外資系企業から転身 おとな猫だけの保護猫カフェを運営する女性

キャットルームで新たな家族を待つキジトラの「くり」くん
キャットルームで新たな家族を待つキジトラの「くり」くん

 千葉県内の譲渡型保護猫カフェの草分け「猫の館ME(ミイ)」が千葉県浦安市にある。2013年夏にオープンし、昨年12月、同じビルの1階に移転、拡張してリニューアルオープンした。「猫を売らない猫のお店」を掲げる施設を訪ねてみた。

 

(末尾に写真特集があります)

 

 JR新浦安駅からバスで10分。市役所通り沿いのビル1階に「猫の館ME」はある。猫用品、雑貨などを扱う販売店と、保護猫カフェを併設した複合施設だ。扉を開けると、代表の小倉則子さんが、にこやかに出迎えてくれた。


「以前2階にラウンジがあった時より、目立つようになりました。ストアゾーンの面積が以前の4倍になり、お買い物に来て、猫に会っていく方も多いですね」


 ストアでは、爪とぎやフードやカラーなど実用的な用品から、バッグやエプロンのような猫雑貨まで約2千アイテムを販売している。猫そのものは売っていないが、隣のキャットルームで保護猫と気軽に触れ合うことができる。

 

 

◆おとなの猫のもらい手探し

 手を消毒してカフェに入ると、心地よいヒーリング系の音楽が流れていた。ソファが置かれたお洒落で清潔な室内にいるのは、すべておとなの猫だ。ケージに入っている猫も何頭かいる。


「人慣れせず、亀さんのようにケージにじっと隠れている子もいますが、時間をかけて馴れさせていきます。このくりくんも、最近ケージから出ることができたんですよ」


 キジトラのくりくんは推定2歳。ボランティアに保護され、今年10月にMEにやって来た。まだ人を少し怖がるという。


「現在、入居している猫は15匹、このキャットルームは、提携するボランティアさんが保護した猫を預かる施設で、新たな家族を見つけるお見合いの場になっています。おとなの猫はもらい手が見つかりにくいですが、性格が出来上がっているので、ライフスタイルに合わせてマッチングしやすい。開業から4年半で、123匹に家族が見つかりました。この秋も6匹ほど続けて譲渡が決まって嬉しかったですね」

 

事故に遭って保護された「じゅじゅ」。少しビビりですが元気に。(保護主さんの負担を減らすため基金を設けました)
事故に遭って保護された「じゅじゅ」。少しビビりですが元気に。(保護主さんの負担を減らすため基金を設けました)

◆転身のきっかけは大病

 小倉さんは40歳過ぎまで、外資の医療系企業で営業職(セールスマーケッター)として働いていた。そこから猫の世界へ転身したきっかけは、自身の大病だった。


「猫が好きで一緒に暮らしたいと思いながらも、国内出張が年の半分くらいあり、夢がかないませんでした。国内のあらゆる病院が主な仕事先でしたが、ある時プロジェクトが終わってホッと気持ちが途切れた時に、伝染病にかかってしまったんです」


 百日咳だった。咳が治るまでに3カ月かかった。免疫力が落ちていたせいか、よくなった頃、今度は血管神経浮腫になり、瞼が腫れて、さらに3カ月の養生を余儀なくされた。


「それまで忙しくしていたので、神様がくれた休暇かなと思いましたね。猫と暮らしたいと思って譲渡会に出かけ、猫を2匹迎えることにしました」

 

小倉さんに抱かれる美人広報「おかつ」ちゃん
小倉さんに抱かれる美人広報「おかつ」ちゃん

 その後、愛猫に留守番をさせて出かける時に、「猫シッター」を頼もうとして、“預かる側”に興味を持った。シッターの育成セミナーに参加して学ぶうちに、猫に関わることを次の仕事にしたいと思うようになった。2011年に勤め先を退社し、キャットシッターとして独立したのだ。


「譲渡会で保護猫を迎えたことをきっかけに保護活動を知り、シッターである自分に出来ることは何かと考え、保護やTNRではなく“預かり”として引き取り手を見つける側に注力したいと思うようになりました。譲渡が難しいおとなの猫に特化した施設を開きたいと考えている時、今の物件と巡り合い、サラリーマンの夫を巻き込んで(笑)、高層マンションから雑居ビルに引っ越してきました」

 

 

◆第二の人生の始まり

 40代で思い切って転職したのは、「10年後の体力や活動範囲」を考えてのことだった。開業資金には、大学院でマネージメントを学ぶために貯めたお金をあてた。これまでとはまったく別分野だが、リサーチや資料を整える経験は役立ったという。


 保護猫カフェの開店には、保管、展示、譲り受けという三つの動物取扱業を取得して準備した。立ち会い検査時には、行政の担当者に「優等生」と太鼓判を押されたそうだ。


「千葉県内で譲渡型の保護猫カフェは初ケースだったので、モデルケースになればと完璧に準備しました。でも、いざ保護猫カフェを始めると、毎月のように赤字になってしまって。ビルの1階が空いたのですが、移転するにもお金がなかった。『保護猫カフェを続けたい!』とブログでつづって支援を募る“自前クラウドファンディング”で270万円を集めました」


 その資金で1階をリフォームし、知り合いの大工さんから古民家の廃材を譲り受けて入口にしたり、量販店で安く買った本棚の扉をストアとの境にしたり、節約する工夫もした。

 

ストアとキャットルームを行き来できるガラスの回廊(猫の館ME提供)
ストアとキャットルームを行き来できるガラスの回廊(猫の館ME提供)

「協力してくださった皆さんへ恩返しのためにも、この施設を持続させて、成功させないと! 保護猫のことも、もっともっと広く知ってほしいですね」


 以前は保護猫ラウンジだった2階のスペースでは、今後、「猫ヨガ」や猫に関するセミナーを開く予定だという。


「ビルの前は桜並木で、春はすごく綺麗なんですよ」


 猫に幸せにすることが、自身の幸せ。そういって小倉さんは微笑んだ。夢はまだまだ続く。

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は17歳の黒猫イヌオと、3歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この特集について
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