女子中学生が猫の預かりボランティア「保護猫のこと伝えたい」

猫の保護活動に取り組むのは、大人だけではない。小学生の時に殺処分について知り、「不幸な猫を減らしたい」との思いから、ボランティアを続ける女子中学生がいる。テレビ番組でも取り上げられた、噂の少女に会いにいった。
(末尾に写真特集があります)
埼玉県川越市の佐々木夏妃(なつき)ちゃんの自宅を尋ねると、居間の真ん中に大きなケージがどんと置かれていた。中で3匹の子猫が遊んでいる。
「家で預かって2週間たちます。2匹は川越で保護された兄妹猫で、1匹は群馬で保護されました。仮の名前は、吉野家、すき家、松屋(笑)。覚えやすいので、牛丼屋さんの名前を母と一緒につけたんです」
夏妃ちゃんは、中学2年生。陸上部に所属して毎朝7時に登校。週1度はヒップホップダンス教室にも通う。そんな運動大好き女子の夏妃ちゃんが、ここ数年、力を入れているのが、猫の保護活動だ。
保護団体から保護猫を預かり、譲渡会に参加して“新しい家族”を見つけるボランティアをしているのだ。

「今までに8匹譲渡しました。みんな幸せになっています。今いる3匹の子たちは11月の譲渡会に参加する予定です」
一生懸命に話す夏妃ちゃんの足元に、大人の猫がすり寄って来た。預かりではなく、飼い猫だという。
「この子の名前はヴィヴィ。メスの猫で、4年前、私がピンチの時に救ってくれました」
◆支えてくれた猫
小学4年生の頃、学校でちょっとした“事件”が起きた。授業中に先生の話を聞かない子どもが増え、ケンカも教室内で起きるようになった。いわゆる学級崩壊だ。夏妃ちゃんは学校が大好きだったが、ショックでふさぎこんでしまった。
母の麻也さんが当時を振り返る。
「元気が取り柄の娘が、もう学校に行きたくないと言い、不安定になりました。私も悩んだのですが、ちょうどその頃、ホームセンターの一角に可愛い猫がいて、親子で気になったんです。娘の表情がぱっと明るくなりました」
「家族にしたいね」と母子で話しながらも、実際にその猫を迎えたのは、それから1カ月後だった。同居していた夏妃ちゃんの祖父母が、猫を家で飼うことに反対したのだ。そこで麻也さんは必死に「今、娘を癒すのは猫しかいない」「動物の力はすごいのよ」とおじいちゃん、おばあちゃんを説得したという。
その言葉通り、ヴィヴィと暮らし始めると、夏妃ちゃんは落ち着きを取り戻したという。猫を見に来る友達もいて、家で笑い声も増えた。

そして、小学校の卒業を間近に控えたある日、友達から夏妃ちゃんのもとに「ダンボールに入った子猫を保護したんだけど、家で飼えないの。猫を助けて」とSOSが入ったのだった。
「子猫は私の所でいったん預かりました。でもヴィヴィは子猫を受け入れないし、一緒に飼えないので、新しい家を探そうと思ったんです」
『里親さん探しています!』というチラシを作って、スーパーマーケットなどに掲げてもらった。同時に、近所にある保護猫カフェ「ねこかつ」にも相談した。
「結局、チラシを見て子猫を欲しいという人が現れました。その人が飼うまでの間、別の保護猫カフェが預かってくれたんですが、渡す時は、別れが悲しくて涙が出ちゃいました」
◆猫を抱いて語る夢
それでも、命を守って繋いだ、ということに喜びを感じ、自信にもなった。その後、母親の職場の同僚が保護した子猫を預かり、さらに、「ねこかつ」からも最年少ボランティアとして認められ、保護猫を自宅で1匹、2匹、と預かるようになった。
「それまで保護猫のことをよく知らなかったんですが、『ねこかつ』のスタッフさんにいろいろ教えてもらいました。日本で殺処分なんてことが起きてるの? とびっくりしちゃったんです」

夏妃ちゃんが手伝っている保護猫の譲渡会は、月2回の土日、1日4時間ほど開かれている。最初のうちは緊張したが、経験するうちに、笑顔で対応できるようになったという。
「猫を見にきた方に、先住ちゃんはいますか? と聞いたり、前に猫を飼っていた方には、どんな柄の猫だったんですかと聞いて、話を広げるようにしています。保護猫のいいところをどんどんアピールして、『こういう猫がいないかな』と探す人の助けにもなりたい」
夏妃ちゃんは今、保護猫の譲渡活動にやりがいを感じている。
「譲渡会は自分にとって癒しの時間でもあるんですよ。ただ、テスト期間と重なるとつらい(笑)。来年は中3だけど、ボランティアと勉強を両立させるのが課題かな。その先の夢もあるし」
夏妃ちゃんの夢は、舞台に立って、歌って踊ってお芝居をすること。エンターテイナーになって、保護猫のことを世の中に広く伝えたいのだという。オーデションを受けて、最終選考まで残ったこともある。
「保護猫に関する台本を自分で書いて、演じられたらなあ。会場で譲渡会もやったりして」
猫を抱きながら、きらきらと瞳を輝かせた。
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