「姉弟を引き離したくない…」 捨て犬2匹を迎えた家族の決断

姉弟でじゃれあう桃(奥)とソト=岡本順子さん提供
姉弟でじゃれあう桃(奥)とソト=岡本順子さん提供

 茶色い毛の桃と、白い毛のソト、ふたりは姉弟。動物保護団体ミグノンに保護されてから、2匹が離れていたのは3カ月だけ。ずっと一緒に、愛されてきました。

 2匹が保護されたのは、2012年11月。生まれたばかりの2匹は、へその緒がついたままポリ袋にいれられ、東京・世田谷区役所の前に置かれていたそうです。

 その半年前、岡本順子さん(66)の家では、シバイヌのケンが亡くなったばかりでした。5年前に亡くなったコーギーの翔と2匹でいた時期もあわせて約17年の「犬のいる生活」が終わった時でした。

(右から)岡本順子さん、娘の沙織さん、夫の弘さん
(右から)岡本順子さん、娘の沙織さん、夫の弘さん

◆ペットロスで「家が暗くなった」

 犬のいなくなった岡本家は「会話もはずまない。家の中がくらーくなった」(順子さん)。とはいえ、夫の弘さん(74)は「年齢も年齢だし、犬を面倒見る元気はない。もう2匹も看取ったんだから十分じゃないか」。新しい犬を飼う予定は全くなかったそうです。

 ケンが亡くなってから10カ月がたった頃、「犬のいない生活はやっぱり寂しい」と、ミグノン主催の保護犬譲渡会に参加することにしました。弘さんは「大きな犬は体力的に無理だから、小さな犬にしようと決めていた」と言います。

 そんな弘さんの思いとは逆に、譲渡会で目で追ってしまったのが2匹の犬でした。

 弘さんは「札に『雑種(秋田犬系)』って書いてあるから、どれだけ大きくなるのかなあって不安だった」と振り返ります。

 ミグノンでは、60歳以上の人には譲渡できない決まりがあるのですが、同居する娘の沙織さん(36)の後押しもあり、1匹だけ引き取ることにしました。2匹の両親の犬種がわからないので、将来的にどこまで大きくなるかは未知数。順子さんは「手足が大きいので、ずいぶん大きくなるんじゃない、と言われ、2匹も面倒を見られるのかなと不安になりました。メスの方が大きくならないとも聞いたので、メスだけを引き取ることにしました」。

◆1匹を迎えたものの「弟は…」と後ろ髪ひかれ 

 2週間のトライアルを経て、メス犬が家にやってきたのは2013年3月23日。ちょうど、自宅の庭の桃の花が満開を迎えていました。

「名前、桃ってどう?」。名付けたのは順子さんでした。

 岡本家には再び「犬のいる生活」が戻ってきました。「桃はとにかく、賢くて。おしっこの場所も1回で覚えた。こちらの表情を読むのも得意で、一緒に生活しやすい犬でした」と順子さん。

 ただ、順子さんには気になっていることがありました。「桃とソトの姉弟を引き離してしまった。ソトはどうしてるのかなって、かわいいからすぐもらわれるだろうなと思いながらも心配で、譲渡会の様子をHPで確認していました。そのたびに『またソトくん残っちゃったね』と娘と話していました」

部屋でくつろぐ桃(右)とソト。顔がそっくり=岡本順子さん提供
部屋でくつろぐ桃(右)とソト。顔がそっくり=岡本順子さん提供

◆「うちに来る、運命だったんだ」

 桃が岡本家にやってきて3カ月。

 岡本家は覚悟を決めました。「ソトも家族にしよう」。

 桃が思ったよりも体が大きくならなかったこと、前にも2匹を飼っていた経験から2倍大変になるわけではないと知っていたこと――。理由はいくつかありましたが、なにより、姉弟をもう一度一緒に生活させてあげたかったことが一番の理由でした。

 沙織さんも「うちしかいない。うちに来る運命だったんだ」と言います。

 弘さんも、反対することはありませんでした。「譲渡会で見たときから、ソトはおとなしくていい子だなと思っていた。だから、桃ともうまくやるだろうし、来る前から安心していた」

 決めてからの行動は早かったそうです。ミグノンに電話をすると「桃の時におうちの状況は確認してあるので、トライアルなしでOKです」とすぐにソトを連れてきました。

家族の帰宅をいまかいまかと待つ桃(右)とソト=岡本順子さん提供
家族の帰宅をいまかいまかと待つ桃(右)とソト=岡本順子さん提供

◆けんかしない仲良し姉弟

 実は、ミグノンで保護された当初、桃につけられた名前は「ナカミ」。ナカミとソト、という名前の姉弟だったのです。

 ナカミは岡本家に来たときに、桃という名前を新しくつけましたが、ソトはそのまま呼ぶことにしたそうです。「ずっと『ソトくん、ソトくん』って言ってきてたしね。浸透しちゃってたの」と順子さん。

 先に家に来ていた桃はお姉さん風を吹かして、ソトを迎え入れました。

 内弁慶で活発、甘え上手な桃と、素直でマイペースなソト。顔はそっくりなのに、性格がまるで違う。だけど、一度もけんかをしているのを見たことがないそうです。

散歩をする桃(右)とソト=岡本順子さん提供
散歩をする桃(右)とソト=岡本順子さん提供

◆「2匹一緒がしっくりくる」 家族になった喜び

 岡本さんの家には、犬用のおもちゃがほとんどありません。それは、2匹がじゃれ合っているのでおもちゃが必要ないからだそうです。

「きょうもいい子にしてたよ」「桃はおねしょをしたみたい」「またか~」

 2匹を通じて、会話も増え、岡本家の生活も、さらににぎやかなものになりました。

 一日の始まりは、朝ご飯を食べる前の30分のお散歩から。夕方はお互いのパートナーを代えて、また30分の散歩にでかけます。特に弘さんといる時間が長いそうで「2匹にはさまれてソファで昼寝してます」。犬を通じて、近所の人たちと話す機会も増えたそうです。

 家に来てから、2年目には「ももそと」というフォトブックをつくり、親戚に配りました。「親ばかと思われるんでしょうけど、かわいくてかわいくて」と順子さんは目を細めます。

「人間の勝手で、2匹を引き離してしまったけど、やっぱり2匹は一緒にいるのがしっくりくる。2匹と家族になれて私たちも幸せです」

順子さんが作ったフォトブック「ももそと」やこれまでの写真アルバム
順子さんが作ったフォトブック「ももそと」やこれまでの写真アルバム

(伊藤あかり)

<桃とソトの出身団体>

一般社団法人 動物愛護団体 Rencontrer Mignon(ランコントレ・ミグノン)
ミグノンでは、東京都動物愛護相談センターから犬猫、ウサギなどを受け入れ、動物たちが新しい家族と出会えるように毎月第2日曜日と第4土曜日に譲渡会を開催するなど、さまざまなイベントを企画しています。
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷4-3-5
mail:info@rencontrer-mignon.org
HP: http://rencontrer-mignon.org/

この特集について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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