住宅街にシカやサル わな設置はペットに危険「どうすれば…」
栃木県日光市の中心住宅街で昨年から野生のシカやサルの出没が急増し、周辺住民が昨年10月、市に駆除を求める署名を提出した。だが人家がある場所では法の規制で猟銃が使えず、わなもペットへの影響や地権者の同意が得られないなどの理由で設置が進まない。生活や観光に深刻な影響を及ぼしているが、抜本的な対策には至っていない。
野生動物が出没しているのは東武日光駅から世界文化遺産の社寺へ続く国道119号沿いで、民家のほか観光客向けの食堂などの店も多い。シカは家の庭先に入り、花壇の花も食べてしまう。時には店や家の中に侵入し、食べ物を物色することもあるという。
住民は昨年10月末、駆除を求める149人分の署名を集めて市に提出。市は対策に乗り出したが、なかなか進んでいない。
野生動物の駆除は一般的に猟銃とわなが用いられる。ただ現場は人家があり観光客も多く、法の規制により猟銃による駆除はできないという。わなも近所で飼うイヌやネコがかかる危険がある。また、わなにかかった動物はその場で殺処分するのが原則だが、住宅地に近い山林での処分を嫌う地権者も多く、同意が得られないことが多いという。
現場付近で市猟友会が仕掛けたわなは、現時点で市有地の1カ所だけ。市の日光行政センターの担当者は「同意が取れて設置したとしても、ペットが誤ってかからないようにペットが嫌うサツマイモをエサに使っている」と苦労は絶えない。市は希望する家に動物を追い払う爆竹やロケット花火を配布して、協力を呼びかけているのが現状だ。
■観光客への影響懸念
観光への影響も心配される。同市下鉢石町で美容室を営む坂本光二(こうじ)さん(66)、正子さん(66)夫妻の家の近くにもシカやサルが頻繁に現れるようになった。昨年8月には国道沿いの花壇の花を食べるシカを見つけ、スマートフォンで撮影。この花は、今年のJRグループの大型観光企画「デスティネーションキャンペーン」に向けて、地元の人たちが整備した場所だった。
市観光協会の塩谷弘志事務局長は「日光では昨夏からSLが復活するなど、観光が盛り上がっているのに残念だ」と話す。国道沿いだけでなく、東照宮など観光名所でもサルなどの出没が確認されており、「観光客の荷物を奪ったり、けがをさせたりしないか心配だ」。
市環境美化委員の吉新(よしあら)佐紀子さん(68)は「シカは通常は木の皮を食べるが、住宅街まで来て花を食べることを学習している」と指摘。シカやサルも食べ物がある場所を把握し、すでに住宅街の背後の山林にすみついている可能性もあるという。
(梶山天〈たかし〉)
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