独身の男だって猫は飼える! 愛情深く3匹と同居、保護活動も
最近は保護猫への理解が深まり、譲渡会も多く開催されているが、独り暮らしの男性となると、譲渡を受けるハードルが高い。3匹の猫を大切に育て、自らも保護活動をする熱き独身の中年男性がいた。
(末尾に写真特集があります)
「ほらっ、おやつの時間だぞー」
夜8時半。義男さん(仮名、45歳)が声をかけると、猫たちが居間に集まってきた。キジ模様の「ダイスケ」(オス、推定8歳)、頭に黒い模様のある白猫「サクラ」(メス、推定4歳)、額に薄茶色の模様のある白猫「ネチオ」(オス、1歳)。3匹とも保護猫だ。
「4年前に来たダイちゃんは高倉健のように男気がある(笑)。サクは3年前に引き取った、穏やかな性格の女の子。年少のネチオは手がかかる、甘ったれ」
義男さんがおやつをあげながら、1匹ずつ、猫のキャラを教えてくれる。ホームセンターで買ったという大きなおやつの缶をしまうと、猫たちは思い思いの場所へと移動した。ダイスケは壁のキャットウォークに飛び乗り、サクラとネチオは、天井から吊るされた橋のような板を渡りはじめる。
「大工が得意な友達に作ってもらったんです。寝室にもキャットウォークがあって、居間と行き来できるように天井近くにキャットドアを付けました。ベッドはクイーンサイズね!」
義男さんは独身を通している。茨城県内の自宅兼事務所の一軒家で、建築資材リース会社を経営。その2階が住まいだ。中古住宅を購入し、その後に猫を迎え、猫仕様に改修したという。部屋にはウェブカメラも2台ある。
「毎朝7時頃から夕方5時頃まで作業現場に出るので、留守の間、やっぱ猫が心配。暑い時期は、居間のエアコンを常時28℃に設定してましたよ。でも3匹とも日中はクーラーのない寝室にいて、午後3時頃になると、こぞって居間に移動していましたね(笑)」
豪快に笑う義男さんだが、今までの人生にはいろいろあった。実家を出たのが20代。とび職等を経て、今の会社を起こしたのが40過ぎ。生活も何とか安定し、以前、実家で飼っていたように「犬や猫がいたらな」と思ったのだが、ことはそう簡単ではなかった。
「散歩のことを考えると、犬よりも猫。どうせなら困っている猫を“助けたい”と思ったんだけど、保護猫の申し込みをしたら、相手にされなかったんです」
定期収入も、持ち家もある。実家で猫を飼った経験もあり、動物好き。それでも“譲渡先としてふさわしくない”と判断され、門前払いされたという。
「俺の見てくれのせいかな(笑)。まあ男の一人暮らしというだけでマイナスなんですね。なぜ独身か、離婚したのか、バツいくつか、そこまで聞くかってってぐらい、ぐいぐい質問されました」
落ち込みながら保護猫を探す中、たまたま個人ボランティアの女性と知り合い、行き場のなかったダイスケとの縁を得た。ダイスケは2度も多頭飼育崩壊を体験した不運な猫だ。そのダイスケを通して、ボランティアとの義男さんの間に信頼関係が生まれ、保護猫のことを一から教わったのだという。
「姉御肌で、猫の病気のことから捕獲の仕方まで教えてくれる人。ダイスケがさみしそうだから仲間を迎えたいって言ったら、別のボランティアさんに話をつないでくれて。『どんな猫がいいの?』と聞かれたので、『タレントの優香』と即答した。変態だと思われたかな(笑)。でも『癒し系なら、この子が断然おススメよ』と、サクラを薦めてくれたんです」
サクラは生後間もない時に路上で保護された猫で、エイズキャリアだった。しかも、猫風邪のせいで瞬膜(眼球を保護する膜)が癒着。ボランティアのもとで2度手術を受けたが、右目は白濁したままだ。でも義男さんは、その目にむしろ共感を覚えた。
「実は俺、現場で作業中に、目に鉄屑が入って、今は目に人工レンズを入れているんです。写真を撮ると白く光ってしまうし、サクラと同じだ!と共鳴して……。もちろんダイスケとの相性があるし、エイズのことも勉強した上で、迎え入れました。最初はサクラの方がダイスケを追いかけたけど、すぐになじみましたね。カカア天下だけど、喧嘩はしない。ねっ、サク」
サクラは家に来てから体重も増えて落ち着いているが、ダイスケには昨年、心配なことが起きた。どこからか探しだしてきた紐を、夜中に飲んでしまったのだ。居間が一面、紐だらけ。その一本の紐の先がダイスケの口から出ていて、義男さんは真っ青に……。
「慌てて病院を探して駆け込んでそのまま手術……ウン十万円かかったけど、助かってよかった。あっ、こら待て、ネチオー! お前、またおもちゃをネチネチしてんのかよ」
「ネチネチ」というのは、おもちゃや布を噛んだりなめたりして、唾液だらけにしてしまう、という意味らしい。
「ネチオは作業現場に兄弟2匹で現れた野良の子で、俺が自分で初めて保護したんです。もう1匹の猫は里親を探しました。こいつも譲渡を考えたんだけど、何でもネチネチにして、へたするとしゃぶったものを飲んでしまう恐れがあって手がかかる、俺が飼うしかないなって」
義男さんはさらに別の現場でも、子猫を2匹保護し、譲渡した。その都度アドバイスしてくれたのが、「姉御」こと、女性ボランティアだった。
「俺んちには今、捕獲器が二つと、隔離用のケージもある。捕獲にはレジャーシートを敷いてフードも用意してって、慣れてきた(笑)。外の猫も気になるのでね」
では、もし男性が義男さんの保護した猫を欲しいと言ったら?
「一人暮らしだと慎重になるかもしれないけど、男性だから飼えないわけでない……猫のために俺は保険にも入っているけど、大切なのは『責任』を持てるかどうか、男女関係なく。そうじゃないかなあ」
ニャア、と返事をするように、可愛い声でネチオが鳴いた。
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