歩が好きなはず」「散歩が好きじゃないなんておかしい」などと思い込まないようにしましょう。

 とはいえ、子犬の社交性を育てたり、うまくストレスを発散したりするためには、散歩好きな犬に育てることが大切です。犬が散歩を嫌がる場合は、なぜ嫌がっているのかを考えながら、少しずつ慣らしていきましょう。

 同じように、散歩には行くものの、散歩中に動かなくなる、ほかの人に吠えかかるなど、うまく散歩ができなくて飼い主にストレスがかかっている場合も、少しずつ問題行動を解決していくように練習します。犬と暮らす以上、散歩は毎日欠かさずに行うことです。トラブルを回避する方法を知って、犬も人も楽しく散歩をしましょう。 

散歩に行きたがらないときの対処法

 家に来たばかりの子犬は、外の世界をまったく知らないことも珍しくありません。それどころか、リードやハーネスをつけたことすらないかもしれません。

 慣れない物をいきなり体に付けられて、行ったことのない場所に無理矢理引っ張って連れていかれたのでは、とても「楽しい」とは思えないでしょう。そういう経験をすれば、「怖い!」と感じて動けなくなってしまうのも仕方のないことなのです。

 まずは、家の中でリードや首輪、ハーネスなどを付ける練習をしましょう。そして飼い主が抱っこしたまま家の周りを歩くなど、外の環境にふれる練習をすることから始めてみましょう。「新しいこと」をなるべく減らして、子犬が怖がる要素を少なくしていくことが、楽しい散歩につながります。

 抱っこしたままの散歩ができたら、次は外のにおいをかがせたり、外でおやつを食べたりする練習です。普通に散歩ができるようであれば歩かせてもいいですが、怖がっている場合は、無理に歩かせるのではなく、外に慣らして、できることを少しずつ増やしていくようにしましょう。抱っこしたまま公園へ連れていき、しばらくベンチに座っているだけでも、外に慣れる練習になります。

散歩中に飼い主を見上げる犬
散歩中に飼い主を見上げる犬

散歩中のトラブルの対処法

 散歩中には、いろいろなトラブルが起こることがあります。犬が散歩中に起こす可能性があるトラブルについて、対処法を知っておきましょう。

・ 散歩中に止まってしまう

 散歩中は車やバイクの音など、お散歩に慣れていない子犬にとって怖いものがいっぱいあります。怖い時に固まるのは子犬の普通の反応です。周りを確認する間、リードを緩めて待ってあげましょう。少し落ち着いたら「いくよ~」とやさしく声をかけて、歩き始めましょう。子犬が歩き始めたら「えらいね~」と言って、好物をあげてみましょう。歩かないのに無理に引っ張って散歩を続けようとすると、ますます嫌いになってしまいます。

 好物も食べられないほどに緊張しているようでしたら、抱っこしたまま公園など静かな場所まで行って、そこで楽しく過ごすようにしましょう。また、足や尻尾に枯れ葉などがついていて気持ちが悪くて止まってしまうこともあります。犬の体をチェックして問題がないか確認してみましょう。

・ 引っ張る

 犬が突然強くリードを引っ張ると、思わぬ事故につながる恐れがあります。車や人通りが多い場所などではリードは短く持ち、散歩中に犬が引っ張ったら足を止めて、急にリードを引っ張ったら前に行けなくなるということを教えましょう。足元近くについて、いい子で歩いているときには、ほめて好物を与えるようにしましょう。おやつなどを使って犬を足元に誘導したり、歩く練習を家の中でしたりしておくのもいいでしょう。

・ 人に吠える

 人に会ったときに怖がって吠える場合、叱ると、ますます知らない人に対する印象が悪くなります。吠える前に好物を見せて集中させ、知らない人が通り過ぎたらほめて与えるようにしましょう。「人に会うのは怖いことではない」「人に会うといいことがある」と思わせるのです。そのため、お散歩は犬がおなかを空かせている時間に、おやつなどを持って出掛けるようにしてください。

 このような問題の予防のためには、子犬の時期に犬好きな方にお願いして、好物をあげてもらう練習をすることです。ただし、すでに吠えるようになっている場合には、好物を食べなかったり、なでようとした人を咬んでしまう場合もあるため、見知らぬ人に好物をあげてもらうのではなく、飼い主さんから与えるようにしましょう。

散歩が大好きな犬
散歩が大好きな犬

散歩に関係する犬のケア

 散歩のまえは、足裏の毛を短く切っておくことや、爪が伸びすぎている場合には爪を切ることも安全を確保するために大切です。犬が爪を折ったり、足を滑らせたりすることがないよう、定期的にグルーミングをしましょう。

 帰宅後は、足の裏を拭いてブラッシングをします。このとき、犬が散歩中にケガをしたり、ダニをつけたりしていないかチェックしてあげると良いでしょう。

 散歩に関するケアは、無理やり押さえつけたり、叱りながらやると、あっという間にグルーミング嫌いの犬になってしまいます。慣れるまでは好物を食べさせながら練習しましょう。

 嫌がるようであれば無理をせず、最初は動物病院やトリミングサロンなどでお願いしましょう。足ふきも嫌がるのであれば格闘せず、慣れるまでは濡れタオルの上を歩かせる程度で十分です。

「こころのワクチン ――子犬に教える人としあわせに暮らす方法」

著者:村田香織
出版社:パレードブックス
定価:1,543円 (税込)
体裁:四六判・294頁(ソフトカバー)

監修:村田香織
獣医師、もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「パピーケアスタッフ養成講座」メイン講師でもある。「パピークラス」や「こねこ塾」などを主催、獣医学と動物行動学に基づいて人とペットが幸せに暮らすための知識を広めている。

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この連載について
子犬の飼い方・しつけ方
犬のしつけで大切なのは、子犬の時期。飼い方やしつけのポイントを、動物行動学に詳しい獣医師に解説してもらいます。
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